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読むオプエド Vol.104
「高度プロフェッショナル制度は新しい経済
社会に対応するために必須のもの」なのか?
…経済学者 竹中平蔵氏に訊く
2018/06/20
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東洋大学教授で経済学者の竹中平蔵さんをゲストにお迎えし、高度プロフェッショナル制度についてお話を伺いました。レギュラー陣は乃木涼介アンカー、川島ノリコアシスタント、上杉隆プロデューサーです。
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【川島ノリコアシスタント】
竹中さんに「高度プロフェッショナル制度」についてお伺いしていきますが、その前に「高度プロフェッショナル制度」とは何かを、改めてご説明させていただきます。
「高度プロフェッショナル制度」とは、時間だけではなく、成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応えるための制度です。一定の年収と、アナリストやコンサルタントのような高度な専門的知識を必要とする業務をしている方が対象となります。
対象労働者の年収は1075万円以上を参考に、法案成立後、改めて審議会で検討することとなっています。この制度は労働者と雇用者の書面による合意が必要で、合意しなかった場合に解雇等の不利な扱いをすることは禁止されます。
年間104日、かつ4週間で4日以上の休日が必要。更に労働時間、休日、深夜の割増賃金に関する支払い義務等の適用を除外する制度となっています。
…この高度プロフェッショナル制度については、竹中さんはどのように評価されてますか?
【竹中平蔵氏】
これはアメリカなんかでは当たり前の制度なんですよね。どういうことかって言うと、工場で集団で働くような人たち…こういう人たちが残業すると、間違いなく生産が高まりますよね。でも例えばアナリストが1時間余計に働いたらその分生産性が上がるかと言ったら、そんな保証はなにもないわけですね。私が「昨日夜中の3時まで論文を書いたから、残業代をくれ」と大学に言うのかと。…違うわけですね。
これは職種によるわけですけども。例えばある企業で受付をしていると。これはもう、時間で厳しくお給料をもらうべきですけども、そうじゃなくて、仕事の中身で、質を売りにするような仕事…アナリストが典型ですけどね…そういう仕事については成果ではかる。その分逆に時間を自由に使ってくださいと…そういう制度だから、私はこれはもう「第4次産業革命」と言われるような、今までとは全く違う経済社会になりつつある中で、当然作っていかなければならないものであるというふうに思います。
【上杉隆プロデューサー】
これは立場によって違うと思うんですけど…今日衆議院通過したんで、基本的には法律は出来ますけど、例えば僕なんかは「ジャーナリスト」だと、高プロというのは「あって当たり前」ですね。歯止め決めちゃうと厳しいんで。もう一つはいまの50人ぐらいスタッフが居る会社の「経営者」としても、メディア産業なので、これは非常にありがたいですね。
【乃木涼介アンカー】
反対意見としては、労働基準法というのは「労働者を守る」ための法律であるにもかかわらず、高プロは経営者側の「働かせ方」の論理じゃないかということなんですよね。
【竹中氏】
それは全然違いますね。雇う側と雇われる側では、雇われる側のほうが立場が弱い…これは当たり前なんです。だから労働基準法があって、団結権があってスト権が認められてるわけです。今までは「残業をさせすぎないようにしましょう」という規制があって、これは今度さらに厳しくなるわけですよ。罰則付きの上限が出来る。今までは抜け穴があったけど、それがなくなります。
では高プロについてはどうかというと、1年365日ある中で「最低104日休みを取りなさい」と言ってるわけです。労働時間を縛るんじゃなくて、休み時間を縛って、あとは自由にさせましょうということですから、これはすごく強い縛りなんですよね。なおかつ上杉さんが言ったように立場が違うから、嫌ならやらなきゃいいんですよ。合意した人だけやればいいわけですから。
これが「労働者に対する資本家の搾取である」というような事を言うのは、私には全く理解できないですね。相当厳しい規制ですよ、104日の休みというのは。これはほぼ週休二日ですよね。それで短期的な規制もある。…そういう批判がどこからでてくるのか、理解できません。
【上杉プロデューサー】
この番組は「オプエド」なので、あえて逆の立場でいうと、日本ではこの制度はそぐわないのかな、とも思うのは、日本人って自己主張をしないじゃないですか。労使関係においても言いたいことを言わない。契約においても何も言わない。「お上が言ったまま」というのが何百年も続いてるんですよ。だからこれをやると結局経営者のほうが力が強いんで、いいように搾取されるんじゃないか…っていう日本人特有の問題はどうですか?
【川島アシスタント】
視聴者のブラックショコラさんからもそういった質問が来てまして、「経営者と対等に給与交渉が出来る社員など、ほとんどいない。日本には阻害する要因がおおくある。同時に解消すべきであるが、まるで議論されておらず、この状態で勤務時間のみ青天井とするのでは片手落ちではないか?」
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