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【2018年7月版】世界史関連の新刊20冊まとめ

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5〜7月度発売の世界史の情報まとめ 

2018年も半分終わりましたが、みなさん本読んでますか?

本を読むこと自体が目的になってはいけませんが、定期的なインプットは忘れないようにしたいところです。

あまり本を読む時間がないという方は、夏休みにまとまった時間が作ってガッツリ読んで見てはどうでしょうか。

今月は5月中旬〜7月中旬発売の世界史関連本をピックアップしてみます。気になる一冊を見つけてください。

1.歴史は実験できるのか ――自然実験が解き明かす人類史

慶應義塾大学出版会 ジャレド・ダイアモンド 編著, ジェイムズ・A・ロビンソン 編著 (6/15発売)

 自然科学の実験室の実験(ラボ実験)のように、歴史学や経済学は実験を行うことができない。様々な要因が存在してそれをコントロールすることが不可能であるからだ。しかし、近年、計量・統計分析が洗練され、ラボ実験やフィールド実験が盛んに行われるようになってきた。さらにまったくコントロールされない現実の対象を分析するための自然実験も行われるようになってきた。  本書は、歴史学、考古学、経済学、経済史、地理学、政治学など幅広い専門家たちが、それぞれのテーマでの比較史、自然実験で分析した論文を集めたものである。比較も2つの対象から81の島々の対象や233の地域を対象にしたものまで、地域は太平洋の島々からアメリカ、中米、ヨーロッパ、インドまで、また時代は過去から現在まで幅広く扱っている。

 「銃・病原菌・鉄」の著者ジャレド・ダイアモンドの新作です。人間の営みにまつわる様々な因果関係を把握・分析するという試みです。かなり野心的な試みですが、まだ課題は大きいでしょうね。きになる。

目次はこちらからご覧ください。

 

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2. 主権の二千年史 (講談社選書メチエ)

講談社 正村俊之著 (6/1発売)

今日、民主主義の危機が叫ばれることが多い。日本でも投票率は1980年代をピークに下降の一途をたどり、民主的な選挙で選ばれたはずの政治家に反対するデモが行われることもめずらしくなくなった。
振り返れば、民主主義が正当な統治形態とみなされるようになったのは20世紀に入ってからのことにすぎない。そして、早くも20世紀後半には民主主義の限界や欠陥が指摘されるようになった。本書は、今や危機に瀕している近代的な民主主義が成立する過程を、古代ギリシア以来の二千年以上に及ぶ歴史の中で描き出す壮大な試みである。
だが、本書の目的は単に歴史学的なものではない。歴史的な経緯を追うことによってのみ判明する民主主義の根本的な問題を剔出することが主眼である。危機をもたらした問題を明確に認識しないかぎり、その解決策を導き出すことは決してできないだろう。
この試みの導きの糸となる概念が、本書のタイトルにある「主権」にほかならない。民主主義をもたらしたメカニズムは「貨幣」と「権力」を軸にしている。だが、この両者は決して別々のものではなく、複合的に働いている。その働きを可能にしたのが「主権」という概念である。だからこそ、経済(学)と政治(学)を区別し、貨幣と権力をそれぞれ独立した媒体と考える従来の理解では、民主主義の危機を真に理解することはできない。
本書は、経済学者にも政治学者にもなしえなかった比類なき達成であり、第一級の社会学者として知られる著者による提言の書である。

現代危機に陥りつつある民主主義の政治システムが、どのようなプロセスを経て出来上がっていき、危機を招いた構造的な問題がどのように生まれたのかを明らかにする、という本書。電子版、試し読みありです。試し読みはこちらから。

 

3. 興亡の世界史 人類文明の黎明と暮れ方

講談社 青柳正規(6/11発売)

著者の青柳正規氏は、この40年あまり、おもにイタリアの遺跡の発掘に携わり、文明を「手触り」で理解してきた。本書では、メソポタミアの最初の都市文明・シュメールや、従来の文明観に大きな変更を迫っている「古代アンデス文明」、著者自身が近年手掛けているローマ帝国の遺跡・ソンマ=ヴェスヴィアーナの最新成果など、文明・文化の「多様性」に着目し、人類の歴史の大部分を占める「古代」を通観する。 約600万年前、直立二足歩行へと移行した人類には、多くのリスクが待ち構えていた。ホモ・エレクトゥスとホモ・サピエンスによる2度の「アウト・オブ・アフリカ」、現生人類に近い思考能力を持ちながら絶滅したネアンデルタール。我々は、いくつもの危機を乗り越え、環境に適応し、地球上のあらゆる陸地に拡散し、農耕というイノベーションを経て、文明を築くようになったのである。 では、「文明の進歩」を測る物差しは何か。現代人はなぜ、過去への時間認識が縮小し、「歴史」への感覚が鈍ってしまったのか――。廃墟と化した遺跡には、私たちの現在を知り、未来を考えるヒントが隠されている。

 決して明るいとは言えない未来の社会のイメージを掴むために、過去数千年の古代の世界を読み解いていこうという試みとのこと。かなり興味深いです。電子版、試し読みありです。試し読みはこちらから。

 

4. ラーメンの歴史学――ホットな国民食からクールな世界食へ

明石書店 バラク・クシュナー著,幾島幸子翻(6/7発売)

中国から日本に伝わり、1000年近い歳月を経て世界的な人気料理となったラーメンの歴史を英国のアジア研究者が紐解き、明治維新以降の近代化と食、戦後の対米関係やポップカルチャーとの関連も含め縦横無尽に論ずる、新たなラーメン学の誕生。

ラーメンの歴史というのは読んだことはあるんですが、水戸光圀公から始まり、戦後の屋台、そして地方での発展、みたいな日本の中での発展史が中心でした。

本誌は日本に止まらず、現在進行形で進化するラーメンの歴史と文化を交えた本だそうで、しかもアメリカ人が著者だそうで視点もまた違ったものになってそうです。すごく面白そう!

 

5. 超ワイド&精密図解 世界の軍用銃図鑑 (Gakken Mook)

  学研 歴史群像編集部 (4/25発売)

『超ワイド&精密図解 日本海軍艦艇図鑑』『超ワイド&パノラマ 鳥瞰イラストでよみがえる歴史の舞台』に続く、 学研・歴史群像編集部編のワイド折込みムック第3弾!
・歴史群像編集部が刊行してきた多数の銃関連書から記事を厳選、再構成した軍用銃ガイドの決定版!
・主要な軍用銃を迫力の特大写真と各部アップ写真、図面などとともに徹底詳解するワイド折込全44面を掲載!
・折込だけでなく、解説・考察記事も充実!

★掲載銃の例
Walther P38/Luger P08/九二式重機関銃/M1928A1/L85A1/FA MAS/AK-74/Kar98k/三八式小銃/九九式小銃/SVD/PSG-1/MP43/44/AK-47/M16A1/M4A1/Colt M1917/S&W M1917/BAR/九六式軽機関銃/九九式軽機関銃/十一年式軽機関銃 ほか多数

 すいません、4月発売の本なんですが掲載し忘れていたので今回掲載します。こういうムック本って、トイレの中とか一人で酒飲んでいる時とかに読んだら最高に楽しいんですよね。完全に男の子の世界です。

 

6. 航空戦全史: 第一次・第二次世界大戦からテロ制圧の現代戦まで―――

河出書房新社 青山智樹 (6/19発売)

軍用機はどのように登場・発達し、どう使われたのか。水上機、戦略爆撃機、垂直離着陸機、無人機など、航空戦略の変化とともに解説。
序章 ニュースではわからない現代航空戦の実態
1章 第一次世界大戦と航空機の登場
2章 大戦の狭間20年間の熾烈な開発競争
3章 第二次世界大戦を決した爆撃機と防空戦
4章 朝鮮戦争からベトナム戦争までの航空兵器と戦略
5章 冷戦終結と湾岸戦争で様変わりした航空戦
6章 最新の航空兵器とその未来

 こういう本は手元に1冊は持っておきたいですよね。これもウイスキーとか飲みながら深夜に読みたいです。

 

7. 日本植民地研究の論点

岩波書店 日本植民地研究会編(7/11発売)

研究の緻密化と並行して細分化が進むなか、「帝国」の構造や植民地支配のあり方を総体として把握・理解する必要性がますます高まっている。そのために必要な論点を、政治・経済の制度と文化的側面の双方に目を配りつつテーマ別に整理し、第一線の研究者36人がわかりやすく解説する。研究の到達点と今後の展望を提示する画期的入門書の誕生。

 岩波書店の歴史研究書にはいつもお世話になっているのですが、これは320ページもあるかなりガチめの論文書で、しかも日本植民地の研究のみというストイックさです。図書館で見つけたら絶対借りよう。

 

8. 10代に語る平成史 (岩波ジュニア新書)

岩波書店 後藤謙次 (7/20発売)

消費税の導入、冷戦構造の崩壊、バブル経済の終焉、テロとの戦い、自然災害…、政治ジャーナリストとして歴史的な場面を数多く取材してきた著者が、波乱に満ちた平成の歴史をわかりやすく解説します。果たして、平成の30年はどのような時代だったのでしょうか? 新し時代を生きるために必読の現代史入門です。

 もうすぐ平成が終わろうとしていますが、改めて平成の時代というのを振り替えってみる必要のある時期にきていますね。これからテレビなどでもバンバン流れると思いますが。

 

9. 中世共同体論 ヨーロッパ社会の都市・共同体・ユダヤ人

柏書房 アルフレート ハーファーカンプ著 (5/23発売)

ユダヤ人共同体はヨーロッパ共同体文化の主要な構成要素だった――中世社会の本質に“宗教性"を見出す視座から、従来の中世ヨーロッパ史像に全面的転換を迫る、まったく新しい“共生の社会史"。長年にわたりドイツ中世史研究を牽引してきた著者の主要論文7本を厳選紹介。日本オリジナル編集版。

【目次】

序文(アルフレート・ハーファーカンプ)

第I部 中世都市論の展開
第1章 中世盛期・後期における「初期市民的」世界――地域史と都市社会の歴史
第2章 盛期中世の「聖なる都市」

第II部 共同体の諸形態と宗教性・公共性
第1章 共同体における生活――12世紀における新旧の諸形態
第2章 「大鐘を鳴らして知らしめる」――中世の公共性について
第3章 12、13世紀における兄弟会とゲマインデ

第III部 キリスト教社会とユダヤ人共同体
第1章 中世アシュケナジウム空間におけるキリスト教徒とユダヤ人の「共同市民制」
第2章 1090年までのオットー=ザーリアー朝における司教とユダヤ人の諸関係

ユダヤ人が中世ヨーロッパの都市の発展に欠かせない存在だったことは有名な話ですが、宗教的観点からそのあり方を見直すというのは新しい視点です。おもしろそう。

 

10. 八九六四 「天安門事件」は再び起きるか

KADOKAWA 安田峰俊著(5/18発売)

「“その事件”を、口にしてはいけない」
1989年6月4日、中国の“姿”は決められた。中国、香港、台湾、そして日本。60名以上を取材し、世界史に刻まれた事件を抉る大型ルポ!!この取材は、今後もう出来ない――。
一九八九年六月四日。変革の夢は戦車の前に砕け散った。台湾の民主化、東西ドイツの統一、ソ連崩壊の一つの要因ともされた天安門事件。毎年、六月四日前後の中国では治安警備が従来以上に強化される。スマホ決済の送金ですら「六四」「八九六四」元の金額指定が不可能になるほどだ。 あの時、中国全土で数百万人の若者が民主化の声をあげていた。世界史に刻まれた運動に携わっていた者、傍観していた者、そして生まれてもいなかった現代の若者は、いま「八九六四」をどう見るのか?各国を巡り、地べたの労働者に社会の成功者、民主化運動の亡命者に当時のリーダーなど、60人以上を取材した大型ルポ
語り継ぐことを許されない歴史は忘れさられる。これは、天安門の最後の記録といえるだろう。
●“現代中国”で民主化に目覚めた者たち
●タイに亡命し、逼塞する民主化活動家
●香港の本土(独立)派、民主派、親中派リーダー
●未だ諦めぬ、当時の有名リーダー
●社会の成功者として“現実”を選んだ者、未だ地べたから“希望”を描く者 etc.
語ってはならない事件を、彼らは語った!!

前から読もう読もうと思ってまだ読めていません。楊逸さんの「時が滲む朝」は読みましたが、これに描かれたような人物以外にも数多くインタビューをされており、様々な視点からあの事件がどういったものだったのか、考える機会になりそうです。

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11. コメニウスの旅<生ける印刷術>の四世紀

九州大学出版会 相馬伸一著 (2018/8/10 発売)

世界初の絵入り教科書『世界図絵』を著した17世紀チェコの思想家コメニウスは、「近代教育学の祖」と見なされている。しかし、彼には宗教者・哲学者・言語学者・民族主義者・政治行動者といった多様な側面がある。彼の限定されたイメージは、とくに啓蒙主義と民族主義が興隆した19世紀における言説によるところが大きい。
コメニウスは、人間がテクストの世界に生き、ある刻印をされると同時にその印象を表現する存在であり、刻印と表現が無限に続くプロセスを<生ける印刷術>と呼んだ。本書では、この歴史的な洞察を彼自身にあてはめて、四世紀にわたるコメニウスをめぐる言説の歴史を描こうとするメタヒストリーの試みである。日本、チェコ地域、ドイツの史料を駆使して彼のイメージを見直すことで、四世紀の時代相を照らし出す。
巻末には、コメニウス研究に役立つ情報も整理して掲載。日本では初収録のものを含む約130点の図版は、コメニウスのイメージの広がりを直観させてくれるだろう。

 コメニウスは名前は知ってたんですけど、そんなに多様な側面を持つ知識人だとは知りませんでした。彼が残した図版から思想の広がりを見ていくというのは面白そう。読んでみたいです。

 

12. 海賊の日本史

講談社 山内譲(6/21発売)

海に囲まれた日本には、古来「海賊」と呼ばれる存在がありました。海を縄張りとし、その海域を通過する船から「みかじめ料」を徴収するのがその基本的な在り方でした。古代の海賊で有名なのは平将門と共に古代国家を震撼させた藤原純友です。しかし最近の研究では、じつは純友は当初、瀬戸内の海賊を追討する立場にあったことが明らかになりました。それが複雑な権力闘争の結果として、自からが海賊となったのです。(略)それでも、海に囲まれた列島で、海賊が残した遺伝子は決して消えることはありませんでした。捕鯨や、遠洋漁業を始めとする漁業は言うまでもなく、造船業、回船業といった近代日本を支えた産業の中にも海賊の後裔たちの貢献の姿を見ることができます。海賊という日本史上のユニークな存在を通して日本の歴史を通覧することによって、日本の意外な一面が明らかにされて行きます。

日本の海賊もずっと人気のあるテーマですよね。単に人物紹介に止まらずに、現代の海洋産業にまで至る長い歴史の中での海賊という描き方が面白いです。

 

13. 温泉の日本史 記紀の古湯、武将の隠し湯、温泉番付

中公新書 石川理夫著 (6/21発売)

日本人と温泉の関わりは古く、三古湯と称される道後・有馬・白浜温泉は『日本書紀』にも出てくる。中世には箱根・熱海・草津・別府などの名湯が歴史の表舞台に現れた。武田信玄ら戦国大名が直轄した領国内の温泉地は「隠し湯」として知られる。江戸時代に入ると大名や藩士、幕臣らはこぞって湯治旅を楽しむようになり、旅行案内書や温泉番付が登場。初の秘湯ブームも到来した――。多彩なエピソードでつづる通史。

 温泉をテーマに日本史の通史を描くって楽しいですね。ヨーロッパや中東でも古代ローマから続く温泉の文化がありますが、日本ほど文化や社会に深く根付いている国は珍しいと思います。温泉旅館で畳の上でごろ寝しながら読みたいですね。

 

14. 王たちの最期の日々 上

原書房 パトリス・ゲニフェイ編,神田順子翻,谷口きみ子翻訳(5/22発売)

カール大帝からナポレオン三世にいたるまで、フランスという国をつくったおもな君主たちは、どのように死を迎えたのだろうか?  現代屈指の歴史研究者を執筆者に迎え、学術的な正確さと読みものとしての面白さを追求し、この疑問にはじめて答える。

王たちの最期の日々 上◆目次

まえがき
死の床の儀式
1.一人の皇帝の死、そして伝説のはじまり…カール大帝(シャルルマーニュ)――アーヘン、814年
2.非力な王のまことに目立たぬ死…ユーグ・カペー ――996年
3.きわめて政治的な死…フィリップ2世――1223年7月14日
4.「われわれはエルサレムに向かう!」…チュニスで死の床にあった聖王ルイ9世の言葉――1270年
5.最期まで王…シャルル5世の死――1380年9月16日
6.不人気だった国王のひかえめな死…ルイ11世――1483年8月30日
7.フランソワ1世の模範的な死…1547年3月31日
8.アンリ2世の最期…1559年7月10日
9.アンリ3世暗殺…1589年8月1日
10.アンリ4世の最期の日々…1610年

 上下巻あります。フランスの歴代の王たちの死のその瞬間をテーマにして、彼らの生き様を見ていこうという作品です。臨終を通してみるフランスの通史って感じでしょうか。興味深いです。

 

15. 378年 失われた古代帝国の秩序

山川出版社 南川高志編 (6/30発売)

ローマがゴート人に敗北したアドリアノープルの戦いや、中国の南北分立の端緒となる淝水の戦いなどをとりあげ、東西の帝国がいかにして統治能力を失っていったか、その後の世界はどのように変容したかを検証する。
総論 失われた古代帝国の秩序
1章 ローマ的世界秩序の崩壊(ローマ的世界秩序 三七八年の激震 ほか)
2章 西ヨーロッパ世界の再編(「王国」の形成 家族と社会 ほか)
3章 ビザンツ的世界秩序の形成(ローマ的世界秩序からビザンツ的世界秩序への構造転換 ビザンツ的世界秩序成立の背景 ほか)
4章 漢帝国以後の多元的世界(苻堅の栄光と挫折―前秦帝国の興亡 漢帝国の平和―〓水以前 ほか)
5章 江南開発と南朝中心の世界秩序の構築(中華の辺境から王都の都へ 割れる中華、歪む中華 ほか)

そういえば、ローマ帝国の東西分割と漢帝国の崩壊って、奇妙なほど同じ時期なんですよね。そこに何か必然性があるかはわかりませんが、アジアとヨーロッパの古代帝国の終焉と新しい帝国への模索を同じベクトルで見ていく試みは面白そうです。

 

16. はじめての経済思想史 アダム・スミスから現代まで

講談社 中村隆之著(6/21発売)

よいお金儲けを促進し、悪いお金儲けを抑制する、それが経済学の本質だ!
アダム・スミス以来の経済学の歴史は、さまざまな悪いお金儲けが力を持ってしまうたびに、それに対抗する手段を講じていくというかたちで展開されてきた。労働者階級が苦しんだ19世紀には、会社のお金儲けのあり方を問い直す経済学が生まれた。庶民が豊かになり、貯蓄をしたい人は多いが、自分で事業を展開する意欲を持っている人は少ないという状態になった20世紀には、貯蓄されたお金を運用する「金融」活動が、社会を豊かにするお金儲けになっているかを問い直すケインズの経済学が生まれた――。
アダム・スミス、ミル、マーシャル、マルクス、ケインズら経済思想家は、現実といかに格闘したのか?
現代における、富の所有者の「利益をあげるべし」という指令と、富の活用者=働く者たちの関係はどのように考えればよいのか?
富の所有者が経済の主役から降りていくという経済学の一筋のストーリーを、本流と傍流を対比させることで描き出す。一冊で経済思想の歴史がわかる決定版入門書、誕生!

高校の世界史の授業でもアダム・スミスとかマルクスとか経済思想については学びますけど、どのような背景によって生まれ、それがどのような影響を与えたかというところまで深掘って学びませんよね。1回はちゃんとこういう経済思想の本を読んでおきたいところです。

 

17. 知れば知るほど面白い 世界の聖典・経典

光文社 一条真也著,造事務所編 (6/12 発売)

ユダヤ教の『旧約聖書』、キリスト教の『新約聖書』、イスラム教の『コーラン』、仏教の『般若心経』、儒教の『論語』……。読み継がれる聖典・経典は、誰の手により、何が書かれているのか? 原文をわかりやすく訳してみると、義務やタブーばかりではない、意外で面白い事実が見えてくる。世界の宗教を知るための入門書。

 聖典の読み比べというのはおもしろそう。聖典に書かれている以外で面白い事実、って歴ログっぽいですねなんか。

 

18. 隊商都市

筑摩書房 ミカエル・ロストフツェフ著, 青柳正規翻 (7/9発売)

通商交易で繁栄した古代オリエント都市のペトラ、パルミュラなどの遺跡に立ち、往時に思いを馳せたロマン溢れる歴史紀行の古典的名著。

これは1978年初版の復刻版のようです。ペトラもパルミラもかつて訪れたことがあるので、個人的にはかなり気になる本です。パルミラはシリア内戦でかなり破壊されたようなので、このような本の記述が貴重な証言となってしまいました。

 

19. インドネシアのイスラーム改革主義運動 アラブ人コミュニティの教育活動と社会統合

慶應大学出版会 山口元樹著(5/30発売)

世界最大のムスリム人口を抱え、多民族国家でもあるインドネシアには、アラブ系のマイノリティが暮らしている。彼らは20世紀初めにムスリム社会の改革・近代化を目指す運動の中で活躍したが、国民国家が形成されはじめると帰属意識の選択を迫られることになる。アラブ人の教育活動の変遷から、近代インドネシアにおける社会統合とイスラーム運動との関係を、多彩な史料に基づいて明らかにしていく。

 近代インドネシアのイスラム運動と独立運動の関係というのは興味深いテーマなんですよね。ウラマーと独立運動家(のちのインドネシア政府)時には協力し時には造反するという愛憎関係にありましたが、特にアチェなど西部スマトラ島では時の為政者と激しく闘争した歴史があります。インドネシア現代史を詳しく知るには欠かせない視点と思います。

 

20. 恋恋紅塵 中国の都市、欲望と生活

東方書店 台湾学術文化研究叢書 上製 李孝悌 (7/1発売)

20世紀(民国期)の上海、17、18世紀(清代)の揚州、明末清初の南京など中国近世の都市で繰り広げられる社会生活のディティールを描き出す。近代上海の都市の読み物(『点石斎画報』『良友画報』)、18世紀の都市や農村で流行った情歌(『白雪遺音』『霓裳続譜』)、明清の士大夫の詩詞や戯曲、札記(『桃花扇』『燕子箋』『板橋雑記』『陶庵夢憶』「李姫伝」『池北偶談』『随園軼事』)などの細かい資料によって、本書が明示する、政治的伝統や礼教に隠れた士大夫の逸楽や宗教への信仰、庶民の情欲などの記述は、中国人の日常生活の中身を見直す際の参考となるであろう。

明末清初から20世紀までの中国の小説や詩詞、戯曲の読み解きから中国人の日常やマインドを読み解いていくという本。552ページと相当分厚いんですが、中国文学が好きな方はこれだけで当分楽しめそうですね。

 

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まとめ

世界史の本といいつつ、結構日本史関連の本が多くなってしまいましたね。

個人的には、「歴史は実験できるのか」「主権の二千年史」「ラーメンの歴史学」が気になるので買おうと思います。