今ではSMチェーンやローカル小売店にも商品が並ぶ
ヤマモリタイランド製品の販売を担うYTCの売上げも順調だ。現在の売上構成比は日本食レストランが45%、加工工場が45%、残りはリテール部門。
リテールは当初、日本人客が多い一部のスーパーマーケット(SM)の扱いに限定されていたが、今ではSMチェーンのトップスや会員制ホールセールクラブのマクロなど、ローカルの小売店にもヤマモリ製品が並んでいる。
売れ筋は「ごまドレッシング」。バンコクを中心にヘルシー志向が高まりつつあるタイでは、野菜サラダの消費が増えているからだ。220ミリリットル、500ミリリットル、1リットルと3タイプある中で一番よく出るのは1リットル180バーツ(約630円)。
1リットルという大容量が売れるのは、大家族が多く、レストランユースはもちろんのこと、1回当たりの消費量も多いため。ドレッシングの伸び代を物語る好材料だ。
「タイ人は、甘さや辛さなどインパクトのある味を好みます。塩辛い味が苦手で、しょうゆベースのドレッシングよりもコクのあるシーザーやサウザンアイランドドレッシングの方がよく売れるマーケット。その点、『ごまドレッシング』は独特のコクが受けているのでしょう。しょうゆベースもタイ人が大好きなワサビをアレンジしたワサビドレッシングのポテンシャルは高い。またヘルシー志向の中、低カロリーや減塩タイプも可能性がある。タイ人の志向を踏まえながらドレッシングのラインアップを拡充していく計画です」
課題は「タイ人の好みに合わせると日本の味が崩れる」
だが、問題もないではない。タイ国内で売上げを伸ばすにはドメスティックにタイ人が好む味を増やすのが一番だが、あまりにタイ人の好みに迎合してしまうと日本の味が崩れてしまう。
「すき焼きのたれを例に挙げると、タイ人は砂糖をたっぷりと入れたかなり甘い味付けを好みます。しかし、それではもうすき焼きではなくなる。日本の味とタイ人の嗜好の両方のバランスをどう取るかは難しい問題。ただ、日本を旅行するタイ人観光客が増え、日本での食体験を持つタイ人も多くなった。以前はだしの味を苦手にするタイ人が目立ちましたが、今では鰹節からとっただしをしっかりと効かせた3倍つゆがタイ人に高く評価されています。時代とともにタイ人の好みも変わっていくのかもしれません」
リテールでは、BigCやテスコロータスのようなタイ人の生活を支えている大型量販店の開拓も進めている。マーケットの伸び代は大きいはずだ。
とはいえ、タイは自炊をしない家庭が多いため、中心となるのはやはり加工工場やレストランなどのBtoB。先のJETROの調査では、バンコクの日本食レストラン数は2009年の調査開始以来、初めて前年割れを記録。2017年度の店舗数は1739店舗、前年度に比べて0.8%減少している。過当競争が原因と思われるが、地方では店舗数が伸びており、日本食の人気自体に衰えはない。
バンコク中心だった日本食ブームに起こっている変化
日本食ブームはバンコク中心からタイ全土に波及しつつある。つまりは、本格的な普及段階に入ったともいえるのだ。
「現在、トータルで約3000店の日本食レストランに製品を納めていますが、地方での伸び率は非常に高い。しょうゆだけでなく、しょうゆベースの照り焼きのたれや焼き肉のたれ、麺つゆも好調です。工場ではしょうゆ加工品の伸び率が高く、調味料の需要も増えてきました」
家ではあまり料理は作らないが、気が付けば外食先で知らず知らずにヤマモリの味になじんでいる。そんなタイ人消費者が着々と増えていることは間違いない。