点滴混入事件 元看護師を逮捕
おととし、横浜市の病院で点滴の薬剤などに異物が混入され入院患者2人が中毒死した事件で、警察は当時、勤務していた31歳の元看護師の女が点滴に消毒液を入れたと認めたことなどから、死亡した2人のうち1人に対する殺人の疑いで逮捕しました。
警察は取り調べを進め動機や詳しいいきさつを調べることにしています。
逮捕されたのは横浜市の元看護師、久保木愛弓容疑者(31)です。
横浜市神奈川区の旧「大口病院」では、おととし9月、同じ病室に入院していた西川惣藏さん(88)と八巻信雄さん(88)が相次いで中毒死しました。
2人の遺体などから、消毒液などに含まれる「界面活性剤」が検出されたたため、警察は、何者かが点滴の薬剤などに消毒液を混入させた殺人事件として捜査していました。
その結果、当時、看護師として勤務していた久保木容疑者が点滴に消毒液を入れたと話したことなどから、2人のうち西川さんに対する殺人の疑いで逮捕しました。
捜査関係者によりますと調べに対し容疑を認めているということで、警察は取り調べを進め動機や詳しいいきさつを調べることにしています。
旧「大口病院」で当時、久保木容疑者と同僚だった元看護師がNHKの取材に応じ、仕事ぶりや事件が発覚した直後の様子などについて証言しました。
このなかで元同僚は、「何人もの看護師仲間が久保木さんがあやしいと話をしていたのを聞いていたが、仕事はそつなくこなしていて真面目だった。誰かとトラブルを起こすようなこともなく、仲良く働いていた」と振り返りました。
また、職場での立場や仕事内容については、「病棟の中ではいちばん若くて、業務量も彼女には重く、負担は大きかったかもしれない」と話しています。
一方、事件が発覚した直後の様子について、この元同僚は、「テレビの報道が流れた時に大変動揺し、ずっと画面を見て凝視して立ち尽くしていたと別の看護師から聞いた。事件のあと、彼女の夜勤の日があったが『体調が悪くて出られない』と直前になって電話がかかってきて、上司と面談し夜勤をしないで帰ったこともあった」と証言しました。
逮捕前、久保木容疑者はNHKの取材に対し、事件当時、病棟で異変が起きていたとしながらも、自身の事件との関わりについては否定していました。
久保木容疑者は事件から1年となった去年9月、NHKの取材に応じた際、事件前の病棟の状況について、「看護師のエプロンが切り裂かれたり、カルテが紛失したり、飲み物に漂白剤が入れられたりと、犯罪のようなことがいろいろ起こっていて、大丈夫だろうかと思っていた」などと話していました。
また、事件については、「職員の中でも『最近亡くなる人が多いね』という話はしていたが、まさか事件で亡くなったとは誰も思っていなかったので、ショックだった」と話していました。
そのうえで、事件当初からみずからに疑いの目が向けられていたことに触れ、「いろいろとやってもいないことをやったと言われ、私に目が向けられてすごく辛かった」と話し、自身の事件への関わりを否定していました。
さらに、看護師としての仕事については、「療養病棟は寝たきりの人も多く、コミュニケーションがとれない人も多かったが、少しでも快適に過ごしてもらえるようお手伝いをすることが仕事と思ってやっていた」と語っていました。
そして、「無差別だったのか患者が気に入らなかったのか全くわからないが、早く犯人を見つけてもらいたいし、なぜそんなことをしたのか知りたい」とも話していました。