■ 洪水警報の危険度分布とは
洪水警報の危険度分布は、洪水警報を補足する情報です。
指定河川洪水予報の発表対象ではない中小河川(水位周知河川及びその他河川)の洪水害発生の危険度の高まりの予測を示しており、洪水警報等が発表されたときに、どこで危険度が高まるかを面的に確認することができます。
3時間先までの流域雨量指数の予測値が洪水警報等の基準値に到達したかどうかで、危険度を5段階に判定し、色分け表示しています。
■ 洪水警報の危険度分布の利用上の留意点
- 洪水警報の危険度分布に関わらず、自治体から避難勧告等が発令された場合や河川管理者から氾濫危険情報等が発表された場合には速やかに避難行動をとってください。
- 洪水警報の危険度分布では、自分がいる場所に命の危険を及ぼす可能性のある河川の危険度を確認するようにしてください。 その際には、危険度の高まった紫色や赤色の表示は上流から下流へ移動してくる傾向がありますので、上流地点の危険度も含めて確認するようにしてください。
- 洪水警報の危険度分布では、氾濫が発生した場合の氾濫水の移動までは考慮されていません。 洪水予報河川や水位周知河川については氾濫が発生した場合の浸水想定区域が指定されているところがありますので、自治体等が公表している洪水ハザードマップを参照してください。
- 一般に、山間部等を流れる中小河川(水位周知河川、その他河川)は流域面積が狭く、勾配が急であるため、流れが速くなりやすく、大雨が降ると急激な増水を伴うという特徴があります。 山間部等の流れの速い中小河川などで水流によって川岸が削られるなどして家屋が押し流されるおそれがある場合、あるいは、中小河川の氾濫が発生したときの浸水の深さが深く、最上階の床の高さまで浸水するおそれがある場合などには、洪水で命に危険が及ぶおそれがあります。
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こうした場合に対処するため、次のように、自治体の避難情報や
河川の水位情報とともに「洪水警報の危険度分布」も参考に、実際に河川の水位が上昇するより前の早い段階から早めの避難を心がけることが大切です。
- 赤色(警報級)の危険度が出現した場合には、重大な洪水害が発生するおそれがあり、当該河川の水位が水防団待機水位等を越えていれば自治体から避難準備・高齢者等避難開始が発令されうる状況を示しています。 自治体の避難情報を確認し、避難準備・高齢者等避難開始が発令されている場合には、避難の準備をして早めの避難を心がけてください。 また、避難準備・高齢者等避難開始が発令されていない場合であっても、 河川の水位情報を確認し、水位が水防団待機水位等を越えている場合には、前述の状況を踏まえ、避難の準備をして早めの避難を心がけてください。 (高齢者等は速やかに避難を開始してください。住宅の地下室からは速やかに退避してください。)
- さらに、薄い紫色の危険度が出現した場合には、重大な洪水害が発生するおそれが赤色(警報級)よりもさらに高まると予想されており、当該河川の水位が氾濫注意水位等を越えていれば自治体から避難勧告が発令されうる非常に危険な状況を示しています。 自治体の避難情報を確認し、避難勧告等が発令されている場合には、速やかに避難を開始してください。 また、避難勧告等が発令されていない場合であっても、 河川の水位情報を確認し、水位が氾濫注意水位等を越えている場合には、前述の状況を踏まえ、速やかに避難を開始することが重要です。
- その後、濃い紫色の危険度が出現した場合、流域雨量指数の実況値が過去の重大な洪水害発生時に匹敵する値にすでに到達したことを示します。 すでに重大な洪水害が発生しているおそれが高い極めて危険な状況です。
- 河川堤防が損壊したり、河床が土砂で埋まるなど、河川構造物が損傷を受けた地域では、通常よりも洪水による被害が起きやすくなっています。そのような地域では、自治体の発令する避難情報に十分留意するとともに、「洪水警報の危険度分布」で黄色(注意報級)の危険度が出現した場合であっても、赤色(警報級)やその上の危険度が出現した場合と同様の対応をとってください。
- また、洪水予報河川の外水氾濫については、洪水警報の危険度分布ではなく、河川管理者と気象台が共同で発表している指定河川洪水予報等を踏まえて避難勧告等が発令されますので、それらに留意し、適切な避難行動を心がけてください。 なお、洪水警報の危険度分布において、洪水予報河川で赤色(警報級)や黄色(注意報級)が出現したときには、当該洪水予報河川の外水氾濫のおそれではなく、当該洪水予報河川の増水によって周辺の支川・下水道からの排水ができなくなることで発生する内水氾濫による洪水害(赤色:重大な洪水害、黄色:軽微な洪水害)のおそれがある状況を示しています。
河川の分類 | 洪水予報河川 | 水位周知河川 | その他河川 |
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洪水に関する 重要な情報 |
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■ 「流域雨量指数」を用いた洪水警報の危険度分布
- 気象庁では、河川の上流域に降った雨により、どれだけ下流の対象地点の洪水害リスクが高まるかを把握するための指標として「流域雨量指数」を用いています。 この流域雨量指数により、中小河川(水位周知河川及びその他河川)の洪水害発生の危険度の高まりを判定して「洪水警報の危険度分布」を提供しています。
- 流域雨量指数は、降った雨水が、地表面や地中を通って時間をかけて河川に流れ出し、さらに河川に沿って流れ下る量を、タンクモデルや運動方程式等を用いて簡易的に(ダム等の人為的な流水の制御、潮位や支川合流の影響、インフラの整備状況の違いなどについては考慮せずに)数値化したものです。
- ただし、流域雨量指数は、降った雪が積雪として地表に蓄えられる過程やこれが融けて地表面や地中を通って河川に流れ出す過程は考慮していないため、降雪時・融雪時は洪水害リスクの高まりを正確に表現できていない場合があります。
- 流域雨量指数そのものは、値が大きいほど洪水害リスクが高まることを示す相対的な指標であり、重大な洪水害のおそれがあるかどうか等を判断するには、これだけでは十分ではありません。そこで、過去の洪水害発生時の流域雨量指数の値から「流域雨量指数がこの数値を超えると重大な洪水害がいつ発生してもおかしくない」という数値を洪水警報の基準に設定しています。
- 「洪水警報の危険度分布」は、流域雨量指数の3時間先までの予測値が「注意報基準未満の場合」、「注意報基準以上となる場合」、「警報基準以上となる場合」、「警報の一段上の基準以上となる場合」及び、流域雨量指数の実況値が「警報の一段上の基準以上となった場合」の5段階で色分けして、中小河川の洪水害発生の危険度を河川の流路に沿って表示しています。
- 洪水警報等の基準は、河川流域毎かつ市町村毎に過去の洪水害発生時の流域雨量指数の値を20年分以上にわたって網羅的に調査した上で設定しています。 これにより、流域雨量指数の計算では考慮されていない要素(ダム等の人為的な流水の制御、潮位や支川合流の影響、インフラの整備状況の違いなど)も基準値には一定程度反映されています。 さらに、最新の洪水害発生履歴データを用いて基準の見直しを定期的に実施し、的確な洪水警報・注意報の発表や「洪水警報の危険度分布」の提供に努めています。