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ICO中に金融庁から怖い書面が届いた!5つの対処法を弁護士が解説

金融庁からの手紙

はじめに

ICO(イニシャルコインオファリング)をしている企業の中には、あるとき会社のポストにこんな怖い書面が届き、何をどう対処したらいいかわからない、という方が多いのではないでしょうか?

    「金融庁 監督局 総務課 仮想通貨モニタリングチーム【担当:〇〇】より
    仮想通貨交換業は、登録を受けたものでなければできません。貴社が行っているICOは、これに違反しているおそれがあります。」

    「つきましては、〇年〇月〇日までに書面によりご回答願います。なお、期限までに回答がなされない場合捜査当局への情報提供等、必要な措置を行うことがありますので、念のため申し添えます。」

これを受けて「捜査当局って、警察だろ。。。。このままだとICOはおろか、逮捕されたりするのだろうか?」といった不安な気持ちで一杯で、眠れない夜を過ごしている企業も少なくないはずです。

実際、弊社の方にも、今年の5月を境に、急激にこの手の相談が増加しています。

ただ、こういった緊急対応は、ICO企業にとっては初体験なわけで、何をどうしたらいいのかわからないかと思います。

そこで今回は、金融庁(FSA:Financial Services Agency)からこの手の怖い書面がきたときの対処法を、弁護士がわかりやすく解説していきます。

1 金融庁ってそもそも何?

金融庁の対応

金融庁」とは、銀行・保険・投資などの「日本の金融システム」が円滑に回るよう、管理・監督をしている行政機関です。「金融庁」という名前から、なんとなく「お金にまつわる仕事をしている所かな?」と想像できるかと思いますが、具体的には、

  • お金の貸し借り(金融制度)についての法律・ルールの作成
  • 銀行などの、金融機関に対する検査・監督
  • 株式などの取引についての監視

などを行っています。

2017年には、「仮想通貨」に関する新たなルールが盛り込まれた改正資金決済法(通称:仮想通貨法)が施行され、話題になりました。このように、仮想通貨周辺の法律を改正したり、また、仮想通貨が関係する事業などで法律違反がないかどうかチェックするのも「金融庁」の仕事となります。

ICOには仮想通貨が付きものですので、実施したICOが改正資金決済法に違反していた場合には「金融庁」から怖い書面が届く、というわけなんです。

では、実際にそのような書面が届いてしまった場合、事業者側はどのように対処すればいいのでしょうか?次の項目から具体的にみていきましょう。

2 金融庁対応の5つのステップ

金融庁対応

まずは、金融庁からこの手の怖い書面が届いた場合の対処法のフローを見ておきましょう。

金融庁対応ステップ

以下で順番に解説していきます。

3 ステップ①:回答すべき事項を確認する

手紙確認

まず、焦らずに一つ一つ回答すべき事項を確認しましょう。当然、ガン無視するといった対応はご法度です。

回答すべき事項(=金融庁からの照会事項)は、対象となる企業のステータスを金融庁サイドがどのくらい把握しているのかなどによって違います。

例えば、ICOにおいては、運営母体の情報がほとんど出ておらず、メールアドレスのみ掲載されている企業も少なくありません。

そうすると、金融庁の照会事項としては、「登記簿上の会社の名称、所在地、代表者名」等からヒアリングが始まります。

ただ、おおむね共通する部分がありますので、金融庁からヒアリングされる共通項を掲載しておきます。

  1. 貴社の概要(設立年月日、本店及び支店・関係会社・代理店の所在地、代表者及び役員等の氏名及び履歴、組織図、社員数、他の業務の状況等)
  2. 〇〇コインについて、次の事項を詳細に記載ください。
  3. (1)目的、詳細スキーム、仕組み、概要、営業期間
    (2)〇〇コインが交換可能な仮想通貨及び法定通貨
    (3)市場流通量、流通総額、顧客/保有者数(月毎)、残高/販売額(月毎)。また価格設定及びその根拠
    (4)利用者へ勧誘に使用している資料等一式、セミナーを実地している場合、日時・場所・参加者数
    (5)販売時の本人確認の実施状況(実施の有無、方法)
    (6)苦情の有無(有る場合は、その内容及び対応)
    (7)利用者における購入インセンティブは何か。
    (8)〇〇コイン保有者はどのようなことができるのか。

  4. 〇〇コインの仮想通貨取引所への上場計画等、今後の取り組みについて詳細に記載してください。
  5. 仮想通貨交換業の該当性についての貴社の認識その根拠、弁護士等への法令照会の内容及び見解を詳細に記載ください。
  6. 是正済みの場合には、その対応(仮想通貨交換業務の停止、利用者への返金等)について記載してください。また、仮想通貨を含む返金をおこなっている場合には、返金しことが確認できる書面を添付してください。
  7. 本件に係る担当者の連絡先(住所、電話番号、メールアドレス)

いずれについても、詳細に正確に回答していく必要があります。

後で述べますが、金融庁が一番知りたいであろうポイントは、「4.仮想通貨交換業の該当性についての貴社の認識その根拠、弁護士等への法令照会の内容及び見解を詳細に記載ください。」という項目の中の、「発行体のトークンが仮想通貨にあたるのか?」という点です。

ICOをしている企業が発行するトークンが「仮想通貨」にあたらなければ、「仮想通貨」の交換業のライセンスは不要になり、金融庁は何も言えません。

反対に、「仮想通貨」であるのに、無登録でトークンの「売買、交換」行為をしていると「違法だ!」とされて、ペナルティを受け入れなければなりません。

ここが金融庁への対応で最大のポイントとなるのです。

4 ステップ②:回答期限を延長する

期限の交渉

ケースにもよりますが、回答期限を区切られることが多く、通常、「7日」といった極めてタイトな期限を切ってくることが多いです。

しかし、7日間というのは、緊急対応に必要な期間としてはかなり短く、十分な準備もできないでしょう。

焦って適当な準備しかせずに回答してしまうと、後戻りできない交渉であるがゆえに、企業の期待値とはズレた結果になってしまうリスクがあります。

そこで、企業側としては、十分な準備をするために、「回答期限を延ばせないか」という交渉をすることが考えられます。

期間としては、最大で14日程度と考えていた方が現実的かもしれません。

5 ステップ③:反論を考える

金融庁 反論

回答期限を延ばしたあとに、本題である、照会事項への回答を考えていくことになります。

諸々回答すべき事項はありますが、本質的なところは、

    4.仮想通貨交換業の該当性についての貴社の認識その根拠、弁護士等への法令照会の内容及び見解を詳細に記載ください。

の部分です。

詳細は後で説明しますが、金融庁が取り締まりたいのは、改正資金決済法(通称:仮想通貨法)の「仮想通貨」にあたるようなトークンを「販売(売買)・交換」しているのに、「仮想通貨交換業」の登録をしないでICOをしているような企業です。

そのため、ICOをしたい企業としては、自社のトークンが「仮想通貨」に該当しない、だから「仮想通貨交換業の登録」はいらないんだ!という点を論証できるか否かがポイントになってきます。

6 ステップ④:期限内に、書面をFAX・郵便などで送付

書面 送付

反論を作成したら、後は、きちんと回答期限内に、指定された形式で(多くの場合、FAX郵送)回答書面を送付しましょう。

期限を守らないと、最初に届いた書面に記載されたとおりのペナルティを問答無用で発動される可能性もあるので、期限は絶対遵守です。

7 ステップ⑤:自分で出来ない場合は、ICOに強い弁護士に依頼する

ICOに強い弁護士

これまで金融庁との緊急対応の方法について解説してきましたが、テクニカルな部分も多くあるため、法律の素人(もっというと、「交渉」というかけひきの素人)には厳し部分もあるでしょう。

そのような場合には、ICOの法務アドバイザリー経験の豊富な「ICOに強い弁護士」にまるっと対応を依頼してしまうのもありです。

別の観点ですが、金融庁からの照会事項には

    「弁護士等への法令照会の内容及び見解を詳細に記載ください。」

とあるため、いずれせによ、弁護士に相談する必要があります。

他の交渉の局面では、正直なところ、弁護士にわざわざ相談しなくてもなんとかなるケースも多くありますが、金融庁との緊急対応のケースでは、そうもいきません。

8 金融庁に対する反論のポイント

金融庁への反論のポイント

さて、以上を踏まえて、金融庁ににらまれた企業は具体的に何をどう反論していけばよいのでしょうか?

先ほども少し説明しましたが、ICOをしている企業が発行するトークンが「仮想通貨」にあたらない、例えば、LINEコインのようなものと評価できれば、それをいかに販売しようとも「仮想通貨交換業」をしていませんので、無登録であることについて、金融庁は何も文句は言えません(※もっとも、「前払式支払手段」の規制対象となる可能性は残ります。)。

そこで、ICOをしていた企業としては、とにかく

  1. 自社発行のトークンが「仮想通貨」にあたらないこと
  2. したがってまた「仮想通貨交換業の登録」は不要なこと

をロジカルに論証していく必要があります。次の項目から詳しく見ていきましょう。

9 トークンが「仮想通貨」にあたるか?

仮想通貨

金融庁から怖い書面が届いてしまった場合、企業としてまずすべきは

  • 自社発行のトークンが「仮想通貨」にあたらないこと

を論理的に説明することです。

(1)「仮想通貨」とは何か

仮想通貨」とは、インターネット上でやり取りされる通貨のことで、ネット環境さえあれば世界中どこにいても誰とでも取引することができます。すべてデータとして管理されているため、私たちが普段使っている100円玉や1000円札のような「現金」という概念はありません。また、日本銀行のような公的な発行機関もありません。代表的な仮想通貨として、ビットコインやイーサリアムなどがあります。

2017年は「仮想通貨元年」とも呼ばれ、テレビCMなどを通じて投資家以外の一般人にも仮想通貨が浸透し始めました。また、2018年1月にはコインチェック騒動もあり、より多くの人が仮想通貨を知るきっかけとなりましたね。

ICOにおいては、企業が販売するトークンが法律用語としての「仮想通貨」にあたる場合、「仮想通貨交換業」の登録を受けなければなりません。

(2)判断のポイント

一口に「仮想通貨」といっても、「一般用語としての仮想通貨」と「法律上の仮想通貨」は違います。両者の関係を簡単に図で表すと以下の図のようになります。

仮想通貨の概念

そして、「法律上の仮想通貨」は、改正資金決済法上以下のように定義されています。

  1. 物を売ったり買ったり、サービスを受けるときに、代金の支払いのため、不特定多数の人に対して使うことができること
  2. 不特定多数の人に対して、仮想通貨そのものを売ったり買ったりすることができるような財産的価値であること
  3. パソコンなどに電子的方法で記録され、また、インターネットやパソコンを通じてその情報を移転することができるものであること
  4. 円やドルなどの法定通貨ではないこと

これらの要件をすべてみたすものは、「法律上の仮想通貨」としてさまざまな規制の対象となるのです。言い換えれば、「上記要件のうち、1つでもあてはまらなければ仮想通貨にはあたらない」ということになります。

そのため、事業者は金融庁に対し、「自分たちの販売しているトークンは改正資金決済法上の仮想通貨の要件をみたしませんよ、だから仮想通貨ではないんですよ!」といった形で説明することになります。

このとき、特に重要なのが要件1と2にある「不特定多数の人に対して」という部分です(不特定性)。

この場合の「不特定性」とは、広く誰に対しても、買い物などの際に決済手段として使えたり、仮想通貨同士を売買・交換できることをいいます。そのため、発行者によってある一定の範囲内でしか使えないなどの制限が設けられているような場合には、「不特定性」の要件をみたさず、「仮想通貨」にはあたらないことになります。

たとえば、ビットコインは、店舗側が決済用の端末などを持ってさえいれば、その端末を使って代金の支払いをすることができます。ビットコインを決済手段として使用することに対し、店舗の縛りなどはとくに無く、「不特定性」の要件をみたしています。

他方で、発行者が、使用範囲を発行元グループ会社や提携会社のみに限定しているような場合(Tポイントなどを想像していただくとわかりやすいかもしれません)、「不特定性」の要件をみたさないため、仮想通貨にはあてはまりません。

これをICOについてみると、発行したトークンが以下のようなものの場合には、「不特定性」の要件をみたさないものと考えられます。

  • 自社プロジェクトの中でしか使えないような設計となっている場合
  • ICOのセールで申し込みをした会員に対してのみ販売し、かつ、会員同士しか売買できないような設計となっている場合
  • トークンに譲渡制限をかけ、購入した後は誰にも譲渡・売買することができないような設計となっている場合

つまり、上記のようなタイプのトークンについては、改正資金決済法上の「仮想通貨」にはあたらないため、仮想通貨交換業の登録を受けることなくICOをすることができる、というわけです。

事業者側としてはこの「不特定性」の要件に重点を置きながら、上に挙げた仮想通貨の4つの要件をみたさないことをしっかりと説明することになります。

※なお、厳密に言うと、改正資金決済法は仮想通貨を1号仮想通貨と2号仮想通貨に分けて定義しています。もっとも、ICOにおいて問題となる「仮想通貨」はほぼ1号仮想通貨であるため、この記事では1号仮想通貨の要件を紹介しています。

仮想通貨についてさらに詳しく知りたい方は、「仮想通貨の法律規制とは?仮想通貨法6つのポイントを弁護士が解説!」をご覧ください。

(3)小括

以上のポイントを踏まえて、ICO事業者としては、自社トークンが「仮想通貨」にあたらないことを必死に論証していくことになります。

ここで説得が功を奏し「仮想通貨」にあたらない、との判断を得られればお役御免ですが、「仮想通貨」にあたると判断されてしまった場合には、無登録業者となり「違法」となってしまいます。この場合には、是正措置を取ったうえで、粛々と金融庁の要求事項をクリアしていくほかありません。

次の項目では、必死の抵抗にもかかわらず、金融庁から、発行するトークンが「仮想通貨」に当たり、交換業のライセンスが必要!と認定されてしまった場合の話を説明します。なお、仮に事後的に仮想通貨交換業のライセンスが取得できたとしも、ICOをした時点では「ライセンスが必要なのに、これをとらないでICOをした」という事実に変わりはないので、後で説明するペナルティは受ける可能性があります。

10「仮想通貨交換業」の登録

仮想通貨交換業

仮に、発行したトークンが「仮想通貨」と判断されてしまった場合、ICOを続けるためには「仮想通貨交換業」の登録を受けなければなりません。以下で簡単に、登録を受けるまでの流れを確認しておきましょう。下の図は、登録までの流れをおおまかに表したものです。こちらを確認しながら解説を読んでみてください。

仮想通貨交換業登録の4ステップ、

(1)自社のサービスが仮想通貨交換業にあたるか

仮想通貨交換業の登録申請をする前に、まずは「本当に自分たちのサービス内容が仮想通貨交換業にあたるのか」を確認します。この時点で仮想通貨交換業にあたらない、と判断できれば、登録を受けなくてもサービスの提供を行うことができます。

もっとも、今回のように「発行したトークンが仮想通貨と判断されてしまった場合」には、ICO企業がトークンを販売する行為が仮想通貨交換業にあたることは明白なため、ステップ2に進みます。

(2)登録に必要な要件を備えているか

仮想通貨交換業の登録は、申請すれば誰でも受けられるものではありません。サービスの性質上、登録を受けようとする事業者には、一定の企業実績や財務要件、社内体制などの「登録要件」が求められます。具体的には、以下の6つです。

  1. 組織的な要件
  2. 財産的な要件
  3. 業務遂行に関する要件(社内体制)
  4. 法令遵守に関する要件(社内体制)
  5. 商号についての要件
  6. 他事業についての要件

言い換えれば、これらの要件をみたさないまま申請をしても、仮想通貨交換業の登録を受けることができません

(3)登録の申請手続き

登録の申請に必要な要件を備えていることを確認したら、いよいよ申請手続きに入ります。

申請手続きは以下の大きく分けて以下の2段階あります。

  1. 事前手続き
  2. 本申請

①事前手続き

仮想通貨交換業の登録を受けたい事業者は、まず管轄の財務局へ電話をし、指定された必要書類を用意します。その後、財務局の担当者と面談をし、事前審査を受けます。審査内容については166項目のチェックリストがあるので、事業者はこれに従って申請書を作成することになります。

②本申請

事前審査をクリアすると、ここでようやく登録の本申請をすることができます。本申請には、申請書を含め20種類ほどの書類を用意しなければなりません。

これらをすべて用意するのはとても大変な作業ですが、申請書や添付書類の記載内容に嘘や間違いがあると登録をうけられなくなる可能性があるため注意が必要です。

(4)仮想通貨交換業の登録完了

本申請の手続きが済んだら、あとは登録が認められるのを待つだけです。

もっとも、現在登録申請が100件ほどあり、審査をうけるまで非常に時間がかかる状態となっています。そのため、本来であれば6ヶ月ほどで済むはずの登録手続きが、実際には8~12ヶ月ほどかかってしまいます。登録申請は、準備などを含め、時間に余裕をもって行うことをおすすめします。

以上が仮想通貨交換業登録のおおまかな流れとなります。登録手続きについてさらに詳しく知りたい方は、「仮想通貨交換業の登録方法は?申請の要件や4つの手順を弁護士が解説」をご覧ください。

11 ペナルティ

ペナルティ

仮に、仮想通貨交換業の登録を受けないままトークンの販売(=仮想通貨の取引)を行った場合、

  • 最大3年の懲役
  • 最大300万円の罰金

のどちらか、もしくは両方が科される可能性があります。

意外と重いペナルティとなっているので、必ず登録を受けた上でトークン販売を行うようにしましょう。

12 海外ICOという選択肢

ICO 海外

金融庁と交渉した結果、日本国内でのICOを継続することが難しい場合、「海外ICO」という選択肢が出てきます。

もっとも、一口に「海外ICO」といっても、2種類あることをまず知ってください。

  • A案)海外法人を立てて、そこを拠点に、日本居住者向けにICOをする
  • B案)海外法人を立てて、そこを拠点に、海外投資家向けにICOをする

いずれであるかによって、ICOの設計や合法性が変わってくるため、この違いを知っておくことがポイントになってきます。

また、いずれのパターンにおいても、

  • ホワイトペーパー、LPの英語化
  • 日本人居住者向けには販売していない旨の明示

などの措置が求められます。

(1)日本人居住者向けのICO

海外法人を立ててそこでICOをしたとしても、日本居住者から資金調達をしたいのであれば日本のルールに従わなければなりません。ICO企業が発行するトークンが「仮想通貨」にあたるのであれば、やはり「仮想通貨交換業」の登録を受ける必要があります。金融庁のスタンスとしては要するに、ICOの拠点が日本であれ海外であれ、日本居住の投資家からお金を集めたいのであれば日本のルールに従ってね、ということなのです。

もっとも、仮想通貨交換業の登録を受けるには、登録要件をはじめ多くのハードルを超えなければなりません。これは、設立したてのスタートアップ企業などにとっては絶望的な状況といえます。そのため、ほとんどの事業者がこの時点で「仮想通貨交換業の登録を受けて日本居住者から資金調達をすること」を諦めることになるのです。

ただし、取引所を介しての販売委託スキームの場合には、金融庁もこれを直ちに違法とはしておらず、規制すべきかどうかは結論が出ていないようです。

(2)海外投資家向けのICO

他方で、①海外に法人を立てて、②実際に海外の投資家向けにICOをしているケースでは、金融庁の規制は全く及ばず、後は現地の法律さえ守っていれば合法的にICOができます。

というのも、「法律」というのは、「属地主義」といって、問題となる「行為」が実施された土地の法律が適用されるのが原則だからです。

ICOの規制についても同様で、例外を認める特別な事情がない限り、原則に従って処理されるところ、このようなケースで金融庁が口を出せる根拠が全くありません。

そのため、現地の法律に従ってICOを行う限り、金融庁からとやかく言われることはないでしょう。

ただし、いくら気を付けていても、結果的に日本人居住者が紛れ込むことはあります。

このような場合は、金融庁の判断次第かと思いますが、経験した限りでは(日本人居住者の割合などにもよりますが)、金融庁からとやかく言われたことはありませんでした。

13 小括

まとめ

ICOは事業者にとって魅力的な資金調達方法の1つですが、改正資金決済法上のルールを守っていない場合には、金融庁から冒頭に挙げたような怖いお手紙が来てしまいます。

海外ICOについても同じことがいえますが、資金調達を行うのであれば、その国の法律規制に従うことが大前提となります。

この点を念頭においた上で、どこで・誰から資金調達をするのか、ICOの方法を検討してみてください。

14 まとめ

これまでの解説をまとめると。以下のとおりです。

  • 「金融庁」とは、銀行・保険・投資などの「日本の金融システム」が円滑に回るよう、管理・監督をしている行政機関のこと
  • 金融庁からICOに関して資金決済法違反を指摘する手紙が届いたら、その対処として①回答すべき事項を確認する、②回答期限を延長する、③反論を考える、④期限内に書面をFAX・郵便などで送付する、⑤自前でできないならICOに強い弁護士に相談する、がある
  • 金融庁に対する反論のポイントとしては、①自社発行のトークンが「仮想通貨」に当たらないこと、②したがって「仮想通貨交換業の登録」はいらないこと、の2点がある
  • 国内でのICOが難しいと判断した場合、海外ICOという選択肢もある

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