2018-07-07

大企業内部留保の話

定期的に盛り上がる大企業内部留保の話、内部留保労働者に回せっていう共産党の主張もメチャクチャなんだけど、それをきちんと否定できている人もあまり多くない。会計用語を使って説明しようとする人が多いけど、実はそこはあまり本質ではないので、会計用語を使わないで何が論点なのかを説明してみたい。

最初結論を書いておくと、いわゆる内部留保(利益剰余金)を労働者に回すのは理論可能だけど、現在世界支配的な法的・経済的な枠組みの中では不可能、という風に考えておけばいいと思います

内部留保を配ることはできる

まず、内部留保現金として配るのは可能です。内部留保工場在庫に化けてしまっていて現金にはできないと言う人がいますが、それは正しくありません。会社株主配当として現金を配るとき会計上は内部留保の減少として処理されます配当当期利益から支払われるんだと言う人がいるかもしれませんが、その人の知識2005年会社法以前の時代で止まっています現代的には、会社内部留保から株主お金を配っているのです。

会社配当を支払うとき現金出所はいろいろあります事業で生み出した現金を配るのが一番わかりやすいですが、銀行から借りたお金を配ることもできますし、設備の一部を売って得たお金を配ることもできます。突飛に聞こえるかもしれませんが、広い意味で言えば多くの会社が当たり前のようにやっていることでもあります

ではなぜ労働者には配れないのか

それは内部留保株主の持ち物だからです。会社がお客から受け取った売り上げから仕入れ先に原料の代金を支払い、従業員給料を支払い、営業必要な諸経費を支払い、銀行には利息を支払い、政府には税金を支払った後の、株主最後の取り分が内部留保です。その内部留保労働者に配ろうというのは泥棒論理、もしくは「お前のものも俺のもの」というジャイアン論理です。

もちろん、法律を変えてしまえば内部留保を配ることができるかもしれません。でも、内部留保株主の持ち物であるという前提で株価はついているし、経済も回っています。その前提を崩したときに何が起こるか、僕にはちょっとわかりません。

共産党泥棒なのか

実はこの内部留保活用論、共産党の主張としてはとても理にかなっています資本家たる株主財産である内部留保を奪って労働者に分配しようという話だからです。つまり共産党のこの主張は私有財産否定現代的な文脈で言い換えたものだと考えておくといいでしょう。時代時代資本家像・労働者像をしっかりととらえたうえで効果的なプロパガンダ打つ手腕は鮮やかで見事だとも言えます。票は入れたくならないけど。

もっとも、共産主義私有財産否定からトンデモだと言うつもりは全くありません。程度の差こそあれ、官製春闘による賃上げも似たようなものです。逆に、工場処分して現金を配るような内部留保の取り崩し方をするとその工場で働いていた人は職を失うので、これも程度の問題です。いいことが起こるかもしれないし悪いことが起こるかもしれない。月並みに言えば制度設計次第というところだと思うので、何がベストかはみなさんが各自で考えて議論していけば良いと思います。先ほども言ったとおり、僕にはちょっとわかりません。

まとめ

以上をまとめると、

ってところです。

記事への反応(ブックマークコメント)

アーカイブ ヘルプ
ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん