心の病に男性が女性教授ら提訴

北九州市の大学に通っていた大分県内の20代の男性が、女性教授から人格を否定するような発言を繰り返され、心の病になって通学できなくなったとして、教授と大学に損害賠償を求める訴えを大分地方裁判所に起こしていたことが分かりました。

訴えを起こしたのは、福岡県北九州市にある九州栄養福祉大学のリハビリテーション学部に通い、作業療法士を目指していた大分県内の20代の男性です。

訴状などによりますと、男性はおととし、必修科目の指導教官だった女性教授から大学の研究室で個別指導を受けていた際、「精神疾患があるんじゃないの。理解力が悪すぎる」とか、「精神年齢が年相応に発達していないよね」など、人格や能力を一方的に否定するような発言を2週間以上にわたって繰り返されたということです。

男性は精神的に大きなダメージを受け、憂うつさや不安感から通常の生活が送れなくなる「適応障害」になった結果、大学に通えなくなって除籍になったとして、女性教授と大学に対し、600万円余りの損害賠償を求める訴えを大分地方裁判所に起こしました。

大学によりますと、男性から相談を受けて調査した結果、女性教授の一連発言が学問の場でのいじめや嫌がらせ、いわゆるアカデミック・ハラスメントに当たると認定し、去年4月に学科長の職から解任したということです。
訴えについて、女性教授は、「裁判に影響を与える可能性があるので、コメントは差し控える」と話しています。

【アカハラとは】
大学の研究者らでつくるNPO法人「アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク」では、アカデミック・ハラスメントを、「研究教育に関わる優位な力関係のもとで行われる理不尽な行為」と定義しています。

具体的には、教員が学生に対し、暴力を振るったりしつこく中傷したりするほか、正当な理由なく、単位を与えないなど、進級や卒業を妨害するといった行為が該当するということです。

また、若手の研究者に対し、文献を使わせなかったり、必要な出張や学会への参加を認めなかったりして研究を妨害する行為もアカデミック・ハラスメントに当たるということです。

このNPOには、去年1年間にアカデミック・ハラスメントに関する相談が新たに少なくとも350件ほど寄せられているということです。特に、実習が必修科目となっている医療や福祉などの教育現場では、教授と学生の1対1での指導が一定期間続くため、問題が起こりやすく、実習中のハラスメントに関する相談は多いということです。

アカデミック・ハラスメントをなくすネットワークの御輿久美子代表理事は、「大学は教員に対し、どうしたらハラスメントを防げるのか、具体的な事例をもとに教員どうしで話し合って防止策を考えてもらうなど、より実践的な研修を行っていくべきだ」と話しています。

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