ダフ屋は減れども、チケット闇取引は消えず

「チケットキャンプ」閉鎖の波紋

2018年7月12日(木)

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人気公演の最前列に目立つ空席。「ネットダフ屋」の買い占めでファンにチケットが渡らない。社会的批判が高まり、転売サイト最大手の「チケットキャンプ」は閉鎖に追い込まれた。さばく場がなくなったダフ屋は減ったとみられるが、音楽を気軽に楽しみたいファンには負担が生じている。

(日経ビジネス2018年5月7日号より転載)

(写真=Olaf Herschbach/EyeEm/Getty Images)

「定価で譲りますが条件があります。DM(ダイレクトメッセージ)をください」

 人気公演のチケットを購入できず、がっかりしていた鈴木祥子さん(仮名)がツイッターでこんな書き込みを見つけたのは、今年1月のこと。高額で転売されるチケットの購入には拒否感があった鈴木さんがすぐにDMを送ったところ、返ってきたのは「応募多数なので抽選にさせてもらうことにします」との回答。そして、奇妙な条件が付け加えられていた。

 「無料アプリをインストールしてください」。指定されたのは、チケットとは全く関係がない通販のアプリ。ダウンロードして指定の情報を登録すると、現金同様に使えるポイントがDMの送り主に付与される仕組みだった。さらに、そのDMには「メルカリ上で空出品する商品を300円で購入してくれれば、購入数に応じてさらに確率が上がります」とも記されていた。実際には商品の受け渡しはしないが、現金のみを入金しろというのだ。

取引の安全性に疑問も
●ツイッターを使った不可解なチケット転売のイメージ
  • 人気公演のチケットを定価で譲るとツイッターに書き込み
  • 詳しい取引条件は直接伝える」とDM(ダイレクトメッセージ)に誘導
  • 購入希望者多数なので抽選になることを伝える。招待コードや架空商品を購入してくれれば当選確率が上がるともちかける

 不安を感じた鈴木さんは、主催者から送られてきたであろう、チケット購入時のメールなどを見せてほしいと頼んだ。ところが、「特定されるとチケットが無効になる可能性があるので見せられない」と拒否されたという。

 結局、無料アプリだけをインストールしたと伝えて「抽選結果」を待ったが、連絡はこなかった。数日後、取引相手のツイッターアカウントは跡形もなく消えていた。チケットが鈴木さん以外の購入希望者の手に本当に渡ったのか、確かめるすべはない。

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「ダフ屋は減れども、チケット闇取引は消えず」の著者

広岡 延隆

広岡 延隆(ひろおか・のぶたか)

日経ビジネス記者

日経コンピュータ編集部、日本経済新聞産業部出向を経て2010年4月から日経ビジネス編集部。現在は自動車など製造業を担当している。これまでIT、電機、音楽・ゲーム、自動車、製薬産業などを取材してきた。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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