企業の人手不足が年々深刻化している。帝国データバンクの調査によると、人手不足の割合が最も高い業種は、正社員では「情報サービス」(69.2%)、非正社員では「飲食店」(77.3%)だ(出典:「人手不足に対する企業の動向調査 2018年4月」)。
結果として、IT企業では優秀な人材に年功序列型の賃金体系から外れた高給を出すところが出てきており、サービス業のパート・アルバイトの時給も上昇を続けている。しかし、給料の額だけで人材獲得競争を続けるのは難しく、仕事や職場の魅力が人手不足解消のもう一つの鍵になる。
IT産業において、リモートワークやフレックスタイム制の導入、飲食店のパート・アルバイト雇用においては、営業日数や時間の短縮、「週1日、3時間からOK」のようなシフトの細分化、非正規社員の正社員化といった働き方改革の事例がよく見られる。
スープ専門店「Soup Stock Tokyo」を展開するスープストックトーキョーでは、これらとは異なる角度から従業員の働きがいと働きやすさを推進し、顧客へのサービス向上や従業員のキャリア支援にもつなげようとしている。
独自の取り組みの経緯や内容、その効果について、2005年にアルバイトとして入社し、現在は取締役兼ブランディング本部長兼人材開発部長を務める江澤身和さんに話を聞いた。
同社はスープ専門店「Soup Stock Tokyo」を中心に、冷凍スープの販売店なども含めて全国で69店舗を運営する。正社員180人あまりのうち約40人が商品開発や経営、バックオフィス業務を担い、それ以外の約140人とアルバイト約1500人が店を切り盛りしている(2018年3月時点)。
同社ではアルバイト従業員のことを「パートナー」と呼ぶ。江澤さんも、2005年にパートナーとして入社したのが同社でのキャリアのスタートだ。
短大卒業後、「いろいろなところで働いてみたい」とフリーターになり、いくつか別の仕事を経て選んだ職場だったが、会社やそこで働く人などに魅力を感じ、翌年には正社員に。その後、いくつかの店での店長、新規事業の冷凍スープ専門店の立ち上げ、複数店舗を管理するエリアマネジャーを経験。15年に人材開発部が新設されると同時に部長に任命された。この時点で翌年に親会社のスマイルズから分社することが決まっており、分社後の人事評価制度を作るのが、部長としての最初の大きな仕事だったという。
分社化は、スープストックトーキョーにとっては自分たちの存在意義を再定義する機会となり、江澤さんにとっては働き続ける中で抱いてきたさまざまな思いを形にする機会となったようだ。
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