景気の二つの起動力のうち、建設投資は昨年10月から停滞し、輸出は1月から伸び悩み始めた。成長が10-12月期に減速し、1-3月期に後退した背景には、これがある。したがって、足下では成長の「地力」が試されている状態だ。すなわち、全体的な需給関係の中で、どのくらい設備投資が盛んになるかが焦点となる。経済運営の方は、相変わらず、「ボーっと生きてんじゃねえよ!」とチコちゃんに叱ってもらいたくなる有様だが、民間には良い兆しも見られ、このまま無事に顕現してくれないものかと思っている。
………
5月の鉱工業生産は前月比-0.2となり、6,7月の予測も+0.4,+0.8と穏やかなもので、昨年までの勢いはない。日銀・実質輸出を3か月後方移動平均で見ると、1月以来、その水準を超えておらず、鉱工業の予測からすると、今後も増しては行こうが、緩やかなものとなるだろう。すなわち、1月まで果たしてきた景気の牽引役を期待してはいけないということだ。そして、もう一つの起動力である建設も、多くは望めない。
建設投資の状況は、全産業指数で見る限り、三者三様である。住宅は、昨年6月をピークに減退し、足下でようやく底入れした。公共は、昨年5月まで急増した後、秋から急減するというゴー&ストップをたどり、4月に下げ止まったばかりだ。他方、企業の建設投資は、昨年後半まで停滞していたが、今年に入り増勢を見せている。建設投資全体では、低下傾向が続いてきており、補正予算をケチって前年度より1.1兆円緊縮した「成果」が表れている。
では、地力となる設備投資は、どんな状況か。まず、月曜に公表された6月短観では、最近の業況判断が、大規模製造業で-3、非製造業で+1という冴えない結果だったものの、設備投資計画については、非常に強いものだった。鉱工業生産においても、資本財(除く輸送機械)の予測は、6月+2.1、7月+0.2という具合だし、企業の建設投資が上向いていることは、既に触れたとおりである。
設備投資は、まずは、追加的な需要、具体的には輸出・公共・住宅に従うが、需要が全体的に強まって来れば、自律的に増えるようになる。今回の短観でも、設備投資計画の強さの背景には、需給逼迫や人手不足がうかがわれる。そうならないと、設備投資は出て来ないもので、金融緩和やら成長戦略やらでは動かない。人手で済ませられるなら、投資リスクなど負うまでもないからだ。
他方、5月の毎月勤労統計では、現金給与総額が前月比+1.7と高い伸びを示した。フレが大きいけれども、1,2月の水準から、明らかに高まっている。昨年秋までの停滞ぶりとは様相が異なり、景気の賃金への波及が見られる。こうなると、労働生産性を高めるために設備投資をせざるを得なくなる。それがまた、景気を加速させて行く。賃金から消費へと拡がっていくのも時間の問題だろう。
(図)
………
5月の消費指標は、CTIの実質が前月比+0.1となり、4,5月平均は前期比+0.2の水準である。消費活動指数+は、前月の急伸の反動から-1.4だったが、前月の「貯金」で4,5月平均は前期比+0.6となっている。活動指数の前期比の高さは、前期の低下が大きかったことがあるので、消費の判断としては、CTIが示すような緩慢な上昇にとどまっていると見るべきだろう。
いまや、勤労者世帯は全体の半分でしかないので、財政による再分配はゆるがせにできない。税の自然増収によって財政が締まるのは、ある程度は仕方ないにしても、わざわざ補正予算で1.1兆円も絞った意図は何なのかと、今更ながら思う。まあ、「特に考えもなく」というのが正直なところか。それを誰も叱ってはくれない。
(今日までの日経)
米中 貿易戦争に。GPIF 株「満腹」。中小賃上げ率20年ぶり高水準。社会保障費ぶれる推計 「25年度の給付額」四半世紀で160兆円減。大企業の人件費、16年ぶり高水準。国の剰余金9000億円。複眼・財政に足りぬ危機感。
※ガスパールさんのIMFが刻めと言うのも聞かず、一気の消費増税をするのだろうな。
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5月の鉱工業生産は前月比-0.2となり、6,7月の予測も+0.4,+0.8と穏やかなもので、昨年までの勢いはない。日銀・実質輸出を3か月後方移動平均で見ると、1月以来、その水準を超えておらず、鉱工業の予測からすると、今後も増しては行こうが、緩やかなものとなるだろう。すなわち、1月まで果たしてきた景気の牽引役を期待してはいけないということだ。そして、もう一つの起動力である建設も、多くは望めない。
建設投資の状況は、全産業指数で見る限り、三者三様である。住宅は、昨年6月をピークに減退し、足下でようやく底入れした。公共は、昨年5月まで急増した後、秋から急減するというゴー&ストップをたどり、4月に下げ止まったばかりだ。他方、企業の建設投資は、昨年後半まで停滞していたが、今年に入り増勢を見せている。建設投資全体では、低下傾向が続いてきており、補正予算をケチって前年度より1.1兆円緊縮した「成果」が表れている。
では、地力となる設備投資は、どんな状況か。まず、月曜に公表された6月短観では、最近の業況判断が、大規模製造業で-3、非製造業で+1という冴えない結果だったものの、設備投資計画については、非常に強いものだった。鉱工業生産においても、資本財(除く輸送機械)の予測は、6月+2.1、7月+0.2という具合だし、企業の建設投資が上向いていることは、既に触れたとおりである。
設備投資は、まずは、追加的な需要、具体的には輸出・公共・住宅に従うが、需要が全体的に強まって来れば、自律的に増えるようになる。今回の短観でも、設備投資計画の強さの背景には、需給逼迫や人手不足がうかがわれる。そうならないと、設備投資は出て来ないもので、金融緩和やら成長戦略やらでは動かない。人手で済ませられるなら、投資リスクなど負うまでもないからだ。
他方、5月の毎月勤労統計では、現金給与総額が前月比+1.7と高い伸びを示した。フレが大きいけれども、1,2月の水準から、明らかに高まっている。昨年秋までの停滞ぶりとは様相が異なり、景気の賃金への波及が見られる。こうなると、労働生産性を高めるために設備投資をせざるを得なくなる。それがまた、景気を加速させて行く。賃金から消費へと拡がっていくのも時間の問題だろう。
(図)
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5月の消費指標は、CTIの実質が前月比+0.1となり、4,5月平均は前期比+0.2の水準である。消費活動指数+は、前月の急伸の反動から-1.4だったが、前月の「貯金」で4,5月平均は前期比+0.6となっている。活動指数の前期比の高さは、前期の低下が大きかったことがあるので、消費の判断としては、CTIが示すような緩慢な上昇にとどまっていると見るべきだろう。
いまや、勤労者世帯は全体の半分でしかないので、財政による再分配はゆるがせにできない。税の自然増収によって財政が締まるのは、ある程度は仕方ないにしても、わざわざ補正予算で1.1兆円も絞った意図は何なのかと、今更ながら思う。まあ、「特に考えもなく」というのが正直なところか。それを誰も叱ってはくれない。
(今日までの日経)
米中 貿易戦争に。GPIF 株「満腹」。中小賃上げ率20年ぶり高水準。社会保障費ぶれる推計 「25年度の給付額」四半世紀で160兆円減。大企業の人件費、16年ぶり高水準。国の剰余金9000億円。複眼・財政に足りぬ危機感。
※ガスパールさんのIMFが刻めと言うのも聞かず、一気の消費増税をするのだろうな。