GHで暮らす障害者の数が施設を逆転 精神科は微減 <2020年度見通し>

2018年0709 福祉新聞編集部

 2020年度にグループホーム(GH)で暮らす障害者が障害者支援施設に入所する人の数を上回ることが6月27日、厚生労働省の集計で分かった。施設からGHなどへの地域移行を進め、入所者数を減らす政策により逆転する。一方、精神科病院の長期在院者数は、厚労省の掲げた目標ほどは減らないことが判明。厚労省は退院した精神障害者を応援する地域住民を増やす方法を模索し、退院が進む環境づくりを進める考えだ。

 

 

 

 

 都道府県が策定した第5期障害福祉計画(18~20年度)の集計結果を、同日の社会保障審議会障害者部会(部会長=駒村康平・慶應義塾大教授)に報告した。計画には、厚労省が示した目標値を踏まえ、20年度までのサービス利用見込みが盛り込まれている。

 

 それによると、施設入所者は18年度の13万583人が20年度は3%減の12万7399人になる。GHは18年度の入居者数12万2114人が、20年度は11%増の13万6019人となり、1989年の制度化から初めて施設入所者を上回る。

 

 施設入所者の約8割、GHの約7割は知的障害者だ。入所施設やGHなどで構成する日本知的障害者福祉協会の井上博会長は本紙の取材に、「GHの利用者が施設利用者を上回るのは、選択肢が増えたという意味で良いことだ。GHでの生活が地域社会とつながるよう、さらなる工夫が必要だ」としている。

 

 

 一方、精神科病院の入院期間が1年以上の長期在院者数は、さほど減らない。厚労省は18万5000人(14年)を20年に15万7000人以下にする目標を掲げたが、集計結果では15万9000人。その半分が65歳以上の高齢者だ。

 

 厚労省は入院後3カ月、6カ月、1年時点で目標とする退院率(それぞれ69%以上、84%以上、90%以上)を示し、45都道府県がそれを上回る目標を設定した。しかし、実績が伴うかは不透明だ。

 

 退院率に関する厚労省の目標値より低く設定した山口県は、本紙の取材に「入院患者が高齢化し、なかなか退院が進んでいない。そうした現実に合わせて設定した」(障害者支援課)と話す。

 

 同日の障害者部会で委員からは、「退院率ありきではダメだ。地域移行にはとても手間がかかる。精神疾患を予防する観点が必要だ」(松田ひろし・日本精神科病院協会副会長)との声も上がった。

 

 厚労省は今後退院を促すには、受け皿となる地域に理解者を増やすことが必要と判断。その方策として「精神障害者地域生活サポーター(仮称)」の養成を検討する考えを明らかにした。

 

 既に先行している「認知症サポーター」(約1000万人)を参考に、「年齢や立場を問わず広く住民に精神障害について理解を深めてもらいたい」(精神・障害保健課)としている。

 

 

 このほか、18年度からの新サービスの利用者見込みも分かった。

 

「自立生活援助」(施設やGHから1人暮らしに移る人をサポート)は18年度で4550人、「就労定着支援」は1万3572人。いずれも20年度まで増える見込みだ。

 

 人口10万人当たりの施設入所者が全国で最も少ない神奈川県は、自立生活援助の利用者数を480人、就労定着支援の利用者数を1686人と見込んでいる。いずれも全国の利用者数の1割超を占め、「施設から地域での暮らしや一般就労への移行をさらに進める」(障害福祉課)としている。

 

 

 

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