アインズ様の無礼講   作:おt
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長々と続く妄想を暖かい目でご覧下さい。ニッコリ


アインズ様の無礼講

神々の居城ーナザリック地下大墳墓。豪華絢爛な王座の間や地下とは信じがたい空間が広がる聖域である。

そして、その聖域の支配者であり強大な魔法使いであるアインズ・ウール・ゴウン。

下僕から一身に忠誠を捧げられ、至高の存在と崇められる彼は、、、

 

「どういうことだ、、これは、、、」

 

クローゼットの前で頭を抱えていた。

 

ことの顛末は一般メイドの報告から始まった。

一般メイドは9,10階層の清掃を担当しているのだが、勿論、至高の存在であるギルドメンバーの部屋も清掃を行う。

そして、彼女らがいつもの様にギルドメンバーの一人、るしふぁーの部屋の清掃を行っていると、クローゼットから隠し扉が発見されたのだ。

至高の存在であるギルドメンバーの私物をNPCである彼女らは荒らすことは到底出来ないと考えた。しかし、放置するのも問題である。(部屋の人物が人物なだけに)

そこで、アインズに連絡をとり、るしふぁーの部屋に駆けつけてもらったという状況であった。

 

「これは、完全なる狂騒だよな?しかし、こんなに量を集めてどうするつもりだったんだ?」

 

隠し扉の中には、アンデットの精神耐性すら解除するアイテムである完全なる狂騒の山が築かれていた。

同じアイテムを大量に持っていること自体は珍しいことではない。かく言うアインズも廃人プレイヤーの証として残った課金ガチャのハズレアイテムを山の様に所有している。

しかし、発見された場所や持ち主を考慮すると、嫌な予感しかしない、、、

 

「しかし、放置は最も愚策。お前達は部屋の外に避難していろ。このアイテムは私が処理しよう。」

 

御身を御一人にするのは!という定番のやり取りを行った後メイド達を退出させてアインズは作業を開始する。

ちなみに護衛である八肢刀の暗殺虫(エイトエッジ・アサシン)は室内に残っているが非NPCである彼らにアインズは、注意を払っていないので当然の流れである。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

「至高の御方の持ち物とは言え、御方に清掃などの雑事をしていいただくのは、不敬ではないかしら、、、」

 

今回、るしふぁーの部屋を清掃していたメイドはシクスス、フォアイル、リュミエールの三名である。そのうちの一人、リュミエールが不安をこぼす。

 

「でも、あれって最近あった守護者の方々の騒ぎの原因になったアイテムじゃなかった?」

 

「あっ!だからアインズ様は下僕に撤去させるのは危険と考えてご自身で行動なされたのね」

 

フォアイルが提供した情報により三人の顔に理解の色が広がる。同時に危険な作業と知っていて下僕を下がらせるアインズの慈愛に三人が歓喜を表していると

 

ガタガタガタッ

 

「「「!!!」」」

 

「今、部屋の中からすごい音したよね、、?」

 

三人が顔を見合わし、互いに確認をする。

 

「アインズ様?今の物音は何でしょうか?異常などが発生したのですか?」

 

シクススが代表してドアをノックし尋ねる。

 

「、、、、、」

 

しかし、部屋から返答はない。 

 

「大丈夫ですか!?アインズ様!?」

 

ドアを開けた三人の顔色は真っ青であった。もし、唯一残っていただいた至高の御方に何かあれば自分達の命では謝罪にもならない。そんな思いを抱きながらの入室であったが、、、

部屋には崩れた完全なる狂騒の山と踊り狂っている八肢刀(エイトエッジ)の暗殺虫(アサシン)しかいなかった。

 

「なにこれ?どういう状況、、、?」

 

理解できない光景が広がるなかフォアイルが完全なる狂騒の山に目を移す。

 

「んっ?何か紙が落ちてるよ。なになに、、、、、、えっ!!」

 

「どういうことが書いてあるの!?」

 

シクススがフォアイルに詰め寄る。

 

「すぐに階層守護者の方々に伝えなきゃ!シクスス!リュミエール!アインズ様の執務室に急いで行きましょう!内容は移動しながら教えるわ!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

「それで?デミウルゴス。あなたが担当している聖王国の件で問題は起こっていないのかしら?」

 

「えぇ、勿論ですよアルベド。現在、計画は最終段階の手前まで来ています。何も問題はありません。」

 

場所はアインズの執務室であるが、そこにアインズの姿はなく、ナザリックの頭脳である二人の悪魔がいた。

彼らはアインズの最終目的である世界征服について相談し、計画を推敲しているため表情は真剣そのものである。

 

「あぁ!1日も早くアインズ様に宝石箱、、世界をお渡ししたい!その為に我々も努力しなければなりませんね!」

 

「えぇ、その通りね。あの御方には世界の王として君臨される姿が非常にお似合いになるわ!くふふふふ。」

 

そんな、アインズが聞いたら「もっと肩の力を抜いていいぞー」と発光しそうな内容を語っていると、、、

深みある漆黒が表れる。それを確認した臣下の二人はその場で膝をつき主人の入室を待つ。

しばらくもしない内に、圧倒的な死の気配を纏いながらアインズ・ウール・ゴウンその人が二人の前に立つ。

 

「お帰りなさいませ。アインズ様」

少し前にアインズを執務室から見送ったアルベドがアインズに言葉をかける。

 

「、、、、」

 

返答がない。いつもならばなにかしら、主人は声をかけてくるはずだ。何か失態を犯したのだろうか?

不信に思い、アルベドが頭を下げたままアインズを確認する。

主人は目が虚ろな状態で(骸骨の顔に目玉はないのだが)デミウルゴスを見ていた。

 

「デミウルゴス居たっけ?」

 

「いえ、アインズ様が執務室からお出になられた時には入室していませんでした。今回は兼ねてから進めていた聖王国の件が最終段階の手前まで進行したので、その報告と次の段階へと進めるご許可をいただきに参りました。」

 

主人の様子がおかしいとは思いつつもデミウルゴスは執務室にきた目的を説明する。

 

「そーかー。流石はデミウルゴスだな!!」

 

「いえいえ。私などアインズ様の叡知には比べようもございませんっっ!!?」

 

いつもの様にアインズの賛辞にデミウルゴスが返答しようとした、その瞬間!

 

ギュッ

 

アインズがデミウルゴスに抱きついた。

目の前の光景を理解出来ずアルベドが目を開け閉めする。その間もアインズの奇行は続く。

 

「いつも完璧に任務を実行出来るしウルベルトさんもお前の様な子を持てて鼻が高いと思うぞ!。ご褒美に撫でてやる。よーしよーしよしよし」

 

骸骨がスーツを着た男性をむつごろう方式で撫でている姿は邪教の洗礼にしか見えない。ちなみにこの間デミウルゴスはずっと固まってしまっていた。

その間に少し冷静になったアルベドがズルイッと抗議の声をあげる。まぁ、本人の様子を見るととても冷静には見えないのだが、、、

 

「おーアルベドか!相変わらず美しいなー、、、よし!結婚しようか!」

 

「えっ!!?、、、まじで!?、、、いや本当に!?」

 

アルベドが一瞬固まり、言葉の意味を理解すると羽が激しければ蠢きだす。

(アッアインズ様とけけけけけ結婚!?くふーまじか!たまんねぇな!!おいおいおい)

ちなみにデミウルゴスは驚きのキャパシティが振り切って石像の様に動かない。

 

「くふーっ!アインズ様!!!」

 

感極まったアルベドがアインズに抱きつくために動く。

しかし、そこにはもうアインズの姿はなく閉じたゲートの魔法が存在するだけだたった。

 

「、、、、、、」

 

執務室に静寂が訪れる。二人がめぐるめくる状況に困惑してたための静寂である。そんな状況でドアをノックする音が部屋に響く。

 

「失礼します。重要な案件の報告に来ました。フォアイル、シクスス、リュミエールの三名の入室の許可をいただきたいです。」

 

重要な案件というのは先程のアインズの件に関係があるのはタイミング的に間違いないだろう。そう判断したアルベドは顔をヒドインから守護者統括のものに変える。

 

「入室を許可します。」

 

「失礼します。早速ですが報告致します。アルベド様は先程アインズ様がるしふぁー様の部屋に問題を解決に赴かれたことはご存知になられてましたよね?」

 

「えぇ、そうね。そう記憶しているわ」

 

三人のメイドは守護者二名の様子がおかしい(特にデミウルゴス)とは思ったが、一刻も早く自身の知っている情報を伝えるために話しを進める。

アインズがるしふぁーの部屋にあった完全なる狂騒を一人で片付けていた途中に問題が発生したという大まかな状況を説明したフォアイルは、手に持っていた紙をアルベドに手渡す。

 

「私達が部屋に入るとこんな紙が落ちていたのです。」

 

アルベドが紙に目を通すと驚愕の表情を浮かべる。

 

「何と書いてあるのですか?アルベド」

 

フォアイル達の説明の間に石化から帰ってきたデミウルゴスも紙に目を向ける。

 

~こんにちはーみんな大好きるしふぁーだよーテヘペロ

みんな俺が引退して悲しんでるかなぁ?

そんな君にプレゼントだよーw

この手紙を読んでるやつはギルメンの誰かだと思うけど先に謝っとくね!ご☆め☆ん☆

この大量の完全なる狂騒のなかには、一つだけ俺の作った完全なる狂騒プレミアムがあるよ。効果は精神耐性を取り除くだけじゃなくて酔いのバッドステータスをあり得ないくらい受けるって感じw貴重金属を下地にレアなデータクリスタルをめちゃくちゃ使ったから効果のほどは保証するよ☆しかも、完全なる狂騒プレミアムは異形種が手に持つだけで発動しま~すw 多分、ギルマスが被害受けると思うけど他のやつでも効果はよゆーで出るよ☆ざまぁw ~

 

非常にむかつく文章構成ではあるがこの手紙で大体の状況は掴めた。

 

「なるほど、確か完全なる狂騒はヒモをひいて発動するアイテム。先日、騒ぎの元凶となったアイテムをアインズ様が発動させるのは考えづらいと思いましたが、、、

似て非なる未知のアイテムであれば対策は難しいでしょう。」

 

「この手紙に書いてあることが本当ならアインズ様は今、酔いのバッドステータスの影響を大きく受けているということね」

 

そういうことならば、先程のアインズの行動にも納得はいく。

 

「るしふぁー様の部屋では、完全なる狂騒プレミアムの影響を受けたと考えられる八肢刀の暗殺虫達が酔いのバッドステータスの影響で踊り狂っていたので、アイテムを発動させてしまったのは間違いないかと」

 

リュミエールが更に情報の補強を行う。

 

「んっ?つまりアインズ様は今、護衛も伴われない状態でどこかに転移したということですか!?」

 

その場にいる全員の顔が青ざめる。しかも、護衛がいないだけでなく本人は泥酔状態である。これは、アインズでなくても心底心配される状況と言える。

 

「デミウルゴスはパンドラズアクターに完全なる狂騒プレミアムについての情報を聞きに行って頂戴!何か知っているかもしれないわ!私は姉さんにアインズ様がどこに転移されたか探るように指示を出して来ます。アインズ様の居場所が分かり次第、すぐに下僕を派遣しましょう!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

そんな下僕達の心配を一身に受けている状態のアインズは、執務室から転移ゲートを開き帝国の執務室に向かっていた。

さて、ここまでアインズの状態を見ていると分かってくるが、鈴木悟は酔っ払うと絡み酒になる人間である。しかし、本人は泥酔状態になったことがないので、その事実は本人ですら知り得ない情報ではある。まぁ、鈴木悟の元いた世界で泥酔するほど酒を飲むのは非常に贅沢であるし、本人もそんな金があるならユグドラシルに課金するので仕方ないことではあるが。

 

ーバハルス帝国の執務室ー

「それで?かの国の商人との取引のために遣いのものはおくったか?」

 

「はい。昨日の朝方には出立しております。」

 

帝国の執務室には皇帝のジルクニフ、側近である優秀な秘書官に護衛のバジウットとニンブルが詰めていた。

かの国とはスレイン法国のことであり、魔導王アインズ・ウール・ゴウンと闘うためにはスレイン法国をはじめとした国々と連合を組む必要がある。今、行っている会議はその下準備の話しである。

そんな危険な話しをしているところに漆黒の闇が表れる。

 

「お下がり下さい!陛下!」

 

大虐殺の折にこの魔法を魔導王が使用したのを目撃したニンブルと、戦士の勘が極限まで鋭いバジウットが皇帝と楕円状に広がる闇の間に入る。

 

その後、闇から豪奢な衣装に身を包んだ骸骨が表れる。

 

「やぁ、アインズ。今日はどうしたんだい?私と君の仲だから訪れてくれるのは嬉しいが、出来れば正式に訪問してほしいな。君を出迎えるときは歓待したいからね」

 

ジルクニフは、余裕をもって心から浮かべた様な笑みを浮かべるが、内心では声が震えなかった自分を誉めたい気持ちでいっぱいだった。

(この話しあいのタイミングに登場してきたということは、連合の計画は既にばれている!?それとも偶然か?)

 

そんなことを考えているとアインズが無言でジルクニフに近づく。護衛の二人が止めようとするが魔法的力か止めることができない。

この執務室にいる誰もが顔を絶望の色に染めるが、当の魔導王は

 

「ジルクニフ~俺達友達だよなぁ!」

 

ナザリックで謁見したときには考えられないテンションが高い?声で親しげに肩を組んできた。

 

「あぁ、、もちろん君は私にとっても大切な友人だし大切にしたい縁と言えるね」

 

ジルクニフは混乱の極みにいた。魔導王がどんな言葉でスレイン法国との会合を糾弾してくるかと対策を考えていたのに、掛けられた言葉は友情の確認である。

あの叡知に溢れる魔導王がこんな行動をとるためにわざわざ帝国まで赴くとは考えられないので、何か裏はあるのだろう。

 

「おーそうだよなー、、友情は尊いものだよなぁ、、」

 

そんなジルクニフや周りの人間の慌てようを気にする様子もなくアインズは、遠い目をしている。

 

「これは、この前エ・ランテルで買った酒なんだがジルクニフも飲むか?」

 

魔導王は空間に手を入れると、そこから酒瓶とコップを取り出す。さっきまで遠い目をしていたのに行動のスピードがいやに早い男である。

 

「いやぁ、今は公務中だからね。君の誘いは嬉しいがこの酒は公務の後にゆっくり飲ませてもらうよ。」

 

ジルクニフとしては、酒を飲めないアンデットに進められた酒など毒が入っているかもしれないのに、この場で飲めるはずがない。

 

「そうか、、、それなら仕方ないなあ。じゃあ、後でゆっくり飲んでくれ。おっととっ!」

 

アインズはジルクニフに酒瓶を渡そうとするが、途中で落として床で割れてしまう。本人が泥酔なことを考えれば当然あり得るのだか、そんなことを知らない周りの帝国人は強大な魔導王の失敗を不可解に思う。

 

「すまないな、ジルクニフ。これは私が片付けよう。」

 

「いやいや、近隣国の王である君がそんな雑事をする必要はないとも、こちらで片付けよう」

 

「それは、違うぞジルクニフ。王という立場とはいえ自分の失敗は自分で後始末をつけるべきだ」

 

魔導王はそういうと清潔の魔法を使い散らかったものを片付けた。

それを見ていた周りの反応は2つに別れた。青ざめた顔をした秘書官、ジルクニフと感心した態度を見せたバジウットとニンブルである。

 

「さて、仕事の邪魔みたいだったなジルクニフ。これからも互いにいい関係を築いていこうか」

 

そういうと魔導王は入室してきたときの様に漆黒の闇に姿を消していった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

「ちくしょう!!そういうことかアインズ・ウール・ゴウン!!ここまてま綺麗に脅しを仕掛けてくるとは!!」

 

魔導王が執務室を去った後に響いたのはジルクニフの怒号だった。

 

「へ、陛下。あの魔導王はどんな目的でやって来たんでしょうか?俺からすると飲みの誘いにきたようにしか見えなかったんですが、、、」

 

バジウットだって魔導王が飲みの誘いに着たわけでないのはジルクニフや秘書官の空気で分かってはいるが疑問が大き過ぎるので質問する。

 

「やつは、魔法的手段かその叡知かは知らないが、帝国が対魔導国同盟を作ろうとしているのを読んだのだろうな。まず、私とやつが友であるということを確認してきた。それが今回の脅しの初めの一手だな」

 

「はい。今になって考えれば友情の確認には裏切りは許さないという意思を見せるのが目的だったと思われます。」

 

秘書官がジルクニフに賛同する。そして、

 

「陛下、あの酒瓶のラベルをご覧になられたのでしょう?顔色が一気に青くなられたので、、、」

 

ジルクニフが苦笑する。

 

「ああ、お前も気づいたか、、、ならやつはそんな私を見て内心ほくそ笑んでいただろうな、、、」

 

「酒瓶のラベルに何かあったのですか?」

 

秘書官とジルクニフの話しについていけないニンブルが口を開く。

 

「あの酒瓶のラベル名は''人類讃歌''スレイン法国産の酒だ。」

 

「つまり、酒瓶を割ったのは帝国がスレイン法国と手を組むなら容赦しないということでしょうか?」

 

「それもあるだろうが、一番問題なのはやつがその瓶を自分で掃除して放った言葉だな」

 

「自分の失敗は自分で後始末をするべき、、でしたか?」

 

「陛下つ、つまり魔導王陛下は魔導国とスレイン法国が闘う際に帝国には魔導国と共にスレイン法国と敵対しろと言うことを匂わせたということでしょうか?」

 

「あぁ、まぁつまりそういうことだろう」

 

その言葉を聞いたバジウット、ニンブルにも衝撃が走る。つまり帝国は人類を裏切らなければ許さないということである。

 

「しかも、最初の友達発言から考えると相手は対魔導国同盟の動きをよんでその事を今回の脅しでカードとして切ったということだろうな、、、、どこまでも恐ろしい知謀の持ち主だ、、、」

 

実際、酒はエ・ランテルでこの世界の字が読めないモモンに扮するアインズが適当に買ったものである。店主もスレイン法国から王国に酒が入るのは珍しかったので薦めただけである。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

ーカルネ村ー

王国軍が攻めてきたあとの傷痕は残るが、新たに召喚された5000のゴブリンや貸し出されたストーンゴーレムによって順調に復興が進んでいる。

そんな状況でカルネ村村長ー周りからは将軍と呼ばれているエンリ・エモットは家で料理を作っていた。

(ゴブリンさんの食事がどうしても足りないよなぁ。あまり恩人の手を借りすぎるのも良くないけど今度、ゴウン様に相談してみよう!)

カルネ村の自給率を考えるとどうしてもゴブリン達の食事までは手がまわらなくなってしまう。そんな、世知辛いことをエンリが考えていると、恋人のンフィーレアが走って家に入ってきた。

 

「エンリ!大変だ!ゴウン様がいきなり現れたんだ!」

 

確かにいきなり村に人が表れるのは変ではあるがゴウン様ならそれぐらいするだろうとエンリが疑問に思っているとンフィーレアがそれを察知したのか情報を付け足す。

 

「様子が変なんだ!なんというか酔っぱらってる感じ?」

 

「ゴウン様はアンデットだからお酒は飲めないでしょう?」

 

「とりあえず、一緒に来てほしいんだ!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

エンリが現場に到着すると信じられない光景が広がっていた。

ゴウン様が隣に座った村人(ほとんど平服した状態)に酒を注いでいたのだ。

そして、ゴウン様自体も酒瓶を口に運んでいるので飲んでいるつもりだろうが、豪奢な衣装が一瞬だけ濡れているので実際は飲めてないのだろう。

エンリがこの騒ぎの元凶に声を掛けようとすると、誰もいないはずの横から声が聞こえる。

 

「アッアインズ様!?お供もお連れにならずなにをなされているのですか!?」

 

いつもの透明になる魔法を使っていたのだろうか?いきなり現れたルプスレギナに驚くが、もっと驚くことがあった後では驚きは薄い。

ルプスレギナに気づいたアインズが何か言おうとする。しかし声を掛けようとする前にエンリの目の前に黒い楕円形のものが表れる。

 

「っ!!」

 

エンリは言葉を失った。周りの村人も口を開くものはいない。闇を通ってきたのは、圧倒的な美しさを全身に宿した女性であった。しかし、人間でないのは頭に生えている角や腰辺りの翼を見れば一目瞭然ではある。しかし、そんなことに目が行かないほどその存在は美しかった。

こんな状況では周りが静かになるのは仕方ない。仕方ないではあるが結果として、その場にいる酷く間が悪い男の発言が周りに響くことになる。

 

「おー!!ルプスレギナか!相変わらず可愛いな!よーし結婚するか!」

 

先程とは、全く違う理由で周りに静寂が訪れる。

それは、さっきまでは美しさを全身から放っていた女性が今度は殺気を全身から放ったためである。

 

「ルッ!ルプスレギナァ~あんたぁアインズ様にぃ私が将来を誓いあったアインズ様に色目つかったのかぁー??」

 

あまりのオーラに村人は勿論、ルプスレギナの健康的な肌も色を失う。 

 

「それくらいにしたらどうですかね?アルベド」

そんな、恋の魔獣(ヒドイン)の暴走を止めたのは耳障りの良い声を出す悪魔であった。ルプスレギナやエンリ、一部のゴブリンには、彼は悪魔ではなく、天使に見えたことだろう。ちなみに他の村人や大半のゴブリンは、気絶してしまっているのでそんな感想すら抱けない。

しかし、そんな天使(悪魔)の口からとんでもない言葉が発せられる。

 

「アインズ様は今、酔いのバットステータスを受けているとは言え、アインズ様の意思は全てに優先されます。そんな、アインズ様が婚約の話をしているのを邪魔するのは不敬ではないかね?守護者統括殿?」

 

「えっ!?私がアインズ様とけっ結婚!?」

 

その言葉を聞いたルプスレギナの肌は健康的を通り越して病的に紅くなる。

アルベドとしてもナザリックの絶対支配者アインズに妃が一人ということは奇妙な話と考えているので、その場は口を閉ざす。

 

「ところでアインズ様?ルプスレギナに何か話しておくことはありますか?」

 

デミウルゴスには、一つ恐ろしい懸念がある。それはナザリックに最後まで残って下さった至高の御方がこの地を去られることである。勿論、至高の御方が愛想を尽かさないように忠義を尽くすことは当たり前ではある。しかし、もしこの地を去るにしても我々、下僕に忠義を尽くせる相手、つまりアインズの御子を残してほしいのである。

(しかし、アインズ様は普段はその様な態度はお見せにならずどこまでもストイックな御方。そんな御方が酔いのせいであるとはいえ、ここまで好色を示すのは私としては非常に好ましいことです。)

アイテムの効果が切れれば、婚約の件を否定するのはデミウルゴスとて分かってはいる。しかし、この出来事でこの問題に進展があればこれ以上に嬉しいことはない。

 

「ルプスレギナー。お前も毎日、任務頑張ってるだろー?よーし撫でてやろう!よーしよーしよしよし」

 

ここでもアインズのむつごろう方式の撫で撫でが発動する。しかし、前の光景が邪教の洗礼だったのに比べれば今回は撫でられているのが犬顔の美女であるため、非常に絵になる。

 

「アインズ様!?至高の御方がそんなお止めくださいぃー、、、くぅーん、くぅーん」

 

「アインズ様!私も同じ愛してる女のはずです!私にも撫で撫でを下さいっ!!」

 

そんな、ルプスレギナの様子を見ていたアルベドもこれはチャンスとばかりに乱入する。

 

「おーアルベドかー?撫でほしいのか?良いぞよーしよしよし」

 

そんな、要望を聞いたアインズは片手でルプスレギナ、片手でアルベドを撫でる。

 

「んっっう!!」

 

 

撫でられたアルベドの顔が崩れる。まぁ、崩れるといよりはアヘ顔といった方が伝わりやすいだろう。

そんなカオスな状況な闇から新しい異形が現れる。

 

「デミウィルゴス様~!!我らの主!アインズ様は~ご無事でしたかっ!?」

 

「あぁ、ありがとうパンドラズアクター。わざわざゲートを開いてもらってすまなかったね」

 

今回はシャルティアを呼んでアルベドと喧嘩をされるのは避けたかった(デミウルゴスの御子計画のため)のと、ナザリック1アイテムに詳しいパンドラズアクターの知識を借りたかったためアインズの姿をとってゲートを開いてもらった。

 

「いえいえーまっったく問題ありません!しかし、デミウルゴス様?そろそろ完全なる狂騒プレミアムの効果時間が切れるころでは?」

 

「あぁ、確か効果時間は30分でしたか?」

 

「ええ、そのとおーり!!このアイテムの破格な性能を考えると、30分の効果時間というのはとんでもないものですねぇ!」

 

その破格な性能を出すためにはアインズが発狂する量のレア金属とデータクリスタルが必要という条件があるのだが、そんな恐ろしいイタズラを引退前にやらかす辺りがアインズですら苦手と言わしめる、るしふぁーらしいと言える。そんな男性守護者のやり取りからしばらく時間が経ち、、

 

「、、、、んあ?ここはどこだ、、、ってえええええええ!!!」

 

アインズが正気に戻ると目の前には白目を向いてアヘ顔の美女といつもの快活な雰囲気はなく、淫靡なオーラを纏った美女がいた。勿論、精神安定化さんがお仕事を頑張ってはいるが安定化が追い付かない。

チカチカ光るアインズを尻目にデミウルゴスとパンドラは撤収の準備を始めた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

「あぁーまじかーぁぁ。アイテムのせいとは言えすごい暴れ回ったみたいだなぁー」

 

現在、アインズは今までの状況をデミウルゴスに聞いた後、あまりのショックに半日自室に引きこもっている。

 

「なんか、デミウルゴスも顔が紅かったけどあいつにそっちの気でもあんのかなぁ」

 

報告の時に自分がアインズに撫でられた話を幸悦とした表情で語っていたデミウルゴスを思い出す。

(まあ、それだけ忠誠心が強いということだろうなーNPCにはもう少しボディタッチを増やした方がいいかもしれないな。)半日発狂して少し落ち着いたアインズはナザリックの絶対支配者として仕事に戻った。  

 

 

その後、完成なる狂騒プレミアムを求め宝物殿に入り浸る夢魔やアインズを見るたびに幸悦の表情を浮かべる駄犬によって、今回の騒動はナザリック内にも広がり大きな騒ぎになるのだが(主にアルベドとシャルティアが中心)一番の被害を受けたのは、深読みをし過ぎたジルクニフの頭皮であるのは言うまでもない話しである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ジルクニフの深読みが作中で一番好きなんです。皇帝陛下のファンの方はすいません(土下座)







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