俺は超越者(オーバーロード)だった件   作:コヘヘ
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絶望の中手に入れた光と希望かもしれない闇への恐怖


第五話 この世で最も孤独な超越者(オーバーロード)

 

最初の躓きはどこだっただろうか。ワールドアイテムの装備箇所同じものでダブったことかもしれない。

指輪だけで13個。ワールドアイテムは大量にあるのに最後のピースが揃わなかった。

 

それでも当初の計画なら問題なかった。

予想外だったのは鉱山を自分の物にした結果、熱素石に必要なだけの七鉱山の金属の量の確保に時間がかかるようになったことだ。

これによる遅れのせいで従属ギルドへの配給が遅れた。従属ギルド自体は気にしないで使ってほしいと言われたが、ギルドメンバーも俺も気にした。その為の折衷案としてアインズ・ウール・ゴウンの分だった素材を使って共同でゴーレムや武器を作ったりした。

これは楽しかったし後悔していない。だが、更に追い打ちをかけるようにリアルの事情が変わってきた。ここ数か月の間に不穏な空気があるらしい。らしいというのは俺にはわからないからだ。

俺以外のメンバーは時間が避けなくなってきた。従属ギルドでも大多数がそうらしい。ギルドを解散して武器やアイテム、熱素石を使ったゴーレムや武器を全て渡された。皆が楽しかったと言って去っていった。

 

このままだといずれ「原作」通り俺一人になる。

 

俺は原因を探ろうとした。できうる限りのことはしたつもりだ。でも、まるで見えない何かに阻まれているかの如く何もわからなかった。

助けになれないかと信条を曲げてまでリアルに出向いたりもした。しかし、当たり前だが誰も教えてくれなかった。迷惑がられることなくお礼すら言われた。

 

悔しかった。

 

ユグドラシルは俺の初めての居場所であり思い出であり全てだ。

 

ただ、それ以外は何もなかった。

 

全てを投げ出してまでリアルに思い入れることができなかった。

俺と去っていった皆との違いはそれだけだろう。その差が海よりも山よりもありすぎた。そしてついにアインズ・ウール・ゴウンの番がきた。ただそれだけの話だった。

 

「クリスマスがお別れ会になるとは思いませんでしたよ」

ヘロヘロさんが苦笑する。

転職が上手く言っていないようだ。偶に来れるときはほぼ確実に俺に愚痴零してログアウトするような感じだったが来てくれるだけ嬉しかった。

 

「旧支配者のキャロルでも流しますか?」

タブラさんは本当にわからない。

最後の最後までぶれなかったと言えば良いのだろうか?よくよく話してみるとSAN値が削れるようなことを言っていることに気づいたのはつい最近だ。

 

「やめてください。ゴーレムけしかけますよ?」

るし☆ふぁーさんは悪い意味でブレない。

正直毎回やらかすので何度本気でキレかけたことかわからない。

いなくなったらフレンドリーファイヤーするゴーレムがいないか確認しなければならない。従属ギルドの同好の士が増えたため、数えるのが億劫な程作られた。数を確認するだけで数日かかりそうだ。動作確認までしたらいつまでかかることやら。

 

「はいはい。皆さんいまから最後のマント作るんですから見ていてください」

俺はそう言って熱素石に願い始める。運営に劣化ワールドアイテムを依頼しつづけた結果どの範囲まで有効かは既に把握している。

 

皆が見守る中だから、異世界がもしあるとすれば役に立つがゲームではほぼ役に立たない願いを祈る。

「装備することで戦士化ができるマントが欲しい」

思い出すのは前世の漆黒の英雄。マッチポンプとはよく言ったものだ。

 

「何ですかそれハハハ!」

るし☆ふぁーさんが笑う。レベル100とはいえ魔法職の戦士化何てスキルも使えない。ジョーク魔法みたいなものだからだ。

 

「いや、確実に叶えられるでしょうねそれは…」

 ヘロヘロさんは苦笑する。従属ギルドでWI化するときに欲張りすぎて無駄になったことを知っているから本当に最低限度の願いにしたと思ったのだろう。

 

「いや、その手がありましたか。機動力として…」

タブラさんは何か深読みしているような気がする。異世界でなきゃ使い物にならないマント何だが。

 

『英雄のマント、作成しました』

完成のアナウンスが流れる。俺はさっそく着けてみる。

 

そして気づく。

「あれ、これ戦士化の状態で魔法やスキルが使えるみたいですね」

試しに第一位階魔法の矢(マジック・アロー)を撃ってみる。すぐ魔力は回復する。

絶望のオーラレベルⅠ。普通に使える。

予め用意しておいた熱素石を使用した剣を振り回す。ちょっと走ってみる。

 

「やはりそうでしたか」

タブラさんが面白そうな声色でマントを見る。

 

「あれ。これ普通に使えるマントですね」

ヘロヘロさんが相手の武器や装備を溶かすときの獲物を見る目でこちらを見る。

…溶かさないでくださいよ。

 

「だが、ゴーレムの方が圧倒的な応用力がある!」

マントの好評具合にご立腹のようだ。その応用力をびっくりさせるためだけに使うのはどう考えても無駄遣いだと今でも思う。

 

「と、とりあえず成功したので全身装備してみますね」

色々グダグダしてしまう前にどうなるか皆に見て欲しかった。

 

「HP+500%の指輪、MP+500%指輪、阻害無効化の指輪、ありとあらゆる炎系魔法が使える指輪、殴打無効化の指輪、接触することで状態異常無効になる小手、完全催眠の杖…」

大体強奪品という我ながら酷い行いを色々思い出だす。ゲームじゃなかったら本当に魔王だ。

 

「そして、もうすでに着けているあらゆる魔法を第六位階まで使えるけどレベル上げないと使えない腰当と最後に」

 

あえて取り外していたいつもつけていたワールドアイテム

 

「モモンガ玉と」

 

「何というか相変わらず締まらない愛称ですよね」

るし☆ふぁーさんが言う言葉に俺すらも頷く。でもこれが討伐隊2500人に止めをさした事実は変わらない。使うころにはほぼほぼ死んでたけど。

 

苦笑しつつモモンガ玉を付けた瞬間。

『超越者(オーバーロード)の条件を満たしました』

運営からのアナウンスがギルド内に響き渡る。

 

『達成者モモンガ様の超越者(オーバーロード)化を開始します。

また、大魔王の挑戦権での達成のためギルドメンバー及び全NPC、全従属NPCのレベルが+50になります。NPCは最適化しますか手動で行いますか?』

これは想定外過ぎる。今日やめるギルドメンバーは考えている時間はない。さらにNPCとなっては全員を一々確認しないといけない。最終日まで取り掛かっても無理だ。でも、アインズ・ウール・ゴウンは多数決を重んじるギルドだ。

 

「…最適化が良い方挙手してくれます?」

 もう少ししっかりとした聞き方をしたかったが仕方がない。だって今までこんなことなかったのだから。

 

「…」

全員何とも言えない空気で挙手する。

 

「ギルドメンバー及び全NPCの最適化を」

正直もっと早く知りたかった。皆にメールして直接意見を聞きたい。でも、それは最後までいてくれたメンバーなら皆許してくれるだろう。

 

『おめでとうございます。あなたはユグドラシルの解答の一つを達成しました。あなたは世界そのものでありただ一人の超越者(オーバーロード)です。どうかあなたの道に幸ありますように』

そして世界を照らすように光輝き、世界を関するアイテムが消えた。

 

 








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