【サッカーW杯】 「ばか者ども」はイングランドにも 準決勝進出に水を差し

イングランドの勝利後、何人かのファンは救急車、タクシーや他の車の上に飛び乗った Image copyright Getty Images
Image caption イングランドの勝利後、ファンの一部が救急車、タクシーや他の車の上に飛び乗った

サッカーのイングランド代表は7日、ワールドカップ(W杯)ロシア大会準々決勝でスウェーデンに2-0で勝利し、28年ぶりとなるW杯準決勝進出を決めた。長年我慢を重ねてきたファンは当然のように感極まり、喜びを激しくあらわにした。

しかし、サマラでの勝利を受けて車や建物を傷つけた一部のサポーターは、「考えなしのばか者ども」と呼ばれることになった。

ロンドンでは救急車の上でサポーターが次々と踊りまくった。中部ノッティンガムではタクシーが同じような目にあった。警察によると、史上最高数の999番(日本の110番にあたる)通報を受理した。

スウェーデン発祥の家具量販店「イケア」の支店も標的となった。

同社はツイッターに「私たちの店舗の1つで、少人数のファンが試合結果を祝っているのを確認した」と投稿した。

「英国とスウェーデンの両方に縁のある私たちは、試合中はらはらし通しだった。『グラティス!(スウェーデン語で『おめでとうございます』の意)と言いたい』」

サッカー関連の写真や動画を集める「フットボール・スタンズ」のツイッターアカウントは、「スウェーデンの家具量販店イケアで勝利を祝うイングランド・ファンの様子」と書き、ベッドの上で飛び跳ねる人々や、それを見て絶句する店員を映した動画を投稿した。

引退した元警官で作家のジョン・サザーランドさんは、「物を壊したり、他人をひどく怖がらせたりしないと、あるいはひたすら間抜けみたいな真似をしないと、イングランドの勝利を祝えないなら、屋内でじっとしていてくれないか。そうしてくれると、我々としてはありがたい」とツイートした。

ロンドン救急課は、所有する救急車両の1台がバラ・ハイ・ストリートで勝利を祝うファンによって傷つけられ、修理が必要になったと発表した。

同地区に本拠を構えるサッカーチーム、ミルウォールのサポーターズクラブが立ち上げた、車両の修理代金を集めるクラウドファンディングのウェブページには、1000ポンド(約14万7000円)を超える金額が集まった。

ロンドン救急課はツイッターに、傷つけられた車の写真と共に、「試合の結果は最高に嬉しいが、勝利のお祝いに大きく水を差すできごとがあった。職員が近くで通報に対応している間、この車がバラ・ハイ・ストリートで試合後のお祝いに巻き込まれて傷つけられた。車はいま修理に回されて、救急対応に使えない」と投稿した。

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イングランド勝利後の街頭では、車のボンネットに上るファンの姿も

ケント州警察は、5歳の少女が所有するキックスターターが、フォークストンを走る車に「ぶつけられた」疑いがあるとして捜査している。

警察の報道官によると少女にけがはなかったが、事故の当時車を運転していたのは誰かを調べるため、警官が車の法的な所有者に接触したと述べた。

ロンドン・ブリッジ駅の近くでは男性が街灯をよじ登り、周りのファンにけしかけられていた。

街灯を上る男を、下にいた群衆は応援していた Image copyright AFP/Getty Images
Image caption 街灯を上る男を、下にいた群衆は応援していた

警察によると、このほかにも多数の事案が発生した。ランカシャー州警察やウェスト・ミッドランド州警察は、24時間あたりで史上最多の通報を受けたという。

デボン・コーンウォール警察のダン・ブレンチリー巡査部長は、「興味深い事実。今日受理した通報の数は、昨年の大晦日に受けた通報の倍だった」とツイートした。

ウェスト・ミッドランズ警察はツイッターに、「通報について。昨日の通報件数は当警察にとって史上最多だった。たった24時間で、警察の緊急出動を要請する通報が3276件。快晴とワールドカップと酒の組み合わせだろう。緊急でない場合は999番にはかけず、ウェスト・ミッドランズ警察のサイトを検索してほしい」と投稿した。

ランカシャー警察のテリー・ウッズ副本部長は、審判の笛の上に「お行儀よく」という言葉を描いた画像をツイート。「直近24時間で、我々は最多記録となる2200件の通報に対処した。大部分はイングランド戦終了後のもので、アルコールが火を注いだ暴力も含まれる。家庭内暴力や深刻な暴行も含まれる。我々はあらかじめ準備はしていたが、実際にこうなってしまいとても残念だ。ランカシャー警察のチーム、よくやってくれた」と書いた。

ドーセット州警察警察犬部隊のツイッターアカウントは、警察犬を乗せて通りで待機する車の画像と共に、「今晩、会うことができた素晴らしいサッカーファンの皆さん、どうもありがとう。お会いできて嬉しかったです。ただ酔っ払いたくて町に出て、警察犬がジャーマンだからって犬に怒鳴った???、あたりに物を投げていた全てのばか者ども、お日様とお祝いと酒のせいで、ダメダメになってしまうお前らが残念だよ!」と書いた。

パブに発煙弾が投げ込まれたり、大勢が道路や路面電車の線路をふさぎ交通を混乱させたりした騒ぎもあった。

クリス・バルマーさんは、店内で煙が上がる様子を映した動画とあわせて、「試合終了の笛とともに発炎筒に火が付けられた。勝ったのは嬉しいが、どこかのばかが全員の気分を台無しにした」とツイートした。

イブ・スモールマンさんは、通りをふさぐ群集の写真を投稿し、「ノッティンガムは機能停止状態 #故郷に戻ってくる」と書いた。

ノッティンガムで路面電車を運営するノッティンガム・エクスプレス・トランジットは、「遅延をお詫びします。オールド・マーケット広場に集まった大勢が路面電車の線路をふさいでいるのが原因で、路面電車自体はまだ走っています」とツイートした。

エマ・ルイーズ・ウィリアムズさんは、「#(W杯が)故郷に戻ってくる」というイングランド・ファンの期待を表すハッシュタグと共に、中部バーミンガムで人々がバスによじ登って騒ぐ動画をツイッターに投稿した。

ノッティンガム市議会とノッティンガムシャー州警察が共同で運営する、コミュニティ保護計画サポート部隊「OSUノッティンガム」はツイッターに、「美化部隊は今日、市内の道路で割れたガラス約6トンを収集した。職員は昨晩、割れたガラスが関係する、救急治療が必要な案件に何度も対処した。ノッティンガムの皆さん、ここはもっとまともな街のはず。もちろん勝利は祝いましょう。でも、お互いと自分たちの街を尊重しよう!」と投稿した。

車の上で飛び跳ねて勝利を祝うファンの写真は、ソーシャルメディアで大きな反響を呼んだ。騒いだ当事者たちの身元を特定すべきだという主張も相次いだ。

「Kaisar」さんは車の上で騒ぐ人々の動画を添えて「煽った連中にも全員、責任を取らせるべきだ」とツイートした。

「Bully」さんはツイッターに、警察やテレビ局などのアカウントにリプライ(通知が届く言及)する形で、半裸の男性が車の上で踊り、周囲の人がそれをはやし立てる動画を投稿した。

しかしノーフォーク州では、サッカーに関連する逮捕者は1人も出なかった。同州警察のデイブ・マーシャル警視正は、「混乱は最小限だった」とし、「最高の心意気」でいてくれたとファンに感謝した。

マーシャル警視正は「イングランド・ファンにとって、わくわくする状態が続いている」と述べた。

ノッティンガム市管理規制センターのリチャード・アントクリフ所長は「ノッティンガム市民の99.9%は、素晴らしい雰囲気のなかでワールドカップを楽しんだ。そのことは、大いに強調したい。考えなしに周りに損害を与えたごくわずかな連中は、ノッティンガム市議会やノッティンガムシャー州警察、そして裁判所がとことん厳しく対処する」とツイートした。

ロンドン警視庁フットボール課はツイッターに、「今日はロンドン各地で素晴らしい光景がみられたが、初期対応に向かう救急車両の上で飛び跳ねた分別のないファンのせいで台無しだった。フロントガラスやサイドミラーが壊され、車は使えなくなった。おいおい、イングランド・ファンのみんな。自分たちはもっとまともなはずだろう #故郷に戻ってくる」と投稿した。

多くのファンは喜んで、試合後の空気に酔いしれ、大勝利の喜びを満喫した。試合は約2000万人もの人が観戦した。

チャンネル4ニュースのチーフ・ビデオ・プロデューサー、キーロン・ブライアンさんはツイッターに、男性が興奮し「素晴らしい」を連呼する動画を、「今日の勝利に対する国民の声を最も良く表してくれた、このイングランド・ファンに拍手を」という書き込みとともに投稿した。

(英語記事 World Cup 2018: 'Idiots' put dampener on celebrations

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