同窓会などで何十年ぶりに学生時代の知人・友人に会うと、その老け方の違いにびっくりすることがある。
充実して恵まれた生活を楽しんでいる人は至って若く見えるが、仕事や家庭に不満を抱き不遇な時代を過ごした人はすっかり老け込んでしまって痛々しくさえある。
多くの会社・団体勤めをしてきた人にとって、定年後の生活も人によって明暗を分ける。会社員であれば定年は避けて通れない。それは第二、第三の人生への関門であり、通過儀礼でもある。
オランダの保険大手のエイゴン(AEGN.AS)が2017年7月に発表した「定年退職に関する意識調査」(SuccessfulRetirement-HealthyAgingandFinancialSecurity)によると、定年退職準備指標が日本は15カ国中で4.7(世界平均5.92)と最下位となり、定年に向けた準備が最も整っていない国であることが分かった。
ちなみに、首位はインド、2位は米国、3位はブラジルだった。
日本は、老後の準備をする気持ちが他国よりも薄いということになる。これには、「嫌なことを先送りしたい」「お茶を濁したい」という気持ちが働いているのかもしれない。
定年後(約60歳)から75歳までは「黄金の15年」ともいわれる。こうした日々を豊かで有意義に過ごすか、それとも退屈で寂しく迎えるかは、定年を迎えるずっと前からの覚悟と準備が必要だということになる。
その明暗を分けるものは何か? 当然のことながら、在職中の仕事の仕方や人間関係の在り方が大きく作用する。何十年間の社会人として生きざまが反映することになる。
個人的な話で恐縮だが、私は海外の企業視察や国際見本市の調査を長年にわたって実施し、3000人を超すビジネスパーソンと1カ月のうち1週間から12日間ほど行動をともにしてきた。
その人とのつながりをもとに、ITやIoT、AI(人工知能)、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)/MR(複合現実)といった先端テクノロジー関係のセミナーを月例で約200回実施しており、すでに17年目になる。その中で、多くの企業人と付き合い、定年前後の人生もあまた見てきた。
内館牧子のベストセラー小説を映画化した『終わった人』が話題となったが、私が知り合った企業人でも、まさに茫然自失して「終わる人」もいるが、夢の実現に向けて新しい歩を進める「始める人」もいる。
定年を機に第二の職場で、心機一転“新しい自分”となり活躍を期する人も多い。過去の自分は、現在の自分からすればいわば"別人"のようでもある。
ただし、世間はそうは見てくれない。これまで関係を持った企業や人は、あなたがどんな人なのかを見定めてしまっていたりする。
全く新しい職に就くにしても、それまでの仕事に対する取り組み方や態度が出てしまう。いったんポストから離れたり、退職して裁量や人事権がなくなったりすると、手のひらを返すように態度を一変させる相手先は少なくなく愕然とすることがある。
具体的なケースを紹介しよう。