見えない要素からアプローチする
今回は私がよくやる構成法で、三分割や対角線、S字といったセオリーはひとまず置いておいて空間からイメージを作っていくアプローチです。そんなアプローチで撮影したのが冒頭の写真です。
主題は言うまでもなく中央に見える藤懸の滝(埼玉県棒ノ嶺)ですが、この滝を表すには何からアプローチするべきかというのが今回のテーマです。
地形の成り立ちを考える
カメラを構える前にまず地形を確認していきます。藤懸の滝は大きな滝ではありませんが、沢の水によって漏斗状に深く抉られた形をしています。北へ向けて流れる川なので午前中は影、正午あたりでようやく滝の上部に光が差してくるという場所です。
そういった場所なので、主題は滝の流れとしながら藤懸の滝の特徴が現れるポジションを考えます。探るではなく考えるというところが大事です。ファインダーを使いながら探るという動き方をすると足下の危険を見落としたり、周囲の観察がおろそかになりがちです。
そんなわけで、上から観察しながら考えてみた結果、少し降りた位置からアプローチしていくのが良いだろうと考えました。
観察の仕方については、同じく藤懸の滝を題材にした以前の記事がありますので、そちらも合わせてご参照ください。
シンプルに中心に据える
撮影ポイントにカメラを設置しました。分解すると画面中心を軸に陰陽の対称となる構成ですが、ベースとしてはシンプルに滝をど真ん中に据えるというアプローチをしました。その上で藤懸の滝らしさを表していくために何が必要かを組み込んでいきます。
そのらしさがこちら。ざっくりと漏斗状に削られた滝を意識した補助線ですが、実際に意識しているのは空気の容積です。流れによって削られた分、そこには空気が満ちています。
上部が広く下部は狭いという地形では、上は明るく大きな空気のボリューム、下は暗くグッと詰まったボリュームを持っているとイメージすることで、構図のみでなく露出の決定やRAW現像時の方向性といったものも考えやすくなります。
ちょっと観念的に思われるかも知れませんが、水しぶきを含んだ大量の空気が陽を受けると光が拡散しやすいだったり、影の部分はどんなタイプの光になるのかといった要素を考える材料になるという意味です。
Twitterなどで、RAW現像の方向性が迷子になるといったワードをよく見かけますが、そんな時は空間の量・質にも注目してアプローチしてみるとヒントになるかも知れませんね。