平成30(2018)年7月豪雨の降水量・被害・情報面の特徴(7月9日14時所感)
今回の豪雨は,「広い範囲に大量の雨が長時間にわたり降り続けた」事が大きな特徴と言える.たとえば2017年7月九州北部豪雨では,1時間降水量など短時間の降水量が非常に大きかったが,強い雨が継続したのは10時間前後で,今回とは様相が異なる.今回は,72時間降水量など,長時間の降水量が大きかったところが多く,気象庁AMeDAS観測所(統計期間10年以上)のうち7月7日に最大値を更新した観測所は116箇所となった.
なお,72時間降水量も値自体が特別大きいわけではない.最大は高知県魚梁瀬で,まだ欠測の関係で値が不詳だが1400mm程度と思われ,これは全AMeDASの上位3位に相当する可能性.しかし他の観測所はいずれも1000mm以下で,全AMeDASの上位10位よりはかなり小さい.
また,絶対値としての降水量が大きかった地域で大きな被害が出ているわけではない.被害が集中した広島市付近,倉敷市付近の72時間降水量は,高知県魚梁瀬と比べれば1/3近い数字である.瀬戸内地方はもともと降水量の少ない地域であり,その地域にとって大きな降水量が記録されたところで被害が出ているもので,これはごく一般的な傾向である.
人的被害の全体像はまだ明らかになっていないが,2004年台風23号(死者行方不明者98人)や2011年台風12号(同98人)を上回ることは確実で,昭和57年7月豪雨(同345人)以来の被害規模といっていい.理科年表によれば,死者行方不明者が100人を超える事例は,1951年以降35回発生しているが,昭和58年7月豪雨(同117人)を最後に発生しておらず,30数年ぶりの発生となりそうだ.過去に繰り返し発生している規模ではあるが,ハード,ソフト両面の対策が進んだ現代において発生したことは大変痛ましい.
個々の現場で発生していることは,現在の映像で見る限りでは,特に巨大な崩壊や,起こったこともないような広範囲の浸水が見られているわけではない.被害が大きくなったのは,ひろい範囲に激しい外力が作用してしまったことが,まず第一の要因,というか,ほぼそれに尽きると思われる.詳細はまだ分からないが,発生している場所についても,地形的に起こりうるところで起こりうることが起こった」という印象がもたれる.
今回の豪雨はいわゆる「不意打ち」タイプではない.7月5日に気象庁が異例の会見を行ったことは印象的で,予想は十分なされ,早期の警告も行われた.詳細は要検討だが,従来よりは避難勧告等も早期に出された可能性が高い.「予測精度の向上」「避難情報の整備」だけではダイレクトに被害軽減に繋がらない可能性があらためて示唆された印象もある.
被害が大きいので言いにくいことだが,今後調べが進むと,早期の情報により,被害軽減が図られたケースも出てくる可能性はあるのではないかとも考えている.
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