オバロ瓦落多箱(旧オバロ時間制限60分1本勝負) 作:0kcal
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ざ・ねすと1
「……よかろう、許可しよう」
ナザリック地下大墳墓玉座の間。そこに支配者たるアインズ・ウール・ゴウンが座り、そして滅多に現れない領域守護者が訪れていた。
「アインズ様、御温情ありがとうございます。では早速出立いたします」
アインズの前で優雅に腰を曲げを礼を示しているのは。豪華な金縁の入った鮮やかな真紅のマントを羽織り、頭には黄金に輝く王冠をちょこんと乗せている約1尺ほどの蜚蠊である。片手には頭頂部に純白の宝石をはめ込んだ王杓を持ち、もう一方の手は左胸と思しき場所を抑えている。一番上部にある脚を手とするならばだが。
玉座の間より退出していく階層守護者達を見て、アインズはため息をつく。アルベドが扉を開けて硬直しつつ報告した内容と、恐怖公の望みが合致してしまったため、断る事ができなかったのだ。なおアルベドはそのまま逃げるように去ったというか逃げた。
彼の陳情の内容、それはー
「ふむ……これがナザリック大墳墓の外ですか、眷属を通して見ると自身の眼で見るとはまた違いますな」
ナザリック大墳墓近隣、夜の草原を恐怖公が自分よりはるかに大きいゴキブリに乗って移動していた。るし☆ふぁー様より授かりし騎乗用ゴーレム・シルバーには及ばないが、それ以前に騎乗用として召喚していたジャイアント・アーマードモール・コックローチ”黒鎧号”である。
その大きさ、実に2mにも迫ろうかという、彼の眷属でも最大級の巨体。大型眷属の標準が50~60㎝、かなり大型でも1mと聞けばいかに規格外であることかわかろうというものだろう。しかもその外皮は厚くそして固く、なまなかな金属鎧よりもはるかに強固である。当然ナザリック基準で。
「さて……我が眷属達が満足する獲物であればよいのですが」
かつて西の魔蛇と呼ばれたナーガ、今ではトブの大森林の管理を任されているリュラリースよりの報告が上がってきたのはつい先刻の事、恐怖公がアインズにある陳情に訪れた時の事だった。 かつての東の巨人、グの親族がトブの大森林に現れたという内容で、リュラリースとその部下では手に余るので助力嘆願とのことだったが。
「これは我輩にとって正に僥倖。るし☆ふぁー様のご加護でしょうか」
恐怖公の陳情内容は”外出許可”だった。聞けばナザリック大墳墓周辺にはトブの大森林なる豊かな森が広がっているという。よく誤解されるのだが、99%のゴキブリの住処は建造物内ではない、森なのだ。恐怖公は知能も高く、黒棺の領域守護者であるがやはりゴキブリ。森は故郷の様なもので、近くにあるのであればぜひ訪問したい。ゆえに恐怖公は陳情したのだ。しばし外に出て、森を闊歩したいと。
最初、至高の御方アインズ様はずいぶんと悩まれている御様子だった。なぜかは自分でもわかる。自分は第2階層黒棺領域守護者。第一階層の転移罠の存在と合わせれば、ナザリック大墳墓の防衛最前線を守る者である。それが守護領域を留守にするというのはいささか問題だと思われたのだろう。
だが、あの報告によって潮目が変わった。先だっての侵入者撃退の働きなどのねぎらいと言葉と共に許可を頂けたのは、やはりあの報告あっての事だと判断できた。
無論、ナザリック大墳墓にも森は存在する。第6階層、アウラ様とマーレ様の守護階層である。あそこの大穴には同胞である餓食狐蟲王もいるので許されるのであれば毎日でも訪問したいぐらいなのだが、自分は階層守護者様方より、至高の御方の命令無くしての各階層立ち入りは禁止されているのだ。ゆえに、この任務達成後に許可された大森林での自由時間は恐怖公にとって至福の時となることが約束されていた。
「さあ、では急ぎますよ!黒鎧号!」
「ギイィィィィ!」
恐怖公と黒鎧号が月明かりの下、草原を翔ける。
トブの大森林へと向かって
第2ナザリックを管理しているアウラは(寝ていて)まだこの事を知らない
時間切れ