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ノア・スミス「ノア・スミス流日本旅行ガイド:前編」(2018年6月30日)

[Noah Smith, “Noah Smith’s Japan Travel Guide,” Noahpinion, June 30, 2018]

日本旅行に出かけるなら,いまが絶好のタイミングだ.日本はほんとうに海外から訪れやすくなった.これも,アベノミクス,円安,そして目前に迫った東京オリンピックのおかげだ.それに,新テクノロジーのおかげで日本のあちこちを回るのもイケてるものを見つけるのもかんたんになった.日本はいま海外からの旅行ブームにわきたっている.これがいつまで続くかはなんちゃらのみぞ知るというやつだ.ここはひとつ日本に行ってみるか,という人もいるだろう.世界に乗り出して日本に旅行してみよう.

ともあれ,長らく日本旅行のコツを教えてくれないかというご要望がよせられている.そこで,いちいちご要望のお便りが届くたびにおすすめリストを書くのは無しにして,ひとつブログ記事にしておこうと思った.というわけで:ノア・スミス流,短縮版・日本旅行ガイドをお届けしよう.

このガイドは,「都市日本体験」にひどく偏っている.いかにも観光客向けのガイドや歴史好き向けのガイドにありがちなおすすめの寺社だとか,アウトドア派向けのスキーやハイキングのおすすめは手薄になっている.ぼくの経験だと,日本でなにより独特なのは都市だ.それに,はじめての日本旅行で「都市彷徨」をやってみてあれこれの見ものに遭遇したひとたちが誰よりも日本を楽しむ傾向があるように思う.

あと,このガイドは日本語を流暢に話さない人たちが1回目か2回目にやってみるといいおすすめに偏っている.だから,知る人ぞ知るレストランだとか通好みのネタだとかのたぐいはあまり載せていない――つまり,日本にずっと住んでる人たちやしょっちゅう日本を訪れてる人たちから見ると,きっとすごく「初級編」に感じられるガイドだろう.日本に住んでたりしょっちゅう日本を訪れたりしていて,アングラなイケてることや隠れ家的な通好みのレストランをお望みの人たちにしてみれば「もっといいネタ出せよ!」とせっついてくれてけっこう.というか,それならぼくにいいネタを教えてくれるとありがたい.

日本に行く時期

日本を訪れる時期で一番人気なのは3月下旬〜4月上旬,桜の見頃の時期だ(「花見」っていうんだよ).警告:この時期はめちゃくちゃ混み合ってて,しかも費用もかさみやすい.

7月〜8月もいい時期だ――あちこちでやってる花火を見たり,浴衣姿の人たちでにぎわう小さな伝統的お祭りに行ってみるといい.すごく蒸し暑いけどね.11月も日本にいくのにおすすめの時期だ.春や夏よりもずっと安くすむ.

あちこち見て回る

外国であちこちをうろつくのはちょっとばかり敷居が高い.でも,これから紹介するちょっとしたコツをおさえてもらえばきっとなにも困らないはずだ.日本語をひとことも話せなくてもだいじょうぶ(とはいえ,日本語は勉強してみた方がいい.かっこいい言語だよ!)

空の旅:格安の飛行機便はちょくちょく飛んでる.とにかく探しまわれば見つかる.とはいえ,ロサンゼルスからの便なら,ひとつためしてみるといい小技がある.ロサンゼルス〜成田(東京)の往復便を予約して,さらに,それと別途にロサンゼルスから最寄り空港への便を予約して,どれほどの節約になるかその目で確かめてみてほしい.

宿泊:少なくとも最近までは,日本国内で Aribnb はすばらしくうまく機能してきた.アメリカとちがって,多くの Airbnb オーナーは自分が住んでいる持ち家を宿泊用に貸し出している人たちではなくて,業者たちだ.おかげで,日本のホテルに泊まるよりもずっと格安の宿泊費で設備の整った日本式アパートに滞在できる.2人以上向けの宿はとくに安上がりなうえに,広々と使える.ただ,日本はつい先ごろ Airbnb の規制を強化したばかりで,キャンセルが大量発生した件もあった.キャンセル騒ぎはあれ一回きりの出来事ですむはずだけど,それでも旅行の際には Airbnb がどれくらい利用できるものなのか確認をしておいた方がよさそうだ.Airbnb で宿泊先が見つけられなかったときには,Solare みたいな安宿に泊まる手がある.

ポケットWiFi:すごく便利.こいつがあれば日本のどこにいても wifi を利用できる.列車内でもいける.ということは,国際ローミングに(あるいは音声通話アプリを使ってる人の場合なら電話代に)お金を払わなくても携帯をまともに機能させられるってことだ.しかも,ノートPC の wifi 接続もこれでまかなえる.ポケット wifi は Global Advanced Communications から借りられる.空港に到着したらその場で入手して,出国する際には封筒に入れてそのへんの郵便ポストに放り込んでしまえばおしまいだ.

グーグルマップ: グーグルマップは日本国内ですばらしく機能する.日本の街路には名前が付いてない場合が多いので,しばらくは勝手もわからないままウロウロしてしまうかもしれない…けど,グーグルマップを使えば話は別だ.いつでも目的地に迷わず直行できる.日本語で書かれた住所をグーグルマップにコピー & ペーストすればうまく処理してくれる.

ジャパン・レール・パス: これがあれば JR のどこの駅でも好きに乗り降りできる.対象には新幹線(特急列車)も含まれる.日本の都市間を移動するならたいてい新幹線が最速だ.それに,このパスがあれば都市内でも JR の電車に乗り降りできる.とくに東京だとこれが便利だ.ジャパン・レール・パスには「1週間有効」「2週間有効」「3週間有効」の3種類がある.日本各地をめぐり歩くつもりなら,これですごく節約できる.ただし,ずっと東京に滞在する予定だったり,隣接する都市間だけを移動する予定なら,それほどお得じゃないかもしれない.ジャパン・レール・パスを旅行前に自国で買っておくなら認証された窓口や旅行代理店で購入できる.日本に到着してから買うなら2019年3月31日までなら空港で購入できる.

Suica/Pasmoカード: Suica も Pasmo も名前がちがうだけで同じカードだ.チャージ方式の RFID カードで,日本各地の JR でも地下鉄でもその他の私鉄でも使える.唯一使えないのが新幹線とごく一部の特急車両.めちゃくちゃ便利だ.駅の券売機で入手できる.チャージも券売機でできる.Suica/Pasmoカードはコンビニでの買い物にも使えるし,自販機で飲み物を買ったりスーパーで買い物をしたりするときにもこれですませられる.とにかく便利.

空港から: 東京へ飛行機で旅する場合は,〔成田から〕京成スーパーライナーに乗るといい.ただし,JRパスを持っているなら話は別で,成田エクスプレスに乗ること.無料だからだ.大阪着の便を利用した場合は,南海空港線を利用するといい.

地域内の移動:たいていは電車を利用することになる.タクシーはあちこちで見かけるけれど,乗ればとても高くついてしまう.Uber はほぼ存在しないも同然だ.電車は深夜0時から午前1時までの間に運行が終わってしまう.立ち往生しないように注意しよう.おのぞみなら大阪では自転車を買う手もある.だいたい100ドルだ.

決済手段:日本では現金が必要になるので,手元にもっておくこと.VISAカードが使えるお店やレストランはたくさんある.Suica/Pasmoカードもいろんな日用品店やコンビニで使える.それでもやっぱり現金は必須だ.国際ATMから現金を引き出すには,そこらじゅうに店舗があるセブンイレブンの ATM を利用するか,Prestia という ATM チェーンを利用するといい.現金が不足してしまって最寄りのセブンイレブンや Prestia を探すときにもグーグルマップが助けになってくれる.

どこを見に行こうか

日本にはクールな場所がいっぱいありすぎて,ほんの一部だけを紹介するのすら無理だ.それに,どこかおすすめの場所を紹介して,読者が実際に訪れたとしても,人それぞれで体験がまるっきりちがってくる.そこで,あちこちぶらぶらしてみたり,現地に暮らしている友人に尋ねてみたり,ネットで調べてみたりするのを提案しよう.とはいえ,もしかしてやっぱりどこかおすすめの場所を聞きたいという人がいるかもしれないので,短いリストを用意した.

東京

みんなが訪ねる場所の多くは,きっと東京の西部にある.東京西部はよく知られてる「クールな」地区が集中してる地域だ:渋谷,新宿,原宿,下北沢,などなど.そこで,西東京に近くてすぐに行ける場所に宿をとるのをおすすめする.たいていは JR 山の手線(環状線)であちこち移動することになるはずだ.

渋谷:西洋で日本のニュースが流れるときにおきまりのように映されるネオンだらけの交差点は思い浮かべられるかな? あれが渋谷交差点だ.ほんとの名称はハチ公広場という.(かつてはタイムズスクエアにまさる場所だったけど,最近になってタイムズスクエアのデザインが一新されてブレードランナー風になって逆転した.) ハチ公広場は待ち合わせや人々の観察にうってつけの場所だ.ここを出発点に渋谷探索に乗り出すのにも向いている.渋谷には食事を楽しめる場所が山ほどあるし,巨大店舗やモール,小さなしゃれたバーや先端的なダンスクラブもたくさんある.あと,なぜかスタートアップ企業もここにたくさんオフィスを構えてる.とにかくうろついてみてほしい.きっとみんながおのぞみの「都市日本体験」の真髄はここにある.

原宿:おもしろい子たちが集まる場所だ.「だった」かもしれない.いまや旅行客に占領されているからだ.それでも,〔古着屋の〕Dog6%DOKIDOKI みたいなクールなブティックならいまもあるし,@TokyoFashion の Twitter アカウントで宣伝されてるタイプのファッションキッドも見られる.竹下通りにごった返してる人の波と悪戦苦闘してもいいし,それほど混雑してない裏原宿をぶらぶらしてみてもいい.絶対に外せないのは,東京デザインフェスタ・ギャラリーだ.無料のアートギャラリーで,カフェも併設されている.ここでは数え切れないほどたくさんの面白い人たちに出会った.行き交う人たちはかなり国際色ゆたかだ.

代々木公園:東京でセントラルパークやゴールデンゲートパークに相当する公園.JR線で原宿駅のすぐ隣にある.公園には明治神宮という巨大な美しい古くからの神社があるほか,人々がよくピクニックに利用する広大なおでかけスポットでもある.木で舗装されたジョギング/自転車道もある.3月下旬~4月上旬の花見の季節はとくにすばらしい.週末なら最高だ.公園の南端にはクールな円形劇場があって週末には各種のイベントが催されている〔南端にあるのは野外音楽堂だけど円形劇場ではない気がする;もっと南東に行くと青山円形劇場がある〕.そこから歩き続けていけば渋谷にたどり着く.

新宿:ネオンが輝く迷宮都市・新宿も「都市日本体験」の真髄だ.JR新宿駅の東口から出たら,風俗街の歌舞伎町にたどり着く.歌舞伎町ならロボットレストランに行ってもいい(警告:アホな場所だよ).ゴールデン街のバーにぶらりと入るもよし,日本でいちばん有名なゲイ地区の「二丁目」を探索するもよし,あるいはいっそ,かろうじて残っているわずかなヤクザたちを見に行ってもいい.しかるべきもんじゃ焼き屋に入るとお目にかかれる.べつにただぶらぶらするだけでもいい.ほんとだよ.

秋葉原:「オタク都市」で知られているけれど,たぶん東京の他の地域とそれほど大差なく思えるはずだ.いくつかオタク向け店舗をのぞいて回ったりゲームセンターで遊んでみたり(タイトーステーションがぼくのお気に入りのゲーセンだ),メイドカフェに入ってみたりしてもいい(警告:行ってなにをするって場所でもないし,まあまあ面白いけどみすぼらしい上にぼったくり価格だ).ただし,ガチのコスプレをきめた人たちがうじゃうじゃいるなんて期待しないこと(それならコミケか同類の即売会に行くこと).

下北沢:オシャレさんの集まる場所に行きたいなら,最初の東京旅行でいちばん向いてるのがきっとここだ.ジェイク・エーデルスタインはここに住んでるので,かならず長ドスを携行すること.
(註:ジョークだからね.日本で刀剣は違法で取り締まりも厳しい.)

お台場:巨大ゲームセンター.あと近くに小さなビーチもあって夏場はよくパーティをやってる.モノレールに乗ると東京と湾岸のいい景色が見られる(ちなみに,「モノレール」と言いつつほんとはモノレールじゃない.実におもしろい.)

池袋:原宿も渋谷も観光客でごった返すようになって,おもしろい子たちがおでかけしておもしろいことをする場所はここになっている.もちろん,いまこうしてガイドを読んでるみなさんが今度は池袋にごったがえすようになり,おもしろい子たちはまたどこか他の場所を見つけるわけだ.おのれ一般均衡.

新橋:英語表記だと “Shimbashi” とも “Shinbashi” とも書く.かの有名な日本の「サラリマン」たちと仕事終わりに会っておしゃべりしてみたいならここに行くといい.まあ,新橋でなくて有楽町でもかまわない.ていうか神田でもいい.いや,べつに池袋でも同じか.クソァ! 東京はサラリマンまみれじゃい.

代官山:めちゃクールで現代的な「ニューアーバニスト」スタイルの小さな地区.渋谷の隣にある.

浅草:ここにもクールな神社があって,神社周辺は古風な町並みが広がる.川沿いの散歩もおすすめ.

六本木:英語話者といっしょに出かけるときや,あやしい人に会いたいとき,あるいは国際色の濃いクラブに行きたいときには,ここに行くといい.森タワーの最上階に登れば東京のパノラマ風景を拝める.森タワーにはすてきなアートギャラリーもあって,いつもびっくりするほどいい作品を展示してる.

ageHa: ダンスクラブが好きな人なら,おそらく日本で最高のダンスクラブが ageHa だ.都市からちょっと離れる〔新木場にある〕ので,バスに乗らないといけない.


――後編に続く


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