市町村で実施される対策型がん検診は、集団全体の死亡率減少が目的です。このため、有効性が確立したがん検診を選択し、利益(死亡率の低下)は不利益(コスト)を上回ることが基本条件となります。しかし、現実には集団全体の死亡率減少に関して医学的根拠(エビデンス)があるのは大腸がん、子宮がん、乳がん検診のみで、胃がんや肺がんに対してバリウムや胸部レントゲンで検診する方法は死亡率減少に関するエビデンスはなく、早期発見の観点からは理論的にも有効性がありません。
これらのがん検診はコストと効果に基づいており、検査の侵襲性(侵襲性=身体への負担や影響の大きさ)が考慮されていない問題があります。特に子宮がんや乳がんの検査では受診者への身体的、心理的侵襲性が高く、このことが受診率の低下につながっています。また、がんは体幹部の様々な臓器に発生するため、現在の対策型がん検診で行われるような特定の臓器ごとの検診で重要ながんをカバーすることは不可能です。