Twitterで人気を博し、そのまま週刊SPA!の連載までやっている猫組長… いろいろ界隈では言われる人ですが、何分この人は「本物」なので、ある意味で頭のいい暴力団関係者が足抜けをするときのひとつのモデルケースとして見ておくと面白いんじゃないかと思うんですよ。



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 で、本書で書かれているエピソードの何件かは、カタギど真ん中で仕事をしている私にとっても大事な(気の毒な)事案で良く知っているものなのですが、猫組長は本書で過不足なく、特定方面に問題のなさそうな範囲できちんと配慮して原稿にしています。知っている事項においてまったく嘘はないという意味で、私は猫組長の書いたこの本は信頼できると判断してお薦めすることにしました。

 なお、猫組長と私は共通の知り合いこそ多いようですが、面識はありません。たぶん、今後も会うことはないでしょう。でも、サイバー空間というのは面白いもので、本来なら絶対に同席してはならないような人間同士がTwitter上では楽しく絡んだり情報交換したりできてしまうという良さもまたあります。

 不動産取引のような王道だけでなく、パナマ文書や仮想通貨、コンテンツ投資など、ある程度お金をもって界隈をうろうろしていると、どうしてもややこしい案件に出くわすことがあります。私たちのようなヤクザではない人間からすると(まあ確かにファンドやったり金を持っていると声を掛けられやすいという事情はあるとはいえ)、なんでそんな面倒くさいことが起きるんだろう、どうしてそこで揉めるのだろうと思うことがあるのです。

 高い山を登るのに、ある方角から登っている私たちのルートと、猫組長のような「本物」が登っているルートとでは、同じ山なのに見える景色が違い、またお互いの姿が分からない、ということがあるわけなのですが、本書はそういう「国際金融とは何か」とか「お金が動くカラクリとはどの辺にあるのか」をこっそり教えてくれる内容でもあります。

 いま、デジタルハーツHD社の社長に収まってる玉塚元一がコンビニ大手・ローソン社経営者時代に5兆円を無利子で借り入れるというクソみたいなM資金に引っかかった話から、コインチェック社が犯人はヤス状態で顧客の預かり資産をごっそり溶かしたうえに問題のある勢力に資金が流れていく仕組みでなぜ仮想通貨が暴力団にとって大事なのかといったところまでそれなりの具体性をもって説明されているのが印象的です。

 そして、ドル支配とは何なのか、そのドル支配のルールの下で行われている国際金融の、裏をかいて儲けてきた猫組長の足取り、さらには犯罪収益・マネーロンダリングの仕組みや、仮想通貨のようにドルを介さない取引の貴重さといったところまできちんと網羅されているのはさすがです。

 難点があるとすると、まあ、本当にかっこ悪い話は書きづらいのだろうなあとは思います。相手のあることですから、このまま猫組長が20年近く物書きを続けていけば、スパイ小説の大御所のフレデリック・フォーサイスがそうであったように、いずれ自分の足跡を小説にすることもあるかもしれません。

 私個人としても、学びが多かったし興味の尽きない内容でした。ご関心のある方は是非どうぞ。

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