こんにちは、ザリガニです。
2018年7月7日(土曜日)、東京・渋谷で行われた「インデックス投資ナイト2018」に参加してきました。
プログラムの詳細はこちら↓↓
各テーマの内容を簡単に書き起こしました。1万字を超える記事になってしまったので、時間があるときにお読みください。
それでは、どうぞ。
注意:私自身がとったメモをもとに書き起こしたものですので、一部誤記や聞き違いがある可能性があります。その旨ご了承ください。明らかな間違い、解釈違いなどがありましたら、参加者の方、ご指摘いただけますとありがたいです。一部私自身が理解できなかった、聞き落した点は一切記載しておりませんのでその点もご了承ください。
目次 [非表示]
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はじめに
「インデックス投資ナイト」とは、一般のインデックス投資家の有志の方々によって企画されたイベントです。当イベントは今回で11年目、12回目の開催だそうです。運営の方々は普段企業でお勤めされているなど本業の仕事を別にお持ちで、このイベントは完全に手弁当で運営しているそうです。今回の企画の打ち合わせはすべて遠隔で行っており、運営スタッフが直接顔を合わせたのはイベント当日が初めてと言っていました(!)
わたしは今回初めての参加でした。
会場である渋谷の東京カルチャーカルチャーは満席で、立ち見の方もいました。私の整理券番号が160番台だったので、少なくとも160人以上はいたのではないかと思います。運営の方が、年々参加年齢が若くなってきて、今回は特に女性も多くなったとおっしゃっていました。
プログラム
今回は三部構成で、次の3つの内容でした。
- 第一部 ブロガー対談 「米国株投資と国際分散投資、どっちがいいの?」
- 第二部 特別ゲスト登壇「金融庁になんでも聞いてみよう!」
- 第三部 有識者座談会「インデックス投資を継続するためのメンタリティ」
以下に各プログラムの書き起こしをレポします。
第一部 ブロガー対談 「米国株投資と国際分散投資、どっちがいいの?」
イーノ・ジュンイチさんの司会のもと、「米国株投資」代表として米国株投資ブロガーのたぱぞうさん、「国際分散投資」代表としてインデックス投資ブロガーの水瀬ケンイチ氏が登壇されました。米国株中心の投資と国際分散の投資についてお互い意見を述べ合う形で進行していきます。
さらに、日経新聞の編集委員兼紙面解説委員である田村正之さんが、時折ちゃちゃを入れる役割という形でディスカッションが進んでいきました。
ちなみに水瀬さんはサラリーマンの身バレ防止ということで、ニット帽にスノボゴーグル、そしてバンガード社のTシャツという出で立ちでご登壇でしたw
米国株・国際分散のそれぞれの良さについて
たぱぞうさん(米国株インデックス側):自分はVTIやVYMをメインに投資をしている。それとVTを少し。米国企業は株主を大事にする。きちんと決算時に数字を出してくるし、自社株買いなども積極的である。結果EPSも上がってくる。
水瀬さん(国際分散側):投資は日本~先進国~新興国と幅広くやっている。なるべくポートフォリオをいじらずほったらかししておきたい、分散しておきたいという意図がある。常に個別銘柄の株価や為替レートを見続けるのはしんどいから、今の国際分散のインデックス投資に落ち着いた。(実はVTも保有している。)
田村さん:SP(S&P500)とACWI(世界の株式を対象とした株価指数)を円建て・配当込みで比較した場合、1990年以降は常にSP>ACWIの状態だった。2000年だと両者の成績はほぼ同じ。2010年以降に絞ると、SPがぶっちぎりでACWIを上回る。米国では株が上がる仕組みが社会的に構築されている。ただし、SPの成績は一部「追い風参考」を考慮する必要がある。FANG株の台頭による影響や米ドルの実効為替レートの影響が含まれているからだ。
たぱぞうさんが米国株をはじめたきっかけ
たぱぞうさん:
米国株ブログを始めたのは2016年4月23日。2000年代は日本株投資をしていた。逆張り投資が好きで逆張りを良くしていた。MSCBによる株の希釈化を行うなど、日本企業の既存株主への姿勢に疑問をもつようになった。2010年に米国株の投資を始めたが、日本株と比較して投資の難易度が大きく違うと感じた。
米国株は株主還元の施策に積極的である。S&Pはどの時代で切り取ってみても安定して上がり続けている。米国の企業が全体として成長していくなら米国株インデックスでもいいのではないかと考えるようになった。時間もかからないし、財務分析をする必要もない。
ただ、最近の相場の状態や昨今の米国株ブームをみると大丈夫かな?と思うこともある。自分がブログを開始してからブログの数は現在5~6倍に増えている。自分にはあまのじゃくな面があって、みんながいい、いいと言っているとうがった見方をしてしまう。
企業の研究は少なくとも1企業当たり半日かけてやっていた。実際はもっとやっていて、実際のところは終わりのない趣味のようなものだった。
水瀬さんが国際分散投資をはじめたきっかけ
水瀬さん:(上記のたぱぞうさんの企業研究のコメントを受けて)銘柄研究を四半期ごとに、銘柄の数だけやるわけですよね。実際のところ、自分も過去には日本株の個別銘柄に投資していた。四半期の決算ごとに有価証券報告書をチェックしていると、それだけで週末が3週間分くらいつぶれていた。自分の生活・仕事が株に浸食されていったんですよね。だから、国際かつ分散投資できる方法を探していた。
イーノさん:米国株投資に気持ちがグラっと動かないの?
水瀬さん:たぱぞうさんのように、米国株を研究していて歴史も知っている人ならやっていいと思う。ただ、昨今の2017年の相場で見られるように、今はトレンドフォロワーが群がっているように見える。現在のようなトレンドが20年も30年も続いていくかどうかは分からない。このトレンドが、次はインド、中国、ドイツ、イギリスかもしれない。それがどこか分からないから、国際分散投資をしている。
田村さん:(酔っぱらっていて)今の水瀬さんの話を聞いていなかったんですけど(会場爆笑)、アメリカっていう国は、四半期ごとに数字をしっかり作る。本来は成長資金として設備投資などに使う資金を、自社株買いや経営陣の保身のために決算用の数字に反映させてしまい、水増しされた決算が出てくることもあるから、そこは注意する必要がある。
Q:米国と国際分散投資、どちらが成長が続いていくと考えますか?
たぱぞうさん:最近あまりにも米国株が成長し続けていくと言われていて、(逆張り投資家としては)気持ちがむずむずしている(会場笑)。新興国が成長しているのは事実。ただGDPの成長に対して、インデックスがついてきていない、うまくトラッキングできていない。新興国だと例えば汚職や粉飾決算などのリスクがある。それと比較すると、アメリカは誠実。
イーノさん:国際分散投資はしないの?
たぱぞうさん:実際僕はなびきやすいんですよね(笑)でも、アリババなどのように、新興国で生まれた企業もアメリカで上場してVTIなどのETFに組み込まれていく。投資はストーリーだと思うんですよね。どのストーリーを信じるか。アメリカか、国際か、新興国か。ストーリーの軸が定まっていれば、相場の多少の上下動はどうでもいい。心の中に投資の砦をいかに築くのか?だと思います。
田村さん:アメリカが今後数十年どうなっていくのかはわからない。たとえばアメリカは企業年金が必須ではない。年金をもっている人は半分くらい。その一方でイギリスは企業型DCは強制加入である。今後アメリカにおいて、株の保有に応じた格差が生じ消費が落ち込むのではないか、という不安もある。
イーノさん:水瀬さんは米国株ではなく国際分散投資なんですよね?
水瀬さん:成長の罠っていうのがあると思うんです。確かに米国は人口も増え続けているし、株主への配当も厚く、株主に優しい制度になっている。自分はベトナム株などを7~8年かけてみてきた。人口が増え続け、経済も20%/年で成長するような国。カンボジアもそうだったんだけど、バブル相場もあればバブルがはじけるようなこともあった。米国は確かに過去200年成長し続けてきた。だけど今後も続いていくかどうかは分からない。
たぱそうさん:世界経済にかけるロジックは否定しない。ただ、アメリカは今後も人口は増え続けると見込まれている。50~60年後には、ヒスパニック系がアメリカの人種の半数を超えると言われているんですね。アメリカは移民の国でもあって、世界中から人材が流入し続ける。イノベーションも生まれるし、チャレンジを促す文化もある。日本ではAirbnbやUberといったサービスは規制されてしまった。日本はこの10年起業の時価総額ランキングはほとんど変わっていないけど、アメリカではガラリと変わった。
水瀬さん:バンガード本社を訪問したときのこと。物価がとても高かった。ニューヨークのホテル代がとても高かったり(狭いホテルで25,000円くらい)、部屋の照明が暗かったり、ウォール街などを歩いていたらビル外壁がぼろくて外壁が落ちてきそうだった実態をみた。米国一国だけで大丈夫なのか不安だった。
田村さん:国際分散投資といっても、実際のところ50%前後はアメリカが占めるんですよね。FTSE global all capとMSCI ACWIについてですが、小型株式を含む含まないは指数に対してそんなに影響がない。結局時価総額の大きな銘柄の占有割合が大きく、これらの影響が大きいので、あえて無理にスイッチングする必要はないのではと思っています。
第一部まとめコメント
たぱぞうさん:VTIやVTに投資したいと思ったら、楽天の投資信託を買うのが一番簡単。正直なところ、自分は米国株と国際分散投資はどちらでも良いと思っている。ひとつやめてほしいのは、自分の主張をするために、自分の主張を補強するために、他人の批判をする必要はないってことです。多様性の時代、投資の方法にも多様性があるわけです。お互いに尊重しあって、このような形で情報交換することに最大の価値があると思うんです。
以上です。
たぱそうさんの締めの言葉が名言でした。拍手万雷の中で終えた第1部でした。
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第二部 特別ゲスト登壇「金融庁になんでも聞いてみよう!」
金融庁 金融税制調整官である今井利友さんとASKさんの対談でした。前半は資産運用に関する金融庁の考え・取り組みを紹介いただき、後半では参加者からのQ&Aを受け付ける形で進行していきました。
ASKさん:金融庁の仕事とは?
今井さん:金融行政をみるところ。役割は大きく分けて3つある。予算措置・規制(金融行政のコントロール)・税制。私が担当しているのは税制。株式投資を活況にすることをミッションにいろいろな企画を行っている。
ASKさん:つみたてNISAの取り組みについて教えてください。
今井さん:投資信託には手数料や信託報酬が高いものが多い。また毎月分配型のファンドは長期投資の目的にそぐわない。そのような状態をなんとかしたかった。私はアクティブ投資を否定しているわけではない。個人的にはTOPIXやVT、新興国などにも投資信託を通じて投資している。こういう場で話をするネタにもなる。
参加者Q:つみたてNISAの範囲の拡大は考えているか? たとえば米国株個別銘柄など。
今井さん:
いまはNISAで1千万口座くらいが開設されている。NISAあるいはつみたてNISAに一本化することは考えていない。NISAなら120万×5年で600万。つみたてNISAなら40万×20年で800万が非課税。人生のステージによって投資の時期・額は変わってくる。給料から定期的に積み立てていきたいときもあれば、退職金をもらってまとまった額を投資に回したいと考えるときもあるだろう。
NISAの非課税枠を青天井にするわけにはいかないので、限度を決める必要はある。ただ限度額の管理が難しい。これまでは中央管理という昔からのやり方で管理してきた。現在はNISA口座を1証券口座に限定することで、非課税枠をコントロール・管理するようにしているが、今後はブロックチェーンなどの技術を活用した分散管理のやり方ができてくるだろう。NISAはもっとフレキシブルになる。それを実現させるのはこれからの私たちの仕事だ。
参加者Q:恒久化した場合のつみたてNISAやジュニアNISAの位置づけ・将来は?
今井さん:それぞれ柔軟に運用してもらいたい。非課税限度額を管理することが肝になる。今はできていないが、総額を管理できればどのような仕組みでもよい。NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3つの制度を混ぜたようないい制度ができればいいと思っている。
参加者Q:NISAが普及すると、日本にとってどんないいことがあるか?日本にとってどんなストーリがあるのか?
今井さん:
たとえば最近車離れの話をよく耳にする。家計が低下して、消費が下がっている今日、豊かさを体感できない状況にある。しかも、資産のうち預金が半分以上を占めている。そんな状況だから、お金に働いてもらいたい。
家計が上がれば、それは給料が上がったことと同義であり、需要も高まるだろう。これは経済戦略の1つだ。政府としても給料を上げてくださいとお願いをしている状況だが、実際に反映されるのはなかなか難しい。であれば、今あるお金に働いてもらって需要の増加につなげようと。
(今井さんの締めの言葉として)私のいる間に、NISAの恒久化に取り組みたい。
という感じでした。「NISAの恒久化」という締めの言葉に、これまた会場が沸いて対談が終わりました。
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第三部の① 有識者座談会「インデックス投資を継続するためのメンタリティ」
テーマは、「インデックス投資を継続するためのメンタリティ」でした。どのようにインデックス投資への気持ちを保つのか? 投資の継続を強固にするためにはどうすればよいか? なにかコツ・仕組みはあるのか? などが議論されました。
前半の部の登壇者は、カン・チュンドさん(司会)、投資ブロガーのゆうきさん、個人凍死家のテリーさんでした。カン・チュンドさんの関西弁交じりのひょうひょうとした感じの進行が心地よかったです。
投資家のゆうきさんとテリーさんの投資略歴紹介
ゆうきさん:2000年代に個別銘柄の短期投資を行っていた。そのときITバブルが起きて、株価がどんどん下がっていってやばいとなって手を引いた。次に優待株で投資を行っていた。そしたら夕食が優待株ばかりになってきてしんどくなってきた(晩御飯が吉野家ばっかりとか)(会場笑)。その後インデックス投資とヘッジファンド投資を始めた。リーマンショック後には主にインデックス投資を行っている。
テリーさん:2000年代、25~26歳のころに投資を始めた。まさに世はITバブルのとき。儲けられるだろうと思って、鴨葱状態で当時のさくら銀行に行って、お勧めの投資信託を紹介してもらった。(行員のお姉さんが美人だった)。そこで投資信託を買ったら、5~10%くらい値上がりして、俺いけるかも、もっといけるかもと思ってN村証券にも口座を開いて「N村日本株○○ファンド」というものを買ってしまった。これを買ったとたんに値下がりしたんですね。当時が天井だった。しかも信託報酬が3%くらいあった。こりゃだめだ。個別株だと。それで個別株に移った。
ゆうきさん:インデックス投資をする際には「ウォール街のランダムウォーカー」を読んでいた。私はインデックス投資に独自のアレンジを加えて投資を行っている。それは現金比率を調整すること。株価が高くなったらキャッシュの割合を高める。株価が下がったらキャッシュの割合を下げる(リスク資産割合を増やす)。
テリーさん:自分は気分屋。安く買って高く売るが基本。自分の判断は気分次第。しかも仕手株に行ってしまった。何銘柄か持っていたんだけど、みんなやられてしまって半分以下になった。それで投資はマジメにやらなきゃいかんと思うようになった。王道でやらねばと。
カン・チュンドさん:個別株をやっていたときとインデックスをやっていたときの違いは?
テリーさん:情報に惑わされなくなった。個別株もやっているが、個別株をする心の余裕も生まれた。
カン・チュンドさん:奥さんや家族、友人に投資をすすめるなら何をすすめますか?
ゆうきさん:iDeCoとつみたてNISAかな。積み立てて長期で保有するように言います。
テリーさん:個別株で遊んでもいいんじゃないの?(会場笑)
カン・チュンドさん:マーケットは上昇相場と下降相場どっちが良い?
テリーさん:上昇相場ですね。
ゆうきさん:ぼくは下降相場です。下げ相場だと買い増すことができるので。細かく買っていきます。
テリーさん:ぼくはナンピン好きなんですよ。魅力的ですよね。だけどナンピンしたら、だいたいそれってクソナンピン(会場笑)。ナンピンしたらそこから更に2~3割落ちるんだよね。ナンピンするならメンタル的に強くないとダメだね。
ゆうきさん:なので、自分は資本主義を信じて上昇を待ちます。
テリーさん:iDeCoは安全資産、仕手株は仕手株、つみたてNISAはストレスをためないような場所、としてアセットのロケーションを決めると。
カン・チュンドさん:最後にみんなへのメッセージを。
テリーさん:人間弱いから、ルール通りにやりましょう。そして継続しましょう。かんたんなナンピンはしないこと(会場笑)。下手な欲はかいたらだめです。人間は儲けようと思って惑わされてしまうことがあって、弱い面があります。でも個別株など遊びの部分はあっても良いと思います。ナイストレードしちゃいなよ!
ゆうきさん:初心者の方に3つ。バイアンドホールド。経済の歴史と仕組みを知ること。そしてGPIFの運用を知ることだと思います。
以上でした。テリーさんの仕手株ネタやナンピンネタで会場が笑いに包まれる中、ゆうきさんが冷静にコメントされるという面白い雰囲気の対談でした。
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第三部の② 有識者座談会「インデックス投資を継続するためのメンタリティ」
ゆうきさんとテリーさんの対談終了後、後半では経済評論家の山崎元さん、ファイナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子さんが登場しました。カン・チュンドさんが引き続き司会をつとめました。
カン・チュンドさん:2017~18年に投資を始めた人は損を出している人もいるかと思います。そんな人たちを安心させられる言葉を山崎さん、竹川さんから頂きたいのですが?
山崎さん:安心してくださいというのが甘い。リスクがあるからこそリターンを得られるんだから。個人個人ではなく市場に等しく課せられているリスクだと考えてください。しょせんお金で解決できる問題なんだから良いでしょう(会場笑)。
竹川さん:人生長い。ちょっとくらい下がっても耐えられる(会場笑)。
カン・チュンドさん:2017年のような上昇パターンだと、みんなどのように動きがちなんでしょうか?利益確定しようと売買の回転があがる?
竹川さん:あのような相場だと、下がっても怖くなるし、上がっても怖くなるんですよね。
山崎さん:利益確定は投資家としては良くない。一般的には。複利の力を享受できない。市場に投資をしていないという空白期間を作ることにもなる。バフェットの例をとると、彼はブランドバリューのある銘柄を購入して、以後売らないスタイルをとっている。同様に一般の投資家も売らない方がいい。とはいえ、個別株で言うと、そうも言えない(売らざるを得ない)事情もあるだろう。だけど、インデックスなら持ち続けられる。
カン・チュンドさん:流れに乗って安易に株や株ファンドを購入して損が出たらどうしたらよいでしょう?リスクはどう考えますか?
竹川さん:リスク許容度って2種類あると思うんです。ひとつは心の許容度。心臓がどれだけバクバクするかの度合い。もう一つは経済的な許容度。個人でも年に1回収支決算するように私はすすめている。この決算を行うことで、お金がどれだけ下落しても大丈夫なのか検証できるようになるから。リスク許容度は定義があいまいだから、この2つの許容度の観点から考えてみてはどうでしょう。ロボアドバイザーは心の許容度だけしか聞いてくれない。
山崎さん:今生きていることは、リスクに耐えたということだよ(会場笑)そして未来のことを考えましょう。リスクの次はリクツ(理屈)。インデックス投資なら、1年間で損をしてもだいたい下落幅は最大30%。1000万なら300万。計算を簡単にするため1000万の資産のうち360万が減ったとしましょう。人間の寿命を95歳としたら、65歳で引退してから95歳までの30年間、つまり360ヶ月がある。この360ヶ月分の360万が減ったと考えてください。すなわち、1月あたり1万円の取り崩しが発生したということです。
山崎さん:リアリティを持たせた例を出しましょう。月10万円の老後資金として、(30年、360ヶ月分の)3600万円を用意した。それが10%損して360万円無くなった。1月あたり1万円の取り崩しだ。10万円の生活資金として用意していたものが9万円になったとき、それを受け入れられるかどうかということ。リスク許容度は自分にしか分からないから自分で考えてください。老後資金の試算をすることで具体的にリスクの許容度が分かってくることも多いんです。
カン・チュンドさん:収支と資産を考えればリスクの許容度が分かると?
竹川さん:1回投資に入ったら俯瞰すること。引いてみること。株を始めると、どの銘柄がいいかとかいつ買うかとかの話に入り込んでしまう。そうでなくて、何のために投資をするのか1回俯瞰して考えてみてください。
山崎さん:金融資産だけでなく、就職や転職もリスクのひとつ。転職や結婚だって3回に1回は失敗するんだから(会場笑)。金融資産や転職などを総合的に見て、有利なところへ転がっていければよい。
カン・チュンドさん:安く買って高く売るという誘惑に負けないためには?
山崎さん:そもそも、前の時点と今の時点で株価の動きに相関があるという根拠がない。過去が上昇していたから将来も上昇する、過去が下落していたから将来も下落するという明確な傾向はない。
竹川さん:そもそも安く買って高く売ることがムリ。株価が上がればみんな買うし、下がったらみんな売り払うんですよね。男性と女性の投資売買を比較すると、女性の方が成績いいんです。なんでかっていうと、株価の上下にうろたえずじっとしているから。男性は売買しがちで手数料を損してしまうんです。
山崎さん:男性が愚かなのは実感している(会場笑)。男性は自分のすることにプラスの結果が起こるのではないかと期待しているんです。over-confidenceといいます。ナマケモノのように、銀行や証券会社にみつからないようにじっとしていればいい。人生にはお金よりも大切なものがいっぱいあるので、たんたんと買い続けていければそれでよいのでは。
竹川さん:ライブドアショック→リーマンショック→東日本大震災と経験してきて、不況期においても稼ぎ続けられることが大事だと感じた。仕事・事業としてのトータルなポートフォリオですね。東日本大震災の時は仕事が大きく減ったので…。また、東日本大震災の時には現金の換金性も痛感した。どこにお金をおいておくか、どこに引き出せるお金をおいておけるかも考えておいた方がいい。
竹川さん:2008~2009年に積み立てをやめた、あるいはすべて売り払ってしまった投資家が本当に多かった。だから、①自動化する、②ルール化する、③仲間を作る、の3つを行ってほしい。「コツコツ投資家が集まる夕べ」を開催するようになったのもこの考えからきている。2008~2009年のリーマンショックようなのケースがあっても投資を続けられるように仲間を作ってほしい。いったん保有していた株・証券を全解約すると、なかなか戻ってこられない。
竹川さん:企業型DCの成績を見ていると、現在この相場なのに、含み損状態の人がどの会社にも数%は必ずいるんですね。その人たちが過去何をしていたかというと、リーマンショック直後に投資信託を全部解約してしまって、その後預金にスイッチングしていたんですね。それがそのまま今まで続いていて、結局含み損が継続している。この状態は本当にもったいない。
カン・チュンドさん:もし米中貿易戦争が起きて、例えばNYダウや日経平均が20%下げたらどうアドバイスしますか?
竹川さん:下がった時点で相談すること自体が遅いです。平時に考えておかないと。地震と一緒で、あらかじめ何を準備しておいて、どこに避難場所があるか確認しておかないといけないわけです。なので投資方針書を作るとよいです。岡本和久さんやチャールズ・エリスさんの読者に方針書を作成している人が多い気がします。それを書いておくと暴落が起こったときでもそこへ戻ればどう対応したらよいか分かるわけです。方針書や本など、何かあったときに戻れるものがあるといいですね。やっちゃいけないのは人についていくことです。海外の不動産やワインの方に流れていくと困る(会場笑)。自分がどうするかが一番大事です。下がる前に相談してください。
山崎さん:過去は過去。それを改める気があるなら許せばよいじゃないですか。運用方針は紙に残しておくとよい。過去の資産の推移も記録しておきましょう。感情でなく理性で決められる仕組みを作ってください。
(筆者追記:ちなみに竹川さんの上記の発言直後、震度3の地震が起き、会場がざわつきました 笑)
カン・チュンドさん:最後に、最近始めた投資家たちに「これやっちゃダメよ」ってことがあったら教えてください。
竹川さん:やっちゃダメよではなくてやってほしいことなんですが…。 日常の暮らしの中にある投資スタイルが理想です。無理のない投資スタイルを試行錯誤してください。チャールズ・エリスの言葉に「繰り返し自分を知る」というものがあります。家族のこと、お金のこと、仕事のこと、状況は変わっていきますし、判断できるのは自分自身です。失敗してもいいから、投資を続けられればよいと思います。
山崎さん:投資スタイルはみんな同じでよい。銀行や証券会社は”投資家が自分自身で決められない”という依頼心をビジネスに変えていることに皆さんは気づいた方がいい。人に任せたらダメ。金の問題はしょせん金の問題。金で解決できないことを考えた方がいい。
以上です。山崎さんの相変わらずの舌鋒鋭いコメントが多かったです。個人的には山崎さんの過去は過去、将来に目を向けましょうというコメントが心に残りました。竹川さんと山崎さんともに、リスク許容度については方針書を書き留めておくことをすすめてらっしゃいました。
最後にフォトセッションをして「インデックス投資ナイト2018」は終了!
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おまけ:二次会
二次会は打って変わって参加者同士の交流会。
イベントに登壇された竹川さんや山崎さん、金融庁の今井さん、ブロガーの皆さん全員も参加される贅沢な会となりました。ご本人たちと直接できるとってもとても貴重な機会です。日頃ブログを拝見しているブロガーさんたちをたくさんみてとても感動…!
会の途中では、つみたてワニーサの缶バッジのじゃんけん大会や、水瀬ケンイチさん、NightWalkerさん、山崎元さんの著書をめぐるじゃんけん大会も行われ、大変盛り上がっていました。
私も金融庁のTさんとのじゃんけんに勝ち、バッジを入手!
終わりに
本イベントに参加して、多くの気づき・学びを得ることができました。参加できて本当に良かったと思っています。
そして本イベントを企画・運営頂いた実行委員会の方々に御礼申し上げます!
- ASKさん(マネーの知恵(仮))
- 水瀬ケンイチさん(梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー)
- イーノ・ジュンイチさん (ファンドの海)
- kenzさん(インデックス投資日記@川崎)
- ybさん(Passiveな投資とActiveな未来)
- セロンさん(22歳からの貯蓄学)
ありがとうございました、そして参加者の皆さんもお疲れさまでした☆
今回の記事は書き起こし風の内容になってしまったので、個人の学びと要約版の記事を別途まとめてみようと思います。
それでは、また。
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大変ためになる記事をありがとうございました。
これほどの長文を文字起こしされるだけでも相当な苦労があったと思います。
参加できない身としては本当に助かりました。
>binboinvestさん、
こちらこそコメントを頂きありがとうございました。家に帰ったとき、会のメモが20ページ以上になっていて自分でもびっくりしました 笑
せっかくここまでやったんだから…、と自分に言い聞かせて文字に起こしました。お役に立てていれば本当に何よりです^^