糖尿病の検査
糖尿病外来では、75gブドウ糖負荷試験(OGTT) 、GA(グリコアルブミン)、1,5-AG値といった検査を行うことで、より正確に診断し、適切な治療につなげています。
75gブドウ糖負荷試験(OGTT)
食事の前には正常な血糖値でも、食後に血糖値が急激に上昇する血糖値スパイクが起こっている場合があります。この検査では、血糖値や血中インスリンなどの変化をみることができるため、血糖値スパイクの有無も確かめることができます。糖尿病、境界型といった状態の把握、食事や運動療法、薬による治療など的確な治療方針を知るためにも重要な検査です。
健康診断で空腹時血糖100㎎/dl以上、あるいはHbA1c5.6%以上となった場合、家族に糖尿病の方がいたらこの検査を受けることが日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドラインでは望ましいとされています。
検査はブドウ糖が溶けたサイダー水を服用して行います。ブドウ糖を飲む前、30分後、60分後、90分後、120分後と合計5回採血を行って血糖値や血中インスリンなどの変化を調べていきます。
検査を受けるためには前日からの飲食に制限があります。前日の夜9時までに夕食をすませたらその後は絶食し、当日は空腹の状態でご来院いただく必要があります。無糖の水やお茶などは飲んでいただいて構いません。
当院ではこの検査を毎日行っておりますが、1日2~3名までしかお受けできないため、あらかじめ診察を受けていただいた上でご予約いただいています。
1,5-AG値(1,5-アンヒドロ-D-グルシトール)
通常行われているHbA1c値の場合、食後1~2時間だけ高血糖になっているケースを正常範囲内としてしまう可能性があるため、より正確な診断のためにこの検査を行う場合があります。
この検査では、過去数日間の血糖値の変化を反映した結果を得られます。
正常値※この検査値は血糖値が高いと数値が低下します。
- 14.0-46.0μg/mL
HbA1c値は1~2か月前、GA値は2週間前の、そしてこの1,5-AG値は過去数日間の血糖値の変化を反映します。
HbA1c値が6.9%未満の場合も、1,5-AG値が10μg/ml以下であれば食後の血糖値が上昇している状態です。心筋梗塞や脳梗塞を効果的に予防するためにも、この検査は重要です。
なお、この1,5-AG値は尿糖の多い人ほど低くなり、HbA1c値が高い(8.4%以上)場合は尿糖により1,5-AG値が下がりきってしまうため、この検査で有効な結果を得ることはできません。
GA(グリコアルブミン)
この検査には過去1~2週間の血糖値の変化が反映されます。
正常範囲 11.6~16.4%
糖尿病の場合には、GA19.5未満を目指す治療を行っていきます。
インスリン治療中で血糖値の変動が大きい、薬を飲み始めて半年以内、貧血などがある場合には特に有効な検査です。
合併症の検査
尿アルブミン
糖尿病の合併症である腎障害が起こっていないかを調べるための検査です。
糖尿病腎症は自覚症状なく進行します。悪化して腎不全になると生涯にわたって週に数度の人工透析を受けなければならなくなります。
糖尿病腎症は、第2期でも血糖値と血圧を下げることで軽度の第1期へ戻すことが可能ですが、尿たんぱくが毎回検出される第3期の状態まで進行してしまうとそれが不可能になってしまいます。そのため、年に4回程度の検査を受け、腎障害の有無やその進行状態を調べることが重要です。
糖尿病性腎症第1期 尿アルブミン正常範囲 | 30 mg/gCr以下 |
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糖尿病性腎症第2期 尿アルブミン | 30~300 mg/gCr |
糖尿病性腎症第3期 尿アルブミン | 300 mg/gCr以上 たんぱく尿期 |
ABI,PWV測定
動脈硬化を調べる検査です。糖尿病をはじめとする生活習慣病は動脈硬化を進行させ、それによって心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などのリスクが高まっていきます。動脈硬化の程度をしっかり調べておくことで、こうした病気を予防するために有効な治療が可能になります。
当院では脈波やPWVで推定血管年齢および動脈の硬さを、ABIで足の血管の詰まりを調べており、所要時間は5分程度です。
頸動脈エコー(超音波)
首の血管に超音波を当てて、血管の中を画像で確認します。狭窄などが起こっていないかを確かめることができ、首の血管が詰まりかかっている場合には心臓や脳にも同じようなことが起こっている可能性が高いため、この検査を受けることで重大な発作を起こす前に対策することができます。
超音波検査は胎児の状態を確かめるためにも使われる安全な検査です。また、痛みなどの負担が一切なく、検査の所要時間も20分程度です。
糖尿病を発症すると、一定の割合で心筋梗塞を発症することが知られており、これは専門医による適切な検査と治療で予防することが可能です。
骨密度測定
糖尿病があると骨粗鬆症になりやすい傾向があることがわかっています。特に女性は閉経を迎える時期に骨密度が低下しはじめるため、注意が必要です。さらに高齢者では、骨密度低下による骨折は寝たきりにつながる可能性が高いため、骨密度の検査は不可欠です。
当院では手のX線写真で骨密度を計測しており、この検査の所要時間は1分程度です。糖尿病の方だけでなく、女性やご高齢で骨密度が気になっている場合には、遠慮なくご相談ください。