「特別警報」 命に関わる非常事態 正しく理解を

気象庁の「特別警報」
平成29年7月の「九州北部豪雨」でも発表されるなど、ことばをご存じの方も多いと思います。通常の警報と何が違うのか、どんなときに発表されるのか、発表されたときどう行動すればいいのか。社会部(災害担当)の森野周記者が詳しく解説します。

「特別警報」は現在の警報の基準をはるかに超えるような重大な災害が起こる危険性が非常に高いときに最大級の警戒を呼びかけるため気象庁が平成25年8月末に導入しました。

ひとことで言うと、 多くの命に関わる非常事態になっていること、深刻な状態になる可能性が高いことを端的に伝えるための情報です。

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これまでの大雨や台風の気象災害では、平成29年7月の「九州北部豪雨」や平成27年9月の茨城県の鬼怒川の堤防が決壊するなど大規模な浸水の被害が出た「関東・東北豪雨」などで発表されました。平成29年9月1日現在、7回にわたって発表されています。

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(左)九州北部豪雨 (右)関東・東北豪雨

なぜ、通常の「警報」だけではだめなのか

その背景には過去の大きな災害の際に「大雨警報」や「記録的短時間大雨情報」「土砂災害警戒情報」などの従来の防災情報を繰り返し発表したにも関わらず、避難や被害防止に結びつかなかったという教訓があります。

特に、平成23年、紀伊半島を襲った台風12号による豪雨では、降り始めからの雨量が1000ミリから2000ミリに達する記録的な大雨になりましたが、地元の自治体からは「雨量の数値だけを聞いてもどのくらい危険な状態なのかがわからなかった」という意見が相次ぎました。

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気象庁は、強い危機感をわかりやすく伝え、身を守ってもらうために、平成25年法律を改正して「特別警報」の新設を決めました。

「特別警報」は災害の種類ごとに発表されます。
気象分野では「大雨」と「大雪」、「暴風」、「暴風雪」、「波浪」、それに「高潮」の6種類です。「洪水」については、「氾濫危険情報」など、すでに河川ごとの情報があることなどを理由に導入が見送られています。

「50年に1度」で発表

「特別警報」が発表される「重大な災害の危険性が非常に高い」とはどのような状況なのでしょうか。

気象庁は、その地域で50年に1度あるかないかの現象が起きている場合、または発生が予想された場合に「特別警報」を発表することにしています。地域差はありますが、発表基準は「50年に1度」の大雨や暴風、波浪、暴風雪、それに高潮などです。

このうち、大雨は、これまでに発表された「九州北部豪雨」や「関東・東北豪雨」のほか、過去の災害にあてはめると該当するのは、平成12年の「東海豪雨」、平成16年の「福井豪雨」、平成23年の「台風による紀伊半島の豪雨」などです。

台風が発達して中心の気圧が極端に低くなった場合には接近する前に暴風や高波、高潮のおそれがあるして「特別警報」が発表されることもあります。過去の災害では、東海地方が高潮に襲われ、5000人を超える犠牲者が出た昭和34年の「伊勢湾台風」が該当します。

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伊勢湾台風

「特別警報」に該当する災害ではいずれも、広範囲で甚大な災害につながっています。全国的に見ても、1年に1度、あるかないかの極めて“まれ”な現象で、発表された場合は最大級の警戒が必要なのです。

「特別警報」2つの課題

私たちが避難などの行動につなげるために、大雨の特別警報には2つの大きな課題があることを知っておいてほしいと思います。

1つは重大な災害につながるような大雨でも発表されないケースがあることです。
例えば、39人の死者・行方不明者が出た平成25年の伊豆大島の土砂災害、77人が犠牲になった平成26年の広島市の土砂災害では、特別警報は発表されていません。

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(左)伊豆大島 (右)広島市

この理由は、特別警報は府県単位などある程度の広がりがある地域で大規模な災害のおそれがあるときに発表されるからです。重大な災害につながる大雨でも局地的な狭い範囲の場合は発表されないケースも多いのです。

もう1つの課題が平成29年の「九州北部豪雨」のようなケースです。
この豪雨で、気象庁は午後5時50分ごろに福岡県に、午後8時前に大分県に、大雨の特別警報をそれぞれ発表しましたが、実は、発表した時点ですでに各地で川の氾濫や浸水の被害が広がっていました。建物の周囲が浸水している状況で避難所などへ無理に移動することは大きな危険を伴います。

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九州北部豪雨

特別警報が発表された段階ですでに状況が悪化し危険な状態に陥っているケースもあるのです。

この2つの課題から言えることは、大雨の際に「特別警報」の発表を待っていては、身の安全を確実に守ることは難しいということです。

結論 「警報」から行動を

では、どうすればいいのか…。
それは「特別警報」を待つのではなく早めの避難を心がけることです。

災害が発生するような大雨では「特別警報」が出る前にまず「警報」が出ます。
さらに1時間の雨量が数年に1度程度しかないような大雨になっている場合には「記録的短時間大雨情報」が、土砂災害の危険性が非常に高くなっている場合は「土砂災害警戒情報」が、川の氾濫の危険性が高まっている場合は「氾濫危険情報」が出ます。また、各市町村はこうした情報などが出た段階で「避難指示」や「避難勧告」を発表します。

こうした情報が発表された段階から早めに安全な場所に避難しておくことが身を守る上で最も重要なのです。特に、お年寄りや障害のある方、またそうした人の身近にいる人はより早く行動することが大切で、「避難準備・高齢者等避難開始」の情報が出た段階で避難を開始する必要があります。

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「特別警報」があるからと言って通常の警報が軽いわけではありません。「まだ『特別』じゃないから、大丈夫」という誤解は非常に危険です。「特別警報」が発表される前に避難を完了しておくようにしてください。

しかし、どうしても避難が間に合わず特別警報が発表される状況になった場合、いま置かれている環境の中で「できる限り安全を確保する」ことが必要となります。周りを確認して、外へ避難ができる状況であれば直ちに避難所などの安全な場所へ避難してください。

大雨で浸水が始まっている場合は、無理に外に出るのはむしろ危険です。近くの頑丈な建物の2階以上に上がることで助かる場合があります。

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土砂災害の危険性がある地域では家の上の階のできるだけ斜面から離れた部屋に移動することが有効な場合もあります。

命を守るために、さらに大切なことがあります。

事前の準備です。自分の住む場所などがどのような災害の危険があるのか、どこに安全な避難場所があるのかを日ごろから確認しておくと、いざというときの行動につながります。

こうした情報は、地元の自治体の防災マップなどで確認できます。その上で、台風や大雨などの際には、テレビやラジオ、インターネットなどで「警報」など最新の情報を確認し、避難につなげてください。

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災害から命を守るうえで、「特別警報」は万能ではなく、防災関係者の間では、「最後の一押し」と呼ぶ人もいます。大事なのは、「最後の一押し」の前に、安全を確保しておくことです。どのような情報が発表されれば危険が迫っているのか、改めて確認し、早めの避難や行動を心がけてほしいと思います。

森野周
社会部記者 災害担当
森野周