農産物輸送ピンチ JR北海道 路線見直しに産地懸念

鉄道輸送するJAきたみらい産タマネギをコンテナに積み込む作業員(北海道訓子府町で)

貨物3線区で45万トン


 JR北海道が打ち出した路線の見直しに対し、農産物輸送を鉄道に頼る道内産地に懸念が広がっている。見直し対象の路線に、貨物列車の通る区間が含まれるためだ。全国に大量の農産物を送り出す北海道では、長距離輸送などに強みを持つ鉄道の利用が不可欠。トラックの運転手不足などで鉄道に代わる手段が見いだせない中、廃線などが決まれば輸送への影響は必至だ。(石川知世)

 JR北海道は、地方部の人口減などで乗客が減り、1996年度をピークに鉄道運輸収入が減少傾向にある。2017年度決算ではグループ全体の営業利益が416億円の赤字となった。

 同社は16年7月、このままでは赤字で修繕費などが確保できず、全道で鉄道の運行が難しくなると表明。乗客の少ない路線の地元自治体などに対し、廃線を含む対応の協議を求めたいとした。同年11月には協議の対象として「単独では維持困難」とする13線区を公表した。

 13線区のうち、貨物輸送に使われているのは、①石北線の新旭川~網走間②室蘭線の沼ノ端~岩見沢間③根室線の滝川~富良野間──の3線区。この3線区でタマネギ、ジャガイモ、米など45万トンを輸送する。いずれの線区でも、本州向けの便は農産物が貨物の4~7割を占める(ホクレン調べ)。

 同社はこの区間では鉄道輸送を維持したい考えで、国や道、地域の支援を求めている。ただ、国などの支援策はまだ示されておらず、今後の路線維持は不透明だ。

 鉄道が利用できなくなった場合、農産物輸送への影響は大きい。北海道の農産物は約7割が道外向けで、その大半を扱うホクレンはタマネギや米など年間75万~80万トンを鉄道で運ぶ。

 ホクレンは「本州と陸続きではない北海道にとって、鉄道貨物は重要な輸送手段。利用できなければ、農産物以外を扱う地元企業や、道外から届く日用品の輸送にも大きな影響がある」(物流部)と指摘する。
 

トラック運転手不足


 地元も困惑する。北海道中央部にあるJAふらのは、道外向け農産物の約7割(年間約5万8000トン)で鉄道を利用。大半はタマネギで、9月から翌年4月まで富良野~札幌間を1日1往復する。JAによると、この区間が利用できなければ札幌までトラックで運ぶことになり、新たに20人以上の運転手が必要となる。運転手不足で人員が十分確保できないことに加え、コスト上昇も懸念材料だ。

 JAは4月の総代会で、鉄道問題に関する決議を採択。市町村などと連携し路線維持を求める方針を確認した。決議後、地元商工会と共同で沿線5市町村の議会に要請。路線の存続に向けた対応を求めた。

 JAの植崎博行組合長は「農産物の安定供給ができなければ消費者の信頼を失い、ブランドが失墜する。鉄道に代わる輸送手段がない以上、路線維持は不可欠だ」と強調する。
 

国の支援策夏に方向性


 北海道東部のオホーツク地方も、タマネギを中心に農産物の道外輸送の約7割を鉄道に頼る。北見から石北線と室蘭線を通って青函トンネルに向かう貨物列車は、同地方でタマネギを扱う全JAが利用。「タマネギ列車」の愛称で親しまれる。過去に廃止が検討された時も、産地が必要性を訴えて1日1往復を確保してきた。

 ホクレンは「内陸部が多く、港が遠いため鉄道の重要性が高い」(北見支所)と説明。札幌から届く農産物出荷用段ボールの輸送をトラックから鉄道に切り替えるなど、利用を促進している。

 JAグループ北海道は輸送について検討を続け、情勢に応じて関係者に要請をしていきたい考え。JA北海道中央会は4月、石井啓一国土交通相らに、輸送力確保に向けた国の支援を初めて要請した。国はJR北海道の経営状況を踏まえ、今夏にも支援策の方向性をまとめたいとしている。

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