HbA1c値が高いとどうなる?

HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)について

HbA1c値は、糖と結合している赤血球中のヘモグロビンの割合を示しています。普段の血糖値が高いとHbA1c値が高くなりますし、低いとHbA1c値も低くなります。このHbA1c値は、過去1~2ヶ月の血糖値の平均を反映して上下します。そのため、血糖コントロール状態のめやすとして重要な検査であり、ほとんどの糖尿病外来では毎月測定が行われます。

血糖値はその瞬間の血糖を調べていますが、HbA1c値は過去1~2ヶ月の血糖の平均的な状態がわかります。そのため、検査前日に食事を控えた場合、血糖値は下がりますがHbA1c値は下がりません。逆に検査前日にたくさん食べてしまっても過去1~2ヶ月の食事をコントロールしていた場合には、血糖値が上がりますがHbA1c値は下がります。

日本国内の医療機関で表記されるHbA1c値は、従来はJDS値でしたが、2012年4月より国際標準値(NGSP値)に変わっています。

HbA1c値のみでは診断できませんが、めやすとなる数値を下記にご紹介します。

HbA1c値 5.6%未満 普段の血糖値が正常範囲内
HbA1c値 5.6-6.4% 時々血糖値が高めになる境界型糖尿病
HbA1c値 6.5%以上 糖尿病

実際には血糖値なども含めた検査の結果から総合的に判断されます。

合併症を防ぐためには、最低でもHbA1c値 7%未満を維持することが重要です。
なお、HbA1c値 8%以上の状態が続いた場合、合併症が起こる可能性がかなり上昇します。

普段の血糖値によるHbA1c値のめやす

HbA1c値 6.2%未満 6.2-6.8% 6.9-8.4% 8.4%以上
食前血糖値 mg/dl 100未満 100-119 120-139 140以上
食後血糖値 mg/dl 120未満 120-169 170-199 200以上

早期の治療がもっとも重要です

インスリンを出す力を守ることができれば、悪化しにくい状態を保つことができ、合併症の効果的な予防にもつながります。
初期の状態で専門医を受診した場合、通院回数が少なく、食事制限や服薬も必要最低限になります。早めにご相談ください。

HbA1c値が高い方へ

HBA1C値が高い方へ現在、糖尿病の治療を受けていて下記の条件を満たす方は、進行を抑制し、将来の合併症を予防するために治療方針の変更が必要です。糖尿病専門医への受診をおすすめします。

  • HbA1c値が7.4%以上と高い状態が直近の半年間続いている
  • 直近の半年間、処方の変更がない
  • 70歳未満

HbA1c値が高い状態で起こること

HbA1c値 が8%以上の場合

合併症が進行しやすい状態であり、HbA1c値が8.4%以上の状態を放置していると自覚症状がなにもなくても合併症が進行し続け、下記に紹介した経過をたどる可能性が高くなります。

約5年

両足にしびれが現れはじめます。やがて、足の感覚が麻痺し、強い痛みが生じる場合があります。

約7~10年

視力が低下し、最悪の場合は失明します。国内では糖尿病を原因とした失明が毎年3,500名以上に起こっています。
レーザー光凝固療法を受けることで光の有無がわかる程度に保つことはできますが、形や色などが判別できず文字なども読めなくなる社会的失明という状態になるケースも多く存在します。

約10~13年

腎不全を発症し、生涯にわたって毎週数度の人工透析が必要になります。糖尿病による腎不全で透析をはじめる方は、国内で年間1万4000名以上にもなっています。透析を受けないと約2週間で死亡してしまいますし、糖尿病で透析を開始した場合のその後の50%生存率は約4年であり、10年以内にほとんどの方が亡くなるという統計もあります。

その他

急な心筋梗塞や脳梗塞につながります。また、糖尿病による合併症で足が壊疽となり、切断する方も年間3000名以上います。さらに高血糖ではがんの発生率も1.3倍に上昇してしまいます。

こうした合併症は、適切な検査と治療により血糖値やHbA1c値が下がれば進行を遅らせることや止めることができます。ただし、治療が遅れるとHbA1c値が下がっても合併症の進行が止められなくなるケースもあります。
糖尿病ではなにも症状がなくても、こうした合併症が静かに進行している状態ですから、糖尿病専門医へのできるだけ早い受診が極めて重要です。また、糖尿病では眼科の受診も不可欠ですから、糖尿病であれば必ず眼科受診をすすめられます。忘れずに眼科も受診してください。

HbA1c値 が7.0~7.9%の場合

この状態を放置していると、ほとんどの方が数年以内にHbA1c値8%以上となってしまいます。数値が高ければ悪化する確率は上昇し、HbA1c値7.4%以上はかなり危険な状態です。食事に気をつけるといったことで改善が見込める状態ではないため、できるだけ早い専門医への受診が不可欠です。
神経障害、網膜症、腎症といった糖尿病合併症が進む速度はHbA1c値が8%以上の場合に比べれば少しだけ緩やかですが、危険な状態です。また、血糖値が正常な人より心筋梗塞、脳梗塞、足の壊死、がんなどのリスクが高いことも同様です。

すでに糖尿病治療を受けていてこの状態が続いている場合には、専門医による治療が必要です。また、まだ治療を受けていない場合には、すぐに受診してください。毎月の糖尿病外来受診に加え、年に1度は眼科受診が必要です。

HbA1c値 が6.0~6.9%の場合

あまり高くないからと放置していると、数年以内にHbA1c値が7.0~7.9%になり、さらに数年で8.0%以上に進行していってしまうケースがよくあります。これは、膵臓のβ細胞がインスリンを出す力が年齢とともに落ちていくため、加速度的に悪化することにつながりやすいからです。
そして注意したいのは、感染症などで熱が出て血糖値が急上昇し、これが高血糖の悪循環を招いてしまうケースがあることです。さまざまな病気による高血糖のリスクが高い状態ですから、しっかりとしたコントロールが重要です。

数値だけみれば合併症リスクが少ないのですが、悪化するリスクが高い状態ですから、毎月検査を受けて継続した適切な治療を受けることは不可欠です。治療では、食事療法や運動療法に加え、膵臓β細胞の力を守る薬などが用いられます。

HbA1c値 が5.6-5.9%の場合

食後の血糖値に異常がない場合、HbA1c値は5.5%以下となります。ただし、5.4~5.5%の場合、ブドウ糖負荷試験で境界型糖尿病と診断されるケースもあります。
HbA1c値が5.6-5.9%は、正常値にかなり近いのですが、放置すると約半数以上が数年以内に6.0~6.9%に進行します。膵臓のβ細胞がインスリンを出す力が年齢とともに落ちていくため、加速度的に悪化することにつながりやすいからです。特に境界型糖尿病ではすでに膵臓のβ細胞がインスリンを出す力が弱り始めており、正常であって大きな負担がかかっていることから注意が必要です。
専門医以外では「様子をみていきましょう」と言われることが多いのですが、こうした早期の段階で膵臓をケアし、インスリンを出す力が落ちないよう適切な治療を受けることはとても重要です。特にブドウ糖負荷試験で膵臓β細胞がインスリンを出す力を測定し、それを踏まえた的確な治療を受けることで、将来的なさまざまなリスクを回避することにつながります。
また、糖尿病専門医医師による栄養相談を受け、食事療法をスタートさせることも不可欠です。無理なく続けることができ、楽しめる食事内容をキープすることは、血糖値だけでなくトータルな健康にも役立ちます。また、検査を半年ごとに受け、悪化していないかをしっかり確かめるようにしてください。

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