弁護士の中川勝之です。

 

 上智大学、上智短大等を運営する学校法人上智学院の不当労働行為事件について、本日7月6日、東京都労働委員会にて第1回調査期日が開催されました。申立人は首都圏大学非常勤講師組合です(本年4月23日申立)。

 

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 組合は、二人の組合員の2018年3月末の雇止めにかかる団体交渉が、不誠実団交(労組法7条2号)ないし支配介入(同条3号)と主張しています。
 雇止めとなったのは勤続5年(2013年4月1日採用)の組合員と、勤続16年(2002年4月1日採用)の組合員です。

 いずれも無期転換申込権(労契法18条)阻止の雇止めです。

 

 特に前者の組合員には2014年の契約更新の際、4年上限の定めが契約書に記載されましたが、同組合員が調べたところによると、周りで同じ2013年4月1日に採用された非常勤講師は2018年3月末で雇止めになっていました。
 学校法人上智学院は、就業規則には5年上限の定めを入れないまま、2013年4月1日以降に採用した非常勤講師の個別の契約書に5年上限の定めを入れたと考えられます。

 この点については、本年3月23日、組合の松村比奈子委員長及び大野英士副委員長が平塚労働基準監督署に告発状を提出しました。
 告発事実は、学校法人上智学院が、2013年4月1日以降に採用された非常勤講師について、「更新により契約期間が5年に達する時」という「退職に関する事項」を定めておきながら、同事項を記載した就業規則を労働基準監督署長に届け出なかったというものです(労基法89条違反)。
 告発の件は、本年3月27日のしんぶん赤旗が報じていましたが、先日、平塚労基署から告発について正式受理をしたという連絡がありました。

※■しんぶん赤旗(2018年3月27日)記事(
全国国公私立大学の事件情報より引用)


 首都圏大学非常勤講師組合は、上智大学にだまし討ち的な手法で非常勤講師を5年雇い止めしようとしているとして撤回を求めています。23日には、松村比奈子委員長、大野英士副委員長が労働基準法違反にあたるとして神奈川・平塚労働基準監督署に刑事告発しました。
 上智が2013年4月に制定した就業規則には契約上限の規定はなく、非常勤講師組合の質問にも「従前の更新手続きを変更するものではない」と答え、契約上限を定める場合には「個別に対応する」としていました。
 ところが、13年から上智短大(秦野キャンパス)で教える組合員は、学科長から「13年4月以降に雇用された非常勤講師には、一律5年上限が課されている。法人の決定であり、学科ではいかんともしようがない」と言われ、3回の団体交渉でも雇い止めが撤回されていません。
 組合の入手した英文資料には「13年の労働法制定に対応して、上智大学では非常勤講師に対し、5年の更新上限を定めることを〝公式に″決定した」と記載。労働基準法89条では、退職に関する事項は就業規則に書き入れなければならない「絶対的必要記載事項」とされています。
 組合は上智大が無期転換逃れのために一律に5年で雇い止めする制度をひそかに制定しており、就業規則の適正な制定にも反すると批判。組合員は、神奈川労働局平塚総合労働相談コーナーに対しても、「助言指導」を求めています。
 この問題で本紙問い合わせに対して上智大は「交渉中のため回答は差し控えたい」としています。

 
 なお、本件の事案については、東洋経済にも掲載されていますのでこちらもご参照下さい。
 40歳非常勤講師、「夫婦とも雇い止め」の深刻~学校側の行為は「無期転換逃れ」の疑いがある

 
 首都圏大学非常勤講師組合は、日本大学の雇止め問題について大きく取り組んでいます。
 上智大学の雇止め問題も日本全体の非常勤講師に関わる問題として取り組んでいますので、皆様からのご支援をお願いします(弁護団は、今泉義竜弁護士、川口智也弁護士と私)。