オバロ瓦落多箱(旧オバロ時間制限60分1本勝負)   作:0kcal
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Gの心配はしなくていい感じです


ざ・ねすと3

「ふむ、確かにあのトロール、なかなかの手練れですな」

 

 事ここに及んでも、態度が変わらない蟲小人にリュラリースは本気で苛立ち始める。明らかに自分は判断を間違えた。たとえ睡眠を妨げた罰として、尻尾を持ってぶん回されることになろうとも、あの強大なるダークエルフの少女に助けを求めるべきだったのだ。こうなれば、アウラ様がいる滅びの建物まで逃げるしかない。

 

「恐怖公様!先程の通り、この戦力ではわしらが不利でございます!撤退いたしましょうぞ!」

 

「がははははは!逃がさぬと言ってるだろう!蛇!」

 

 頭上のトロールが笑い、樹上から決定的な台詞を放ってくる。

 

「お前らの後ろに兄者がいるのだ!逃げられぬわ!」

 

「な、なんじゃと?」

 

「そのトロール殿のおっしゃる通りですな、我輩たちの背後数十mにトロールの一団。あともう一団が北方より接近中ですぞ?」

 

 リュラリースは歯噛みする。先程もそうだが、このゴキブリはなぜそんな感知能力を持ちながら今の今まで自分たちにその情報を伝えないのか、なぜそんなに余裕なのか。見れば、蟲小人の言葉に部下たちも動揺し始めている。いかん、こうなればこのゴキブリも部下も置き去りにして自分だけでも不可視化で逃げるしか――と考えたところでリュラリースの脳裏にある考えが浮かび上がった。

 

 もしや、これはアインズ・ウール・ゴウン様のテストなのではないだろうか。この忌々しい蟲小人を送り込み、果たして自分がどう行動するかをどこかで見ているのではないか。

 

 リュラリースは自分の体温がざっと下がるような恐怖に襲われつつも、ありえる、と判断する。あの恐ろしい死の王はグ、をゾンビに変えた上、奴めの部下と自分の部下に人間の集落を襲わせた。だが、聞いたところによれば、それはプレアデスの御一人ルプスレギナ様へのテスト――試練だったという。あの戦いで自分の部下は半数に減ってしまったが、それでアウラ様の部下として生きながらえたのだから後悔はない。

 だが、つまりそれはアインズ・ウール・ゴウン様はたとえ被害を出してでも、そういう事をする御方だという事。それに、自分が試されているとすればこの蟲小人の先程からの態度にも合点がいく。どこかであの死の超越者が見ているとすれば、このゴキブリめの安全は保障されているのだろう。そういえば、先程言っていたではないか。ここに来たのは至高の御方の判断であると。

 

 そこまで考え、リュラリースは腹を括った。もしここで蟲小人――恐怖公様を置いて逃げ出せば、間違いなく不合格として自分は殺されるだろう。もしかすると死ぬだけでは済まないかもしれない。だが、このまま戦端を開くのは愚か者だ。そうしてる内に周囲から木々や草が薙ぎ払われ、踏みつぶされる音がして2体のトロールが姿を見せた。

 

「ぐわっはっは!久しぶりだな!蛇!」

 

「ふはははは!どうやら揃った様だな?」

 

「……久しぶりじゃな、ガ・ガラ、ゲ・グリよ」

 

 兜以外の全身鎧を身に着け大剣を背負ったトロールと、全身に様々な装飾品を付けたトロールを見てリュラリースは名を呼ぶ。長兄のガ・ガラ、4男のゲ・グリ、そして次男。

 

「お主の名も思い出したよ、ギ・ドン……それで?この儂”西の魔蛇”リュラリュース・スペニア・アイ・インダルンに何の用じゃ」

 

「がはははは!相変わらず情けない名だな、蛇!」

 

 リュラリースの問いかけに樹上よりギ・ドンが飛び降り、部下を包囲に残してガ・ガラ、ゲ・グリが動き3人で自分たちの正面に立つとガ・ガラが一歩前に出て話し始める。

 

「蛇よ!お前が小さな影とやらと手を組んでグ、を殺したという話は聞いている!」

 

「……つまり、お前さん方は敵討ちに来たというわけか」

 

「ぐわっはっはっは!違うな!グ、が死んだのは奴が弱かったからだ!弱い奴が死ぬ、これは当然のこと、だが!」

 

 ガ・ガラが笑い、大剣を抜き放つ。

 

「グ、はこの俺、ガ・ガラが倒し名を縮める筈だった!だがグ、はもういない!だからグ、を倒した貴様と小さな影を倒し名を縮める!そして南の大魔獣も倒し、俺が東と西、南と北を統べる王、ガ、となるのだ!」

 

 そこまできたら森の王でいいじゃねえか、とリュラリースは心の中だけで突っ込みつつ、このガ・ガラがグ、よりも頭が悪かったことを思い出す。チラと後ろの2人を見ると今の言葉に不快を憶えているようだ。こやつらは常に自分が一番強いと思っておった筈、ならばなんとか仲違いさせて―――

 

「失礼、よろしいかな?我輩は恐怖公と申します。御三方にお聞きしたいことがあるのですが」

 

「キョウフ・コウ!ぐわっはっはっは!マメチビの割には良い名だな!いいだろう!」

 

「先程から御三方はよく笑われてますが、あれですかな。ウォー・トロールというのは、喋るたびに笑わないと死んでしまったりするのですかな?」

 

「「「貴様ぁ!!!!」」」

 

 恐怖公の馬鹿にでもわかりそうな挑発に、リュラリースは頭を抱えた。

 




時間切れ。120分とかやってしまったせいでペースが狂った模様。

リュラリースには腕がありますよ……ありますね。修正いたしました。







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