http://www.city.kobe.lg.jp/information/public/online/gorogorokobe3/180704.html（視線）
http://www.city.kobe.lg.jp/information/public/online/gorogorokobe2/171018.html（「母親」を半分引き受ける）
どちらも自分の書いた文章だけれど、こういう時、育児を担う人間の主語をどう書くか迷う。
2つのリンクのうち、上の文章はつい最近書いたもので、わざとこのように「母親」としてある。【A】は原文。
【A】
ショッピングモールや駅や公園などの公共空間で、人目をはばかる事なく大きな声で子供を怒っているお母さんを見かける事がある。そんな時、子供がかわいそうだと非難する気持ちよりも先に、感情が決壊してしまった母親への同情が先に立ってしまい、彼女に対して、今がふんばりどころやからなんとかおだやかに、深呼吸してがんばろうや、などと心の中で声をかけずにはいられない。
理屈だけで言うならば、意のままにならない自分よりも小さな存在に対し声を荒げても仕方がない。しかしそんな事は当人が誰よりもわかっているはずで、ひとりの弱い人間でしかない私たちは時として、自分の感情すらコントロール出来なくなる事がある。育児はどっぷりつかればつかるほど闇と隣り合わせだ。余裕を失ったあのお母さんの追い詰められ方は、我が事のようにきついなと胸が痛む。
ただ、これって「育児を担う性を固定化していないか」という問題があって、配慮して書くならこういう風に変えた方がいいだろう。
【B】
ショッピングモールや駅や公園などの公共空間で、人目をはばかる事なく大きな声で子供を怒っている親御さんを見かける事がある。そんな時、子供がかわいそうだと非難する気持ちよりも先に、感情が決壊してしまった母親（父親）への同情が先に立ってしまい、彼（彼女）に対して、今がふんばりどころやからなんとかおだやかに、深呼吸してがんばろうや、などと心の中で声をかけずにはいられない。
理屈だけで言うならば、意のままにならない自分よりも小さな存在に対し声を荒げても仕方がない。しかしそんな事は当人が誰よりもわかっているはずで、ひとりの弱い人間でしかない私たちは時として、自分の感情すらコントロール出来なくなる事がある。育児はどっぷりつかればつかるほど闇と隣り合わせだ。余裕を失ったあのお父さん（お母さん）の追い詰められ方は、我が事のようにきついなと胸が痛む。
僕は考え方の部分では【B】に近いんだけれど、いや【B】そのものと言ってもいいんだけれど、育児の現場から見ると【B】で書いても綺麗事にしかならなくて、【A】で書かないとうそくさいんだよな。ただ、ここはすごく悩む部分。【A】だと、この段落は結局女（母親）の問題でしかなくなってしまうから。読む人によっては、そうとるでしょ。
育児にやり方の優劣と、性別の話は持ち込むべきではない。たとえば仕事しながら保育園に入れるやり方と、どちらかが専業となり家で見るやり方には優劣はない。そして仮に夫婦が【男・男】であっても【女・女】であっても、他の場合（シェアハウスで皆で子を育てるとか）であったって、何の問題もない。
夫婦が【男・女】の組み合わせで、男は働いて女は家で家事育児。自分はこの役割分担をまったく否定しないけれど、2018年の今になってそれを固定化しようとする考えには非常に抵抗があり、今の時代、それは単にひとつの形でしかない。
……という自分の考えでいくと、【B】で書かないと、育児を担う性を固定化するだけになってしまうなあと。
これはいつも迷うんだけど。結局、最終的には現場から見た風景を優先して【A】を選択している。
今の時代は、本当に男も女もなく責任持って家事育児を担っている人がそれなりの数いるので、そういう人たちにとっては自分の記事で母親母親と連呼されるのは、物足りないというか、ムカつく部分はあるんだろうな、と想像している。
こういう記事が、広く読まれれば読まれるほど（それは良いことなのだけれど）、結果として自分は育児を主体的に担う性を固定化（育児=母親）してしまっているのではないか、固定化する考え方に、加担してしまっているのではないか。それでも【A】を選択している。そこがジレンマだ。
考え方をベースにして書くならば【B】でいきたいんだけれど、現場をベースにして書くならば【A】でしか書けなくて。でもそうすると、やっぱりほら、町なかで大声で怒ってるのは母親（女）の問題じゃん、みたいになってしまう。けど「母親（父親）」とか書くとウソくせえんだよな、という。
