頭金に入れるより外貨建て保険で保障と分散投資!の落とし穴
どうも千日です。最近、私の知人が家を買うというのでFPに相談したところ、すごくお得な方法を教えてもらったらしいです。こんな風に言われたらしいです。
当初用意できるお金を全額頭金に回すより、少しでも運用しておいた方がメリットがありますよ!
頭金として入れる金額で外貨建て保険に入ってはどうですか?
外貨建て保険とは、簡単に言えば、保険料を外貨で運用して増やしてくれる商品なのですが、そのFPさんが言うことには、その利回りが驚くほど高いです。
例えば20年後には150%になることが保障されてたりするんだ、オーストラリアドルってすごいな!と興奮ぎみに言ってました。
大事なことですので最初に結論を言っておきましょう。
利回りが高いのはあくまで外貨で運用した場合であって、円でもらえるわけではありません。
20年後の満期保険金はオーストラリアドルで受け取り、日本円に換算して受け取ります。その時にオーストラリアドルに対する日本円が幾らになっているのか誰も分かりませんよ。
- つまり外貨建て保険は元本割れのリスクがある投資なのです。
それと、銀行が取る為替換算などの各種手数料が非常に高額になっていて、金融庁から平成27事務年度 金融レポートについて:金融庁でも数年前から問題視されている商品なのです。
- つまり外貨建て保険は客が損をしても銀行は高い手数料で儲けられる金融商品(売った時点で儲けが確定)なのです。
何百万円ものお金を投じて、そんなギャンブルをやらされている自覚が無いというのは、恐ろしいです。
金融商品に対するリテラシーが十分でなければ会計士でも赤子の手をひねるようにやられてしまうのです。
騙されないために基本的な金融リテラシーを持つ
利用者にとって明らかに有利ではない(と少なくとも金融庁が思っている)外貨建て保険ですが、けっこう売れてるらしいです。それは銀行員やFPが必死で売ろうとしているからです。
銀行の担当者や保険を売りたいFPが繰り出す「ご提案」や「ご説明」を素人が批判的に検討して却下するということは至難の業です。
せっかくお得な方法を教えてやってるのにバカじゃないのか?コイツ
こんな風に思われてるんじゃないのか?と思っちゃうんですよね、分かります、彼らは言外にそういうムードをにおわせて話しますから。
しかし、金融の基本のキが分かっていれば、彼らの言ってることが明らかにヘンだということが分かります。
金利と為替レートの相関関係(初心者向け)
まず、私の知人は外貨建ての利率を見て期待利回りが高いと誤解してしまったのですが、この誤解が一番多いと思います。
外国為替市場では為替レートと金利には以下の相関関係があります。
- 為替レートが自国通貨高となった場合→物価低下で金利が下がる。
- 為替レートが自国通貨安となった場合→物価上昇で金利が上がる。
中心に仕切りのある桶に両方水を満たし、それをシーソーの上に載せた状態をイメージしてください。水は世界の富の量で一定であるとします。
そして簡単のために、通貨は自国通貨=円と他国通貨=ドルの二つしか無いとしますね。
- 円には円金利=円で投資した際の利回りがあり、
- ドルにはドル金利=ドルで投資した際の利回りがある。
という状態です。
自国通貨高となった場合の資金の動き
ここから例えば円高(自国通貨高)となったときのことを考えます。そうすると、資金はより有利な方へ移動していくわけです。シーソーは円の方に傾き、水が円の方へ流れていきます。
投資家はドルを売り、円を買おうとするんですね。
円高になると、海外からの輸入品が安く買えます。例えば1ドルのものは1ドル100円であれば100円で買えますが、1ドル80円と円高になれば80円で買えることになります。円の価値が上がったので少ない円で購入できるのですね、これを円高と言います。
日本に輸入されるものの円表示の値段が安くなります。
原油や天然ガス、食料品などの輸入品の価格が下がれば、輸入品を原材料にしている商品の値段も下がる。例えば和牛でもエサの穀物が輸入品であれば値段が下がるのです。国内の物価は低下しますね。
物価が下がると同じものを買うのに必要なお金は減ります。つまり国内でお金が余るようになってくるのです。
自国通貨高になると金利が下がる仕組み
- 余った国内の円は銀行の預金になったり、安全資産の国債を買ったりして資産運用するようになります。
- また海外の投資家も円高になると、円を買い、円建ての預金や資産運用が増加します。
資産運用が増えると債券の価格が上がり、利回りが下がるのです。
- 債券の価格が上昇すると金利が下落する
- 債券の価格が下落すると金利は上昇する
この仕組みを説明しましょう。
金利とは利回りを言います。利回りとは投資した元本に対して投資の成果として得られる利益が年に何パーセントかという割合です。
- 10年国債
- 額面金額100円
- 券面利率2.0%
上記の前提で3つのパターンで解説します。小学校の算数の知識で理解できます。
国債の相場が100円の場合
券面利率は2%ですから、100円に対して毎年2円の利息が貰えます。10年後の満期には100円の元本が返ってきます。
100円投資して毎年2円の利益ですから、運用利回りは年2%です。
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国債の相場が95円の場合
額面100円の国債が95円に値下がりしている時に買えば、毎年2円の利息を貰える上に満期で額面どおり100円で償還されます。購入価格との差額である5円が値上り(キャピタルゲイン)として手に入ります。
95円投資して毎年2.5円の利益ですから、2.5÷95で運用利回りは2.6%です。
国債の相場が105円の場合
額面100円の国債が105円に値上がりしている時に買えば、毎年2円の利息を貰えますけど、満期で返って来るのは額面の100円だけです。購入価格との差額であるマイナス5円を値下がり(キャピタルロス)として被ることになります。
105円投資して毎年1.5円の利益ですから、1.5÷105で運用利回りは1.4%です。
債券の価格と利回りは逆方向に動いていますよね。
-
債券価格95円の利回りは2.6%
-
債券価格100円の利回りは2%
- 債券価格105円の利回りは1.4%
つまり、為替レートで自国通貨高となると、債券価格は上がり、それによって金利は下がるという相関関係にあるのです。
あくまで理論的に、ですのでそういうパターンに入らないケースもありますけど、概ねこのように動くとされています。
自国通貨安となったときは逆の資金の動きになる
円安ドル高となった場合は、資金はドルの方へ流れていきます。海外の投資家はドルをそのまま保有し、ドルで預金を持っている状態です。
そして国内では、海外からの輸入品の価格が上昇することになりますね。
例えば1ドルのものは1ドル100円であれば100円で買えますが、1ドル120円と円安になれば120円に値上がりしてしまいます。
原油や天然ガス、食料品など輸入品の価格が上がると、輸入品を原材料にしている商品の値段が上がるので、国内の物価は上昇します。
物価が上昇すると、お金は余らなくなります。円の定期預金を解約してお金を使います。日本国債を売却して、ドルに投資するようになります。
つまり、債券の価格が下がり、利回り(金利)は上がるのですね。裏と表です。単純に逆に振れているということになります。
逆に2国間の金利差が為替に影響を与えることもある
このシーソーは行き過ぎて水がこぼれてしまうということが無いようになっています。
円高になって円の金利が下がり、ドルの金利が上がるとドルの方が利回りが良いということで、こんどは円を売ってドルに投資しようとしますよね。
資金が金利の低い国から金利の高い国へ流れます。
ということは金利の低い国は自国通貨安となり、金利の高い国は自国通貨高となるんですね。
このように行き過ぎると、逆の方向へと動き、バランスが保たれる、シーソーゲームになっているのです。
外貨で金利が高いということはどういうことか?【実践】
では、今現在、外貨建て保険で金利が高いということはどういうことなんでしょうか?
為替レートとしては低いということですね。
つまり、為替レートとしては損な外貨にセッセと投資しているということなのです。
そんな外貨建て保険をめぐっては国民生活センターにこんな相談が寄せられています。
「銀行窓口で500万円を定期預金にするつもりだったが、保険商品を勧誘され、内容もよくわからないまま出された書面に署名、捺印。帰宅後にそれが元本リスクのある投資と知り、クーリング・オフの手続きを踏んだ。ところが解約するとドルで返金され、すぐに円に換算したが、為替差損と手数料分の損失を差し引かれて500万円全額が戻ってこなかった。納得できない。」
(70代男性)
外貨の「金利が高い」ということは為替レートとしては逆に下がっていて、それを買うということは「逆張り」になっているということです。
なのですぐに解約すると為替差損になってしまうし、加えて悪名高い投信よりも高額な手数料で損をするというカラクリです。
外貨での利率が高いといっても、それは米ドルや豪ドルなど、たっぷり為替リスクのある外貨での利率でしょ?円の利回りとは違いますよね。
それに外貨での利回りを求めるなら、もっといい商品が他にあるんじゃないですか?
このように言えば外貨建て保険を勧めてくる金融機関のセールスやFPを黙らせることが出来るでしょう。
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間違っても外貨建て保険なんかを買ってはいけない!
こうした外貨建て保険のような、本来顧客の利益にならない(銀行だけ儲かる)商品のセールストークには以下の特徴があります。
- 不安を煽る(これでは老後資金が足らなくなるなど)
- 錯覚を最大限に利用する(外貨は利回りが高いという錯覚)
- ごく一部のメリットを強調(保険料控除などは確定拠出年金でも受けられるので外貨建て保険でなくてもいい)
- 耳障りの良い言葉の印象づけ(分散投資などと言うが実態はただリスクを増やしている)
- 複数要素の強調(保険という保障を得ながら外貨に分散投資などと言うが保険金は外貨だし、日本に住む限り分散じゃなく為替リスクを増やしているだけ)
- デメリットを話題にしない(高い手数料を取られる)
仮にその相手が自分の親ならばけして勧めないような商品を「営業ノルマ」だったり「生活のため」に、勧めてきているのです。進んで騙されてやる必要は無いと思いますよ。
ある銀行の支店担当者の話では、販売する商品によってインセンティブのポイントが割り振られているのですが、住宅ローンと外貨建て保険では得られるポイントのケタが一つ違うらしいです。
日銀のマイナス金利政策が続くなかで銀行の収益は圧迫されています。保険の窓口販売はカードローンと並んで銀行の重要な収入源になっているのです。
中でも、外貨建て保険商品の収益性が高いからなのでしょうが、その収益性の高さは利用者の損失によっている、というのがミソなんですよ。
悪いことは言わないから、そんなの買うの(売るの)止めときなさいよ。
以上、千日のブログでした。
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《あとがき》
金融庁が投信を販売する銀行に実施した調査で、投資信託を保有する個人投資家の半数近くが損失を抱えているという実態が明らかになったそうです。
過度な分配金や短期の売買で十分な運用収益が得られず、長期の資産形成に結びついていないそうです。
早いハナシが、銀行や証券会社が手数料のために顧客をカモにしている実態が数字として表れているということなんですよね。
基本的な金融リテラシーをもっておかないと、悪い人にお金を取られてしまうんです。
今週のお題「2018年上半期」
2018年7月6日
千日太郎おすすめ住宅ローン
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