福島大会で女子記録員が、マウンドに上がる珍事が起きた。長沼が0-5と大沼・西会津・坂下・猪苗代・湖南の「会津西連合」に点差を広げられ、佐藤大樹投手(2年)が四球を出した直後。4回表、2死一、三塁で影山高見監督(48)が伝令を送った。白線をまたいで選手の輪に走って加わったのは、革靴にスカートの制服姿の女子だった。

 福島県高野連の担当者も「あれっ? いいの? って感じでまずいなと思った。本部に問い合わせようとしたら、終わってしまった」と困惑していた。本来は部員15人だが、都合によりベンチ入りは男子9人と女子記録員1人のみ。苦肉の策だった。高野連側は試合中に佐川英太部長(31)を通じ「次からは特例として捕手をベンチ前に呼んで伝えてください」と“注意”。5回裏は伝令を送ることなく、5点を追加されコールド負けした。

 普段は一緒に練習し、女子部員登録もされている。明るく優しい笑顔で声をかけた効果? か、伝令後は後続を断った。試合中でも、タイムがかかっている場面なら「危険防止のためグラウンドに立つのは男子のみ」の規則はクリアされるか。髪をなびかせながら女子記録員(3年)が軽快にベンチに戻ると、スタンドから長沼への拍手と激励の声が飛んだ。【鎌田直秀】

 ◆高校野球と女子マネジャー 96年に記録員として女子部員の参加が認められた。第1号は東筑(福岡)の林田(旧姓三井)由佳子さんだった。08年センバツの甲子園練習では、華陵(山口)の女子部員が初めてユニホーム姿でタイムキーパーで参加。16年夏は大分の女子マネジャーの練習参加が制止され、物議を醸したが、17年センバツからは規則変更され、安全面を確保する条件付きで参加が認められた。