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JASRAC新体制発足 楽器教室21事業者36施設との契約を報告

 日本音楽著作権協会(JASRAC)は7月10日、新役員就任に伴う新体制発足会見を開催した。3月の会長選挙で再選され、4月1日付で就任していたいではく会長と、6月27日に開催した定時社員総会ならびに理事会、監事会の決議により再任した浅石道夫理事長は、ともに2期目に入る。

 会見の冒頭であいさつに立ったいではく会長は、2年前に会長に就任した当初、全国の支部をまわり、JASRACの役所的という世間的な印象の払拭を職員に伝えてきたことを振り返りながら、「JASRACの仕事を世間的にわかりやすく伝えていきたい」とイメージアップを2期目の取り組みの1つとして掲げた。浅石理事長はJASRACの標語である“人に人権 音楽に著作権”の理念を説明し、「著作権は財産権ではなく人権。侵害を受けていれば保護が必要」と改めて強調。一方で、いではく会長とともに、徴収という一面ばかりが表に出ているイメージに対して、分配の透明性の高さを主張し、JASRACも適正な“普通の会社”とアピールした。

 この日の会見には、いではく会長と浅石理事長のほか、新役員体制となる常務理事3名(北田暢也氏、宮脇正弘氏、世古和博氏)、常任理事4名(齊藤眞美氏、伊澤一雅氏、中戸川直史氏、増田裕一氏)、常勤監事の宮内隆氏が出席。担当する業務のこれまでの進捗と現状を報告しながら、これからの方針を確認した。

 世古氏は、楽器教室の著作権管理に関して、これまでの経緯を改めて説明。JASRACは昨年6月、楽器教室を運営する事業者から、受講料収入2.5%を徴収する「使用料規定」を文化庁に届け出て、今年1月から徴収する方針を示したところ、これに反発する音楽教室を運営する事業者で作る「音楽教育を守る会」が昨年12月、JASRACの「使用料規定」を保留するよう、文化庁に裁定を申し立てた。これに対して、文化庁文化審議会著作権分科会が3月7日、「使用料規程の実施日として徴収を認める」とする答申を発表。これを受けてJASRACは、楽器メーカーや楽器店が運営する楽器教室など全国850事業者7300教室における演奏等の管理を4月1日より開始したが、文化庁からの答申では係争中の「音楽教育を守る会」会員団体249社については、司法判断確定まで利用許諾契約手続の督促等をしないように求めており、地裁の判決が出るまでは「音楽教育を守る会」の所属事業者など、徴収に応じない事業者には督促しない旨を表明。「音楽教育を守る会」以外の490事業者に対して手続きを行い、6月末で21事業者、36施設から契約申し込みが届いていることを報告した。

 現状の管理契約の申し込み数に関して、世古氏は「文化庁からの個別督促はしないようにとの求めのなかで、相当数の契約申し込みを得られたと判断している。今後は、司法判断が下されてから、大きな動きになるのではないでしょうか。そこが潮目になると思います」とコメントした。

 また、世古氏は、外国映画に使用される音楽の上映使用料の改定進捗についても報告。現状の1作品あたり一律18万円(※一部の映画除く)の定額制を、欧米諸国と同様の一定料率を乗じて算出する使用料契約への改定を求めている件に関して、全国興行生活衛生同業組合連合会が大枠で改定を認めていることから、今年3月末で満了となった契約を継続し、8月末までの円滑な契約締結に向けて協議を進めていることを説明した。

 そのほか、日本が世界への支払いに対して収入が低い、いわゆる著作権貿易赤字については、浅石理事長は「特にアジアの各地域の著作権管理の状況は、欧米に比べて30年という短い歴史。そのなかで、数億円から10億円まで上げてきています。まだ世界との差は大きい。いまは、日本のアーティストが海外へ出られるように(著作権料を回収できるように)時間をかけて基盤作りを行っている段階」と説明。いではく会長は「日本は確かに圧倒的な輸入超過ですが、アジアの作家が欧米の作家に負けているわけではない。システムがきちんと整っていないからです。音楽産業が世界で十分ビジネスになりえるとアジア各国が理解していけば、変わっていきます。JASRACがそれをサポートしていきたい」と力を込めて語った。



関連写真

  • JASRAC新体制発足会見に出席。ともに2期目となるいではく会長(左)と浅石道夫理事長
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提供元:CONFIDENCE

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