【大相撲】栃ノ心、千代の国吹っ飛ばす2018年7月10日 紙面から
◇名古屋場所<2日目>(9日・ドルフィンズ アリーナ=愛知県体育館) 上位陣に波乱はなかった。新大関の栃ノ心(30)=春日野=は、5年前の名古屋場所で同日に負傷した西前頭2枚目の千代の国を押し出し連勝。鶴竜(32)=井筒=と白鵬(33)=宮城野=の両横綱も危なげなく白星を並べた。かど番の大関豪栄道(32)=境川=は初白星を挙げた。 ◆「特別な相手」ひたすら前へ特別な相手だからこそ、栃ノ心は気合が入りまくっていた。2006年3月に、ともに初土俵を踏んだ千代の国との同期対決。相手得意の突き押し相撲に応じ、ひたすら前に出た。武器の左上手のまわしを取らず、上体ごとぶつかり最後は土俵下まで吹っ飛ばした。パワフルに、新大関2連勝を飾った。 突っ込みすぎて左脇がぽっかり空き、「あっ、やばい」と一瞬、慌てたのもご愛嬌(あいきょう)だ。取組後は「気合」と繰り返すこと3度。かつて関取の座を失い、どん底に落ちた似た者同士だからこそ、とにかく鼻息が荒かった。 ◆「同じ病院行ったんだよな」13年の名古屋場所5日目。栃ノ心が土俵上で右膝の靱帯(じんたい)を断裂する重傷を負った3番後、千代の国も取組で左太ももを痛めた。 「けがも同じ日だった。同じ病院に行ったんだよな。救急車で運ばれて、5分くらいで千代の国も着いた。先代の親方だった千代の富士さんが付き添ってきたかな。覚えてるよ」。2人とも白星を挙げながら、翌日から休場。不思議な縁があった。 その後、4場所連続休場で幕下まで陥落。土俵に上がれず苦しんだ経験を生かし、同期のピンチでは真っ先に動いた。千代の国が十両だった14年秋場所。両膝を痛めて途中休場し、幕下陥落が決定したタイミングで、同場所で十両優勝して幕内復帰を決めた栃ノ心が「頑張ろうな」と声をかけ、励ました。 ◆きょうも「同期」の松鳳山と「同期だからな」。新大関と上位総当たりと、互いに番付を上げての対決が誇らしい。「速かった、相手も結構」と振り返る顔も、どこかうれしそうだった。3日目も松鳳山との同期対決。勢いをさらに、加速させる一番が待ち遠しい。 (志村拓)
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