日本ではレトルトでタイの伝統的な味を紹介

 タイで「日本の味」を広める一方で、ヤマモリは日本で「タイの味」の普及に力を入れている。

「私たちは縁あってタイでビジネスすることになりました。せっかくのその縁を生かし、今度はタイの伝統的な味をぜひ日本人にも食べてもらいたいと考え、タイ料理のレトルト製品の販売を日本で始めました。ただし日本人の舌に合う味付けにはしていません。タイの伝統的なレシピにこだわっています」

2000年の発売当初は流通側の理解が得られなかった

「レッドカレー」もリピーターが多い商品。ヤマモリのレトルトカレーは女性ファンが多いのが特徴だ。

 第一弾は2000年に発売したタイカレー(グリーン・レッド・イエロー)。今やすっかりポピュラーな製品だが、発売当初は流通側の理解が得られず、チャネル開拓が進まなかったという。

 小売店のバイヤーはほとんどが男性だ。男性はタイ料理のようなエスニックな味を苦手とする保守的な舌の持ち主が多いため、「タイカレー」といっても反応は薄い。タイ料理を一度も口にした経験がないという日本人は現在では少数派だが、20年前の状況は全く違った。

 しかも、他のレトルトカレーと比べるとヤマモリのタイカレーの価格は高い(現在の希望小売価格は330円)。見知らぬ味で高価格。2つのハンデを背負うヤマモリが見出した突破口が、「首都圏」と「女性」だ。

「東京には当時からタイレストランがたくさんあったため、地方と比べるとタイ料理の知識や理解、体験がある方が多かった。また、女性はタイ料理への関心が高く、紀ノ国屋、成城石井さんのような高級なお店から徐々にヤマモリのタイカレーが広がり始めました。今でも弊社のタイフードのお客さまの7割は女性です」

 成城石井にはヤマモリ製品がほぼフルラインでそろっている。国内外の上質な味をセレクトし、女性客が多く、首都圏を中心に店舗展開している成城石井はヤマモリのタイカレーの販路としてはこれ以上ない舞台だったといえるだろう。

ガパオとは、バジルとひき肉を炒めた料理のこと。日本でも人気上昇中だが、ヤマモリの貢献度も高い。
タイ南部の味を再現した「タイプリック」。ヤマモリのレトルトタイカレーの中では一番の新顔。

タイ料理の啓蒙活動やPRにも熱心に取り組む

 ヤマモリはタイ料理の啓蒙活動やPRにも熱心だ。毎年5月に代々木公園で開催される「タイフェスティバル」の前身、「タイフードフェスティバル」が初めて開催された2000年から参加を果たし、以後、欠かすことなく出展を続けている。

 代々木公園の「タイフードフェスティバル」の動員数は今や40万人。開催場所は増え、大阪や名古屋でも大成功を収めている。ヤマモリは日本におけるタイ料理ブームの仕掛け人の一人、といっても過言ではない。

 タイ料理の普及を背景に、ヤマモリは2004年にはタイにサイアムヤマモリを設立した。グリーンカレーやトムヤムクンなどレトルトを中心にした日本向けタイフード製品を生産する工場だ。

「タイのフレッシュな鶏肉を使い、現地で生産したハーブを使っています。タイに生産拠点があるからこそ可能な味を追求する生産拠点です」