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 前向きになりたい。くよくよ悩んでばかりでもしかたない。じっくり問題と向き合った後は、それを解決するためにがんばろう。

 そう割り切っているつもりが、しつこくその悩みが付きまとう。
 振り払っても振り払っても心配事が消えない。なんでだろう?

 どうやらそれは、悩み事を普段以上に目につくように情報を処理してしまう脳の働きにあるようだ。
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問題を解決するたびにその定義が変更される


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 例えば、住民が自主的に近所を周り、怪しいものがあれば警察に通報するような、近所の人による自警の見回りを例に挙げよう。

 彼らは暴行や強盗といった犯罪が行われないか目を光らせる。その甲斐あってか、やがて犯罪が随分と減ってきた。すると住民はどうするだろうか?

 可能性の一つとしては、治安に安心するようになり、警察への通報を止めるかもしれない。犯罪の不安は過去のものになったのだ。

 だが安心するどころか、横断歩道の信号無視や夜間の徘徊のような、これまで犯罪とみなされなかった行為まで通報するようになる可能性もある。

 こうした状況は「コンセプトクリープ」や「動くゴールポスト」と呼ばれる。問題を解決するたびにその定義を変更したとしたら、状況が改善しているのかどうか分からなくなってしまうではないか。

脳はわざわざ問題を探し求める


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 ある概念が一般的でなくなったとき、それがどのように変化するのかを調べるために、ハーバード大学の研究者は、ボランティアを募り、画面にたくさん表示される顔を見て、それが”脅威的”かどうか判断してもらうという簡単な作業を行ってもらった。その顔は、非常に脅威的に見えるものから、まったく無害に見えるものまで注意深くデザインされたものだ。

 すると画面に映し出される脅威的な顔が減るほどに、参加者の”脅威的”の定義が拡大されていることが判明した。

 つまり脅威的な顔が見つからなくなると、それまで無害とされていた顔まで脅威的とみなすようになったのだ。参加者が脅威と考えたものは、それがいくつ見えたかによって変化したのである。

 こうした非一貫性は脅威の判断に限らない。別の実験では、画面上に表示されるたくさんの点が青か紫か判断してもらった。

 すると青い点が減るにつれて、それまで紫とされていた点が青と判断されるようになった。これは事前に青が少なくなると教えたり、一貫した判断ができたら金一封を与えると告げたりしていても同じだった。

・人が悲観的になる理由。小さな問題を大きな問題としてとらえてしまう脳のメカニズム : カラパイア
 

倫理の判断


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 はたして顔や色の判断は、人の視覚のユニークな性質によるものなのであろうか? それとも視覚とは関係ないことでも、こうした概念の変化が起こるのだろうか?

 これを確かめるために、参加者にさまざまな科学研究を読んでもらい、それが倫理的な内容か、あるいは非倫理的な内容か判断してもらう実験を行なった。

 実験前、顔や色の判断とは違い、内容の判断はもっと一貫しているだろうと予測された。なぜなら倫理的な判断は時間が経過してもそうは変化しないという印象があったからだ。

 もしあなたが今、暴力は間違ったことだと考えるのなら、その多寡にかかわらず、明日もそれを間違っていると考えるはずだろう。
 
 だが驚いたことに、この実験でも同じパターンが繰り返された。非倫理的な内容が減るほどに、それまで倫理的とみなされた研究まで非倫理的と判断されるようになったのだ。

 つまり非倫理的な研究が目につかなくなると、ボランティアはよりいっそう厳しい判断をするようになったのである。


脳は相対的な比較をする


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 なぜこのようなことが起こるのだろうか? 認知心理学や神経科学の研究は、これは脳が情報を処理する基本的な方法の結果であることを示唆している。

 私たちは目の前の物事を最近の文脈と常に比較しているのである。

 その脅威を注意深く判断するかわりに、顔の脅威を最近見たほかの顔と比較して測定する。すると脅威的な顔が少なくなると、ほぼ無害な顔との比較で脅威の認定がされるために、すぐさま実験で観察されたような結果につながることになる。

 柔和な顔だらけの中では、ほんの少しいかついだけの顔ですら恐ろしげに見えてくるのだ。

 脳にとって、相対的な比較(他との比較の上に成り立つ)は絶対的(何物にも制限されない)な測定よりもエネルギーの消費が少なくて済むことが明らかとなっている。

 これを直感的に理解するには、クラスメイト全員の身長を正確に憶えるよりも、クラスの中で一番背が高い人を憶える方がずっと楽であることを考えればいい。

 人間の脳はいろいろな状況の中で相対的比較を行うよう進化してきたようだ。環境の中で安全に暮らし、判断するにはそれで十分な情報が手に入る場合が多いからだ。


一貫した判断


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 相対的な判断で事足りることも多いだろう。しかし相対的な判断を行う自警団は深刻な犯罪が少なくなると、ちょっとした逸脱ですら”犯罪”の概念に含めるようになる。その結果、懸念された問題を減少させることに成功したという満足は絶対に得られない。

 病気の診断から投資まで、現代人は一貫していることが重要となるいくつもの複雑な判断を下さねばならない。

 だが、そうした態度が必要なとき、人はどのようにして一貫性を保つことができるのだろうか? それは今後の研究課題だ。


最初に問題だったものを書き留めておく


 可能性のある戦略として、一貫性のある判断をしなければならない状況において、カテゴリーをできるだけ明確に定めておくというやり方が考えられる。

 だから、もしあなたが自警団に入ることがあるなら、最初に問題視されていたものが何で、どのように逸脱していったのかを書き留めておくといいかもしれない。

 さもなければ、不審者の対象はどんどん拡大していき、寒くてパーカーのフードを頭にかぶっているだけの人でも通報するようになる恐れがある。

References:theconversation/ written by hiroching / edited by parumo
追記(2018/7/13): 本文の一部を修正して再送します
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2018年07月13日 09:46
  • ID:TbtQq18y0 #
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結局は根源的な恐怖
「死」への対処からそうなるのではと思うのです

2

2. 匿名処理班

  • 2018年07月13日 09:51
  • ID:bvPGMa8K0 #
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goodbad0
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最後の、「さもなければ、不審者の対象はどんどん拡大していき、寒くてパーカーのフードを頭にかぶっているだけの人でも通報するようになる恐れがある。」って下り、漫画版の「日本沈没」でも出てたな。

東京直下型大地震が起こった後に、新宿中央公園に避難した人たちがいるんだけど、そこに、渋谷のあたりから避難してきた青年がやってきて、彼がたまたま「パーカーを着てフードをかぶっていた」ために不審者扱いされた挙句、おびえた避難民に殺されてしまった。

その後、レスキュー隊員たちが救助に来るんだけど、彼らには事前に「フードをかぶって訪れると不審者と思われる」ということが通達されていたために、レスキュー隊員たちは到着後直ちに、フードを脱いで顔をさらして救助活動を始めたっけ。

要は、不安と恐怖心がいかに正常な判断力を奪って、異常で暴力的な行動をとらせるかということになると思うけど。

まあ、それ以前に子供に声掛けしたら、通報される世の中っておかしいよね。
人相の悪い人物が、子供連れで歩いていたら、たとえ実の親子でも通報されるとか。さ。

このコメントへの意見(1件): ※5
3

3. 匿名処理班

  • 2018年07月13日 09:52
  • ID:1pvfJdj80 #
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ありがとう
オレが部屋の掃除をしないのはそうゆーことなんだよ
キリがないからな

4

4. 匿名処理班

  • 2018年07月13日 10:03
  • ID:v3Qp4nKp0 #
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いつまでたっても人は幸せになれないわけですわ

5

5. 匿名処理班

  • 2018年07月13日 10:16
  • ID:26jJF9bz0 #
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※2
昨今の性犯罪に巻き込まれる事件増えてるので
通報もやもなしだけど、実際には怪しい奴
いわゆる顔の怖い奴とか妙なことをする奴って
意外にいい人であり、裏ではボランティアや
社会活動に準じていたりする
本当にやばい奴って世間に目立たないようにひっそりし
顔もこの人犯罪しないよねというようないい顔だったり
ばれたときにはこの人ってこと多い
大体素人が見てわかる犯罪者なんて警察がさっさと
とっ捕まえて犯罪なんて消えるわな

6

6. 匿名処理班

  • 2018年07月13日 10:17
  • ID:SYPnrw010 #
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お金が無いと生活が心配になるけど、お金がたくさんあるとお金が無くなる心配をするようになる。

7

7. 匿名処理班

  • 2018年07月13日 10:48
  • ID:r4yqHfPe0 #
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日本の不謹慎攻撃、社会の訳のわからないルールで攻撃するやつ、過度な学歴、年収マウントなどはこうやって生まれるんだろうな。
絶対的な測定より、相対的な測定の方がエネルギーを使わないから、浅いインスタントな思考回路な人は嵌ってしまう。
なかなか勉強になった。

8

8. 匿名処理班

  • 2018年07月13日 10:54
  • ID:5zCd8.650 #
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二番目の小見出し「脳波わざわざ問題を~」たぶん正しくは
「脳はわざわざ問題を~」だね

9

9. 匿名処理班

  • 2018年07月13日 10:55
  • ID:8wyIrFLo0 #
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プロジェクトのゴールポストも似てる...

10

10. 匿名処理班

  • 2018年07月13日 11:11
  • ID:unIwRWhG0 #
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うーん、短期的な話と長期的な話、個人の話と組織の話と社会の話、はある程度分けた方がいいように感じる
社会の倫理がずっと一貫していたら、DVとかセクハラとかパワハラとかブラック労働とか、ずっと被害者が泣き寝入りして終わるままになってしまう…

11

11. 匿名処理班

  • 2018年07月13日 11:12
  • ID:9fLXiroM0 #
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悩みや心配ってほんと常にまっさらになくなることってなかなかないよなあ
現状に感謝満足していくよう心がけてはいるが

12

12. 匿名処理班

  • 2018年07月13日 11:27
  • ID:xcf6gwb40 #
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子供とすれ違っただけでも男性が一人で歩いていて全身黒尽くめの格好だったというだけで事案扱いとかね

13

13. 匿名処理班

  • 2018年07月13日 11:44
  • ID:K6SyZ5Eq0 #
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心配がないと却って張りがなく感じるってのはあるかなw
リスカとかも張りがなくなりすぎて生きてるのかわからないからするのかもしれん
俺はしないけども

14

14. 匿名処理班

  • 2018年07月13日 12:04
  • ID:5S0gge3Z0 #
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心配性も生活に支障がないなら大切な個性です
自分の個性と付きあう必要があるのは心配性でけではありません

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