骸骨道中膝栗毛   作:おt
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若干、短いです。次回は長めになる予定ですので

ー前回のあらすじー

伝令兵「亜人が攻めてきたぞー!!」

亜人 「よろしくニキwww」

注意
今回は、ほとんどというか全部オリキャラの回です。一応、12巻にでてきた種族や二つ名を使用はしていますが完全オリキャラです。物語の展開上、オリキャラがでるのは仕方ないんだ…orz






7#アベリオン丘陵の戦闘狂

聖王国への亜人同盟の大侵攻。聖王国史に名を刻む大事件であり、歴史上二度目の国家総動員令が発動された出来事でもある。そんな大事件が発生する約1週間前、アベリオン丘陵においてある一族の長同士が会談を行っていた。この丘陵において別種の亜人同士が慣れ合うことは皆無に近く、顔を合わせれば殺し合うのは常である。それは、お互いに自分の命を守るためであり弱肉強食の掟が絶対のアベリオン丘陵では仕方のないことでもある。では、なぜ向き合った両者は殺し合いに発展しないのか。互いに知能が高いから…食うものに困っていないから…理由は数多くあるだろう。しかし、絶対的理由は一つである。それは、互いに強いからである。

 

「…で?たった三人でむざむざ殺されに来たわけじゃねーだろ?話つーのはなんだよ?」

 

毛皮の上に器用に四本の逞しい足を持つ下半身をもたれさせながら片方の人物が口を開く。彼の名はベスティア。獣帝という二つ名で恐れられている。種族は獣身四足獣(ゾーオステイア)であり肉食獣の下半身に獣人の上半身を持つ。獣身四足獣の種族的特徴はそれだけだが彼の場合はある特殊能力の関係から体表の所々に金属的光沢が見え隠れしている。

 

「貴方の性格からして私をこの場で殺すことはないでしょう。まあ、その場合こちらも全力で抗戦しますけどね。まあ、そこは置いておいて…貴方のところには山羊人の王が消息不明という情報は来ています?」

 

ベスティアの軽い挑発に紫色のローブを着用し、頭までフードを被った人物が受け流しつつ回答する。この人物の種族は魔現人(マーギロス)で名をワッカという。衣服で全身を包み、話し方は非常に理知的であるが肌の色や白目のない眼球が人間ではないことを物語っており、時折はだけるフードからはびっしりと入っている入れ墨が確認できる。この人物も周辺部族に良く知られており、氷炎雷という二つ名で通っている。

 

「ああん?山羊王つーことはバザーのことか?どーでもよすぎてそんなの知らねーよ」

 

ベスティアがぞんざいに答える。一族の長とは思えない言動にワッカは顔をしかめるがすぐに真顔に戻し、ベスティアの横に立つ半人半獣王(オルトロスロード)に目線を向ける。そこに込められた問いは「お前ら一族は、本当に知らないのか?」である。半人半獣は困った様な素振りで頭を横にふる。つまり、「話したはずなんですけどね…」ということだろう。

 

「あなたの性格には困ったものですね。自分といい勝負ができる相手にしか興味を持たない…いや、自分といい勝負ができつつ勝てる相手にしか興味がないというのが正しいですかね。」

 

獰猛に牙を見せる様に口角を上げベスティアがにやける。彼は、戦うことが好きないわゆる戦闘狂である。しかし、普通の戦闘狂と少し違うのはギリギリを楽しめる戦闘でありつつ絶対に勝てる状況が好物というところだ。その基準で言うとワッカはベスティアにとって非常に興味のある人物といえる。では、バザーはベスティアやワッカよりはるかに強いという話かというとそれは違う。むしろ、バザーとワッカが1対1で戦闘になった場合は状況にもよるが、バザーよりもワッカのほうに軍配があがる確率は高い。ベスティアがバザーに興味を持てない理由。それは勝つことができないからである。

 

「そらな、俺の能力が不利に働く相手と戦っても楽しくねーしな。まあ、ほとんど負けもしないんだけどな」

 

ベスティアは常時発動スキルとしてモンクが使用するアイアンスキンに似た能力を使用している。つまり、彼は獣身四足獣より上位の鋼身獣身四足獣(フルメタル・ゾーオステイア)という種族に位置することになるのだが、この能力はバザーとの戦闘では不利に働く。バザーの一八番である武器破壊が彼の肌に通り通常以上のダメージを受けてしまうのだ。結果、勝つ確率と負ける確率を比べるとベスティアが負ける確率が高くなる。実際の決闘では互いに決定打の打てない千日手になり互いに撤退したのだが。負ける確率が50%を僅かでも超えると戦おうとしない。それがベスティアの歪んだ信念である。

 

「また、話がそれましたね。本題はですね…今回わざわざあなたに会いに来たのは、人間の国を襲わないか?という提案ですね」

 

「それとバザーの話。何の関係があんだよ」

 

ベスティアが面倒くさそうに相槌を打つ。

 

「今回の山羊王失踪事件で山羊人には大きな混乱が生じています。我々の部族でも700体ほどの山羊人とその土地を侵攻しました。そこで、あなた方の部族にも山羊人の領域に攻めてもらって大量の捕虜を獲得してもらい、その山羊人を人間への先兵とします。」

 

「あーあれか?山羊人に壁でも登らせて、混乱してる間に壁壊して攻めるってことか?悪くないが人間なんざ攻めてどーすんだよ。使い道ねーだろ」

 

山羊人の足のつくりは非常に細かい段差もとらえて、登ることができる作りになっている。その能力を考えての作戦であることは理解した。

 

「いえいえ、まず私たちは生きた人間…最悪、死んでても構いませんが。そいつらを魔法実験で大量に使うという理由で。貴方はその鉄の肌を維持するのに大量の食料が必要でしょう?貯えは多く必要なのでは?」

 

実際、ベスティアの能力は常時発動スキルなので切ることができない。ユグドラシルのプレイヤーなら可能だがこの世界の住人である彼にはそんなことはできず、非常に燃費が悪い。なので、ワッカが言うことも一里あるのは間違いない…しかし

 

「なら、山羊人喰えばいいじゃねーか。しかも人間そんな捕っても、食う前に腐るだろーが」

 

この疑問は当たり前である。ワッカの提案をベスティアの横で聞いていた半人半獣王も同じ疑問を抱いていたようで、首を縦に振っている。その質問に対し、ワッカは不敵な笑みを浮かべ答える。

 

「これが今回の作戦の肝なのですがね。相手側の王を捕えようと考えています。そして、その王を人質にして継続的に生の人間を得続けるという作戦ですね。勿論、今回の侵攻でも人間を捕えはしますがね。」

 

「なるほどな…面白い手だ。しかし仮にも王なのだろう?王の名を持つものは強いではないか。そいつを捕虜として飼い続けるのはめんどくさくねーか?」

 

この質問は亜人種としては、当たり前のものである。亜人種だけでなく悪魔や天使においても王の名を冠する存在は他とは一線を画す。半人半獣の部族を纏める半人半獣王も他の戦士とは比べ物にならない強さを有しているし、その上に立つベスティアはさらに強い。しかし、魔法詠唱者として多くの知識を得たワッカは人間種についても他の亜人よりも多く知っていた。

 

「いや、信じらないかもしれませんが、人間は弱くても王になれるんですよ。昔得た情報ですが間違いないでしょうね。まあ、強かったとして戦士なら四肢をもげば良いし魔法詠唱者なら喉を潰せばいいんですよ。」

 

「はあ、人間なんざ興味はねーがおかしな種族だな。自分より弱い奴の指図をうけるんか。まあ、お前の情報ならば間違いねーだろ」

 

ベスティアが亜人としては信じがたい話をすんなり受け入れる。この物分かりの良さがベスティアが他の亜人王と違い他種族と面会なども行うという特殊な性格を作り出しているといえる。しかし、ベスティアとて馬鹿ではない。相手側に自分たちを脅かすものがあれば面会などするわけもない。これはベスティアがワッカの知恵とその実力、種族としての特性を頭に入れているからこその信頼である。

 

「おーけー。おーけー。その話に乗ろう。俺たちはまず、山羊人の捕虜を捕まえれば良いんだよな?で、その後…こっちから使者を出すから集合場所はそっちが決めてくれ。」

 

「ああ、互いのために協力…は無理ですね。同じタイミングで人間の国に侵攻という言い方が正しいでしょうね。その日を楽しみにしていますよ。」

 

話は終わりだと言わんばかりにワッカが背を向けて出口に進む。会談場所はテントの様な作りになっていて出口までの距離は短いがワッカの護衛の二人は警戒して進んでいるのがわかる。そこにベスティアが軽く声をかける。

 

「ところで、今日は戦っていかねーのか?俺はそれも結構、楽しみにしてたんだがね」

 

一瞬にして、テント内の空気が重くなる。それは、ワッカの護衛は勿論、半人半獣王や()()()()()()()獣身四足獣が臨戦態勢に入り殺気立っているからである。そんな、状況を壊したのは能天気ともいえるワッカの声だった。

 

「いえいえ、まだ私では貴方に勝てないので遠慮しておきます。それでは。」

 

そーかい。とつまらなそうにしているベスティアを尻目にワッカは会談場所を後にした。

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

「今回の話に裏はないのかボス?」

 

今まで黙っていた半人半獣王がワッカが消えた後すぐに口を開く。

 

「今回の策の目的とか作戦に裏はないだろ。俺たち部族を騙す理由が見つからねーしな。ただ、俺自身を殺したいつーのは見え見えだったな。」

 

「そーだったか?俺にはワッカは冷静な奴にしか見えんかったぞ?」

 

半人半獣王が首を捻る。

 

「お前は、統治能力とかはいい線いってるが観察力0だなー。まず、魔法の儀式に生きた人間が必要ってのは聞いたこともねー話だ。その辺の山羊人でも使えばいい話だからな。多分、何かしら新しい魔法の開発をしてるんだろーな。あと、あいつは挑発されたとき、「まだ」おれに勝てないといった。この作戦が終わった後には勝てると考えてんだろ。」

 

「ならば、今のうちに殺しておいたほうがいいだろ?あいつらが力を付けたらまずいだろ」

 

少し、焦りを含んだ声で半身半獣王が訴える。

 

「いや、あいつらの部族は数も少なけりゃ飯も大して食わん。俺らの部族に侵攻するメリットがねーんだから大した問題でもねーだろ」

 

ただ…。ベスティアがにやける。

 

「前からもう少し力をつけてくれねーとボコりがいがないと思ってたんだよ。今回の作戦であいつが強くなるならそれに越したことはねーな」

 

(それにあいつは隠してたつもりかもしんねーが殺気が駄々洩れだったな。まあ、俺以外は気づいてなかったから隠せてはいるのか)

自分より弱い相手の殺気など心地の良いものでしかない。そう考えつつベスティアは後ろの獣身四足獣に声をかける。

 

「お前も久しぶりに殺しまくりたいだろ?弟よ。」

 

その問いに獣身四足獣は緩慢な動きで頷く。彼はベスティアの弟であるベット。雑魚を殺すことが生きがいであり、それ以外の行動は無駄と考えているらしくほとんど喋ろうともしない。そんな弟の意思を確認しつつ、相変わらず変な奴…と思いながら変な奴(ベスティア)は隣の半人半獣王に今後の指示を開始した。

 

 

「相変わらず、非常に癪に障るような奴でしたね!ドドリアンさん、ボーザンさん!」

 

会談場所から十分に離れたところでワッカが怒りを顕わにする。

 

「落ち着いてください。ワッカ様。今回の作戦が終われば件の魔法が完成し、あの獣への勝利は間違いないものになるんでしょう?」

 

ドドリアンがワッカをなだめる。ワッカの右腕であるドドリアンは、魔現人においては珍しい魔法戦士だ。強化魔法や武器生成の魔法を得意とする。

 

「そーですよ。やつはただの変わった戦闘狂。多少の頭は回るかも知れませんがワッカ様の真の狙い…新魔法開発の布石とは気づけないでしょう!!」

 

ボーザンもドドリアンと同じ様にワッカをなだめる。ボーザンは魔法詠唱者が生まれやすい魔現人のなかでも魔法の才能は突出しており、第4位階魔法の行使も可能である。ふたりの説得に多少、溜飲が下がったのかワッカが落ち着いた表情に戻る。

 

「兎に角、今は新魔法の開発に力を注ぎましょう。素材が届いたらより多くの実験が可能なようにね…」

 

「「はっ!!」」

 

 

 

 




オリキャラ達のレベル設定

ベスティア lv39くらい
11巻のリユロが38なのでそれより上位いの設定で

ワッカ lv36くらい

バザー lv36くらい

ベッド lv30いかない位

これぐらいの感じで考えてはいます。







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