先月書いた、PCゲームのプラットフォーム「Steam」のオススメゲームを50本紹介する、という記事が、ブログ初めて以来の規模で読んでいただけた。
また、最後まで読んだ、これは入れないのか、おかげで余計に1枚諭吉さんが消えたなど、色々な意見も寄せられていて、拾える範囲では全て読ませていただいた。
で、やはり「何故この作品が入ったのか」「何故この作品が入っていないのか」という考えは、読んでくれた人のほとんどが何かしら抱いたと思う。
2017年時点で、steam全体で約15000本以上の作品がリリースされているそうで、その中で自分が遊んだのは800本、厳密には1000本ほどだと思うのだが、それでも10分の1もプレイできていなのだ。実際のところ、私が知らない名作も数多くあるだろうし、そういう点で誠実と言えないかもしれない。
だが実際のところ、その中から更に50本を厳選する作業は、自分もかなり注意を割いた。実のところ、記事を書く時間よりも、作品を選ぶ時間の方が長かった程だ。
そこで、せっかくなのでこの記事を書くに当たって、どのような行程を経たのか、多少読まれた所で一記事書くだけの作業のメイキングを作るなど少し滑稽な感じもするが、少なくとも「何故、あの50本だったのか」を説明する事は出来ると思う。
「宇宙」を語る上で「銀河系」に細分化する
そもそも、自分がこの記事を書こうと考えたのは、ただ友人に「Steamのオススメはないか」という単純な質問を、何度か伺ったことがきっかけだった。
これは一見シンプルな質問のように思えたのだが、いざ考え出すと答えに窮した。何分、Steamとは宇宙のようなもの。まず多い。1000本とか2000本とかじゃない。何しろ15000本以上。しかも膨張してるらしい。ヤバイよ、膨張だよ。とにかく貴様ら、もっとSteamのヤバさを知るべきだと思います、みたいな話しか浮かばない。
要するに、「Steamのオススメは?」という質問は、「宇宙とは何か?」みたいなレベルでスケールが大きくて、いくらかアイディアは思い浮かぶけど、それが正解という自信がない。けどそこで黙るなら、なんのために十数年Steamに溶かしたんだ、という話で。半ば自暴自棄の状態でこの記事に着手したのである。
個人的に、まず何となく好きな作品を無数に上げて、そこから50本上から選択するという考えは最初からなかった。というか、それは不可能に近かった。
ハッキリ言って、自分が遊んだ中で「オススメしたいゲーム」なんて50本どころか、100本でも足りない。そんな状態でただ自分が好きなゲームを並べても、自分も読者も納得させるのは無理だと感じた。
そこで、自分はこの膨大な「宇宙」をまず「銀河系」に分けることを考えた。つまりジャンルに応じて10本ずつ選ぶのが手っ取り早いと考えたのだ。だがこれにも限界はあった。
例えば、FPS、アクション、マルチプレーこのようなジャンルを集めた所で、作品毎の明確な共通点などない。例えば『アサシンクリード』はステルスゲームなのか、アクションゲームなのか。Steamで最早マジョリティと化したインディーズゲームはどう取り扱うべきか。いくらでも疑問が噴出する。
そもそも、あるゲーム作品について、「これはFPSです」「これはRPGです」と紹介するのも、何かおかしい気がする。むしろ開発者たちは、「FPS」を作ることを意識した上で、FPSの常識を破壊しようと躍起になっている。だったらゲームシステムでジャンルを分けるのは妥当でないように思えた。
ただ少なくとも、先にゲームでなくカテゴリから決めてしまう、という考えは良かった。ただの作品の羅列では、そこにオススメするだけの「説得力」がない。逆に作品を推奨するだけの根拠自体を、カテゴリに詰め込むことで、ダラダラと文章が長くなることを避けられた。
加えて、カテゴリを用意することで、記事そのものに一貫性が生まれ、ある程度は読んでいても飽きない内容になった。記事の「テンポ」を作る上で大変重要な役割を果たしたのである。
その結果、考えたのが、作品をプレイした時に感じるであろう、プレイヤー側の「感情」を元にカテゴリを作ることだった。
冷静に考えて、私はゲーム会社のパブリッシャーでなく、ただのゲーマーである。その1人のゲーマーが、他のゲーマーに作品を薦めるのであれば、無理に彼らのパブリッシングに則るのでなく、自分たちのビジョンを共有するだけで十分だと考えたのだ。
そうして作ったのが、
「オンラインの海へ飛び込め」/マルチプレー
「Steamのレジェンドたち」/古典的名作
「君に攻略できるか?」/高難易度
「ゲームで泣いてもいいんだよ」/???
「時間、いくらあっても足りません」/中毒性
「クセが強すぎるゲームの話」/アイディア力
という6つの「銀河系」だった。実際にはこれに、あと1つか2つの銀河系があったと思うのだが、最終的にはこの6つでいくべきだという判断になった。
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800本から50本を選ぶ作業
銀河系が出来たのは良いが、問題はその配分だった。50本のゲームを6つのカテゴリに分類する、単純計算で8本ずつ+2本で収まるのだが、あえて最前と最後のカテゴリを5本に絞り、他4つのカテゴリを10本ずつ紹介した。
とは言え、大抵の読者が違和感を覚えるカテゴリが1つあると思う。「ゲームで泣いてもいいんだよ」というカテゴリは明らかに他のカテゴリと一線を画する内容だが、ここに10本も枠を割いている。
そもそも、ゲームで「泣く」事は普通期待されていない。ましてSteamをインストールしているゲーマーなら尚更だ。
逆に、中毒性のあるハクスラや、誰もが楽しめる不朽の名作、腕に自身のある人間の好むマゾゲー、これらはSteamに足を踏み入れるゲーマーにとって、わかりやすい「好物」といえる。
この弁明は、「私の趣味です」と言う他ないのだが、だがゲームによって得られる喜びは、魔獣たちの臓物を吹き飛ばした時の達成感や、完璧にコーナーをドリフトで曲がった時の爽快感だけではないと思う。
ゲームは一種のメディアだ。媒体だ。何かを伝えるためのものだ。こうしたゲームの根源的な在り方を考えた場合、「何を伝えるか」という原初に立ち返ることは、至って当然だと思う。
「泣ける」とか「感動する」という表現が陳腐なのはわかっているけど、なんとかして人の心を動かしたい、厳密には、ゲームを利用して何かを「伝えたい」と思って作られた作品、私は今後共こうした作品を評価したいし、Steamには意欲的な作品が無数にある事を知ってほしかったのだ。
ともかく、カテゴリはこれで6つ。後は作品を厳選する段階なのだが… 実際のところ普通に100本ぐらい候補があって、ここでも頭を悩ませた。
そこでまず行ったのが、最初に決めた6つのカテゴリからズレた作品は全て除外すること。作品の出来が良くても、カテゴリありきで伝えなければ、結局「ぼくのかんがえたさいきょうのゲーム集」になってしまう。
また細かな点だが、ゲーム史に偉大な影響を及ぼしたゲームとか、極めて斬新で評価されたゲームよりも、実際に遊んだプレイヤーが飛びけるゲームを選んだ。*1つまり実践主義。そりゃマジョリティはゲームにそこまで興味ないからね。
なので、泣く泣く『Splinter Cell: Chaos Theory』、『Serious Sam』、『Her Story』、『The Forest』、その他無数のコンシューマ向けの名作、この辺は削らざるを得なかった。『Slay the Spire』?『Rocket League』?面白いの知ってるよ!!けどスペースがなかったんだよ!『Lobotomy Corporation』のために「何故か股間が反応してしまうゲーム」的なカテゴリ作りかけたよ!!いや今からでも作るか!?
ともかく、1本ずつ丁寧にあーでもないこーでもないと削り、時折友人にアドバイスを求めながらもやっと50本まで厳選。さぁ後は文章だという段階に。
ここからは簡単だ。なまじ全ゲームとっくにクリア済みだし、大好きなゲームだし、文章なんかいくらでも浮かぶ。答えのわかったパズルを埋めるようなものだ。
むしろいかに短く、かつ未プレイ者に説明できるかが大切だった。この点においては、Steam機能にあるユーザーが付けるタグが大いに役に立った。
で、肉体的な余裕のある日に4~5本書いて、大体1ヶ月で完成。
その後、友達が拡散してくれたり、偶然と幸運が重なったりして、結構色々な人に読んでもらえた。その際、かなり多くの方に誤字等を指摘してもらえて、これも大変助かった。最後にチェックしたはずが、かなりミスが出てしまった点は反省したい。
実際のところ、この記事は少なくともSNSでウケると思っていなくて、検索エンジンからじんわり読んで貰えるならそれでいいかなと思ってたけど、まさかこんなにバズるなんて思ってなかった。
バズった感想は、もう素直に嬉しい。最高ですわ。そりゃ書いてるんだから読まれた方が嬉しいに決まってる。同時に今の日本はこんなにSteamが浸透しているんだとビックリした。
記事も書いてて楽しかったし、柳の下の泥鰌を狙うというわけでもないが、他のハードでも似たような記事を書きたいね。
それに何より、もう「Steamでオススメない?」と聞かれても、5秒で答えることが出来るからね。それだけでも書いてよかったよ。
ここまで長く書いてきたけど、それでも「リストに◯◯を入れるべき」と思う人はたくさんいると思う。そこで提案なんだけど、いっそ自分でリストを作るのはどうだろうか。私も遊んでないゲームがたくさんある。それを書いてくれたなら、喜んで読み行くよ。
*1:例外はSteamのレジェンドたち。ここは歴史的な功績をある程度尊重している。