オバロ瓦落多箱(旧オバロ時間制限60分1本勝負) 作:0kcal
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かつて、西の魔蛇と呼ばれたリュラリースは目の前の蟲人――蟲小人?――を見て正直落胆していた。
「リュラリース殿、お初にお目にかかります。我輩は黒棺領域守護者にしてアインズ様の忠実なるシモベの一人、恐怖公。これは我輩の乗騎の黒鎧号、以後お見知りおきを」
「……では、恐怖公様がわしがお願いした援軍という事でよろしいのでしょうか?」
「そういうことになりますかな?」
全長2mほどの巨大な蟲に乗った、30cmの王冠をかぶった蜚?小人が優雅に礼をしつつ、自信に満ちた声で問いに答える。リュラリースは自分の見立てが間違いであることを祈って、恐怖公に再び問いかけた。
「失礼ですが……恐怖公様は、その、わしの能力で見るに、わしや南の大魔獣”森の賢者”と同程度の強さかと思われるのですが……」
「ふむ、森の賢者という事はハムスケ殿の事ですな。確かに我輩、ハムスケ殿とは良い勝負ができると思っております。つまり貴公の見立ては間違っておりませぬぞ?」
「なんと……」
リュラリースは肩を落としつつ、訝し気な恐怖公に説明をする。
「恐怖公様、今この森にやって来たのはかつてわしや南の大魔獣と争った東の巨人、グの奴めの兄弟3人とその一団なのです。グの兄弟は強い。わしの見たところその強さはグと同等、つまりわしや南の大魔獣、恐怖公様と互角の強さを持っていると思われます。一団はわしの配下で、1人はわしが抑えるとしても、残りは2人。うち1人を恐怖公様が倒されたとしても、1人残ります。これでは負けてしまいます」
「ふむ、それは厄介ですな」
目の前の蟲小人が腕を組んで、考える姿勢をとる。見ていると実に奇妙な気分になる光景だが今はそんなことを気にしてる場合ではない。
「では……アウラ様に救援を求められては?いや、なぜ求められてないのですかな?」
それができれば苦労はしねえ、とリュラリースは心中で毒づきながらも領域守護者と名乗った自分よりも地位の高いゴキブリに説明する。
「アウラ様は今お休みの時間でしてな。この時間に訪問したところ以前手ひどく叱られまして……それでプレアデス様に救援の使いを送ったのでございます」
「なるほど、なるほど……いや我輩も言ってから気づいたのですがご心配はいりませぬよ、リュラリース殿」
「それは……なぜですかな?」
「我輩が志願したとは言え、この判断を下されたのが至高の御方であるからですぞ?それよりも……」
リュラリースが心配いらない、という言葉に僅かな希望を持った自分を呪ったその時、頭上より声が響いた。
「--見つけたぞ!蛇め!」
リュラリースは慌てて声をした頭上を見る。そこには3mのもの巨体を誇るトロールが信じがたいことに樹上にあった。
「馬鹿な!こんな近くまでわしが気付かぬとは……」
「がはははははは!もう逃げられぬぞ!蛇ども!」
トロールが口笛を吹く。その音は遠く夜の森の中に響いて行った。リュラリースは焦燥のなか、背後にいる恐怖公の声を聴き振り返る。
「……曲者が来ましたぞ?と言おうとしたのですが遅かったようですな」
恐怖公は器用にも肩をすくめて、やれやれ、とポーズをとっている。
「――そういうことは!気が付いたら!すぐにいってくだされ!」
リュラリースの悲痛な叫びも夜の森に響き渡った。
時間残して終了。こっちもなんだかんだで続きます。