【読書感想】『14歳のバベル』鬱々とした前半を読み終えると後半急に面白くなるファンタジー

お元気ですか?りとです。

今日は、暖あやこさん著の『14歳のバベル』という小説を読み終えたので感想描きます。

14歳のバベル

14歳のバベル

 

 この物語は後半めっちゃ面白くなります。

その面白くなる導入部分までちょっと触れますので、ネタバレNGな方はお気をつけください!

前半はとにかく暗い展開なのですがとある「謎」が気になって読んじゃう

主人公「冬人」君は保健室登校のいじめられっ子です。

「ぼくにはなんの価値もない」って感じから、14歳ということも合間って碇シンジ君っぽいイメージを持ちました。クラスのリーダー的存在にいじめられて保健室登校となり、家にはそんな息子の状況に過剰に反応しすぎたためにヒステリックになったお母さんがいて、ヒステリックな妻とどんよりとした息子とうまく向き合えず仕事に逃げるお父さんとの3人家族です。

冬人君は、突然意識を失う発作を持っています。

下校途中に発作に見舞われ意識を失うのですが、そこで奇妙な夢を見ます。

現代ではないどこかで、不思議な衣装を身にまとった多くの人たちがせっせと何かを作っていて、そこで彼らが「王」と崇める自分と同い年の「シルト」という男の子と出会います。

冬人君は、担ぎ込まれた病院の、薬草の研究をしているという「亀井」という医者の部屋で目覚めます。亀井は、自分の薬草の効能が冬人に夢を見させ、深層心理の世界を見せてるのでは?と言います。

今まで様々な治療を試すも発作に対する効果がなかった冬人君でしたが、深層心理の夢には何か希望を見出し、亀井に「ぼくを実験台にしてください」と頼みます。

こうして、冬人君とシルトの夢の中での対話が始まります。

8年前の謎の事件

物語は、なかなか快方にに向かわない冬人くんの症状と保健室登校の日々、そしてギスギスした家族関係をずっと追っていくことになり、結構どんよりした展開が続きます。

それでもつい読み続けてしまうのが「8年前の事件」が気になるからなんです。

この物語の舞台は多分現代か数年先か、くらいのイメージです。

ですが、8年前の「ある出来事」をきっかけにして、日本人はスマホやパソコンといったデジタル機器も、インターネットもいっさい使うことをやめているのです。

また、冬人くんが発作を起こすようになった原因も「ある出来事」が原因だというのです。

この出来事は、100ページを超えたあたりでやっとどんな内容だったかちょっとわかるくらいもったいつけられます。わかってからも「なんでそんなことになったのか」がずっと語れられません。

これが気になって前半ついつい読んじゃうのです。

後半急に面白くなる

そんなこんなで読み進めていくうちに、物語が突然動き出し、冬人君が夢の世界でシルトと語り合うことが世界をひっくり返すような大きな事件に繋がります。

そして突然、物語は冬人君の成長と父親との絆を取り戻す壮大なファンタジー物語になるのです。

前半、ちょいちょい冬人君のお父さんである「吾郎」さんパートがあるのです。口をひらけば妻をイライラさせ、思春期の息子にどう接していいかもわからず、仕事に逃げ場を見出す企業戦士のお父さんのパートは「なんなんだろうな?」と思いながら読んでいたら、後半突然第2の主人公になるのです!

「ギクシャクした関係の家族が世界の危機に直面し、世界を救うついでに家族の絆も取り戻す」という、ハリウッド映画とかにありそうな展開が好きな人には堪らない物語だと思います!

かくいうぼくも結構好きでして、閉塞感満載の前半で貯めた鬱憤を一気に解消する疾走感のある後半でした。

ファンタジーが好きな方に是非オススメしたい感じです!!