オバロ瓦落多箱(旧オバロ時間制限60分1本勝負) 作:0kcal
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「私のせいとは心外だね、シャルティア。むしろ私は君に感謝してもらっていい立場だと思ってるんだがね?」
「何を、どこでどうしたら、今の話で感謝ができるんだよお!」
怒り狂うシャルティアの前に指をぴん、と1本立ててデミウルゴスが話し始める。
「いいかね?これは後で根拠を話すが、アルベドは君に謹慎30日以上の罰を与えるべきだ、と進言するつもりだったのは間違いない」
「なっ……」
謹慎30日とはなんと恐ろしい、あのBBAは血も涙もないのか。シャルティアは今までの怒りが霧散する程恐怖した。それを見てデミウルゴスが話し続ける。
「それを罰ゲームと銘打ってはいるが、君がナザリックのための職務を遂行できる形に落とし込んだのは私だ。理解したかい?」
「……わかったでありんす」
「それはよかった。では改めて罰ゲーム……サイコロの視察の説明をさせてもらっていいかね?」
「よくないけど、仕事という事なら仕方がないでありんすね」
では説明しよう、とデミウルゴスが再びどこからか板を取り出す。シャルティアはそれを覗き込んだ。
1、6つの選択肢が書かれたボードに現在地・現時点で乗車可能な、ナザリック公共交通機関優先で移動手段と視察先をリストアップ。
2、どこに行くのかは運命のサイコロを振って決定。
3、出た目に書かれた視察先が、たとえナザリックと逆方向であっても、そこに行かなければ次のサイコロは振れない。
4、つまり、ナザリックにゴールするまでは常に視察し続けるという超過酷な罰ゲームなのだ。
「……ナザリックに戻れない?」
「そうだね」
「この罰ゲームとやらが終わるまで、ずっと?」
「そういうことになるね」
「ルプスレギナァ!」
シャルティアが暇なのか、何かむしゃむしゃ食べ始めていたルプスレギナを呼びつける。
「なんすか、ナイムネ様」
「貴女、この事を知っていたんでありんすよね!?なんでそんなに平然としてられたんでありんすか!」
「やー、そうはいってもアインズ様が許可されたことっすからね、しょうがないっす」
ぐぬぬ、とシャルティアは歯噛みするが、ナザリックに属する者にとってはぐうの音もでない正論だ。致し方なく怒りの矛先を変える。
「デミウルゴス!」
「なんだい?」
「まだ納得いかないことがあるから、質問したいんことがありんしが」
「ああ、シャルティア、すまない。もう時間だ」
時間?とシャルティアの頭の上に?マークが浮かぶ。
「もうすぐ深夜馬車”どなどな号”の発車時刻だ。質問は次の視察先でお願いするよ。もしくは道中ルプスレギナに聞いてくれたまえ」
”深夜馬車”
正式名称は魔導国立乗合馬車である。アンデッドの御者とソウル・イーターによって運行される乗合馬車で、その最大の特徴は馬車のメンテナンス以外常に運航している所にある。従来の乗合馬車は早朝出発し、街道を通って日が落ちる前に次の都市に到着する。当然夜間は運行していない。
なぜか。
それは単純に、夜間は街道であっても夜盗や魔物の襲撃等、大変な危険を伴うからである。その常識をあっさりと打ち破ったのが、魔導国立乗合馬車、通称”深夜馬車”なのだ。ソウル・イーターの引いている馬車を襲う頭のおかしい夜盗や、愚かな魔物がいるだろうか?正確には運行から1週間ほどはそんな馬鹿がいたが、1週間の間に全て駆逐された。これらの馬車の導入により、乗合馬車の料金は大きく値下がりし、魔導国内の移動が大変スムーズになった。これも魔導王陛下の御威光の賜物である。
時間切れ、ようやく旅の始まり