JR四国「振り子式特急」2000系試作車ラストラン ファン惜別
営業運転を終えたTSEを撮影し、別れを惜しむファン(3日午後、香川県多度津町のJR四国多度津工場)
JR四国が世界で初めて導入した制御付き振り子式ディーゼル特急車両「2000系試作車」(愛称TSE、3両編成)の引退記念ツアーが3日、香川県などで行われ、鉄道ファン127人が最後の営業運転に乗車し、別れを惜しんだ。TSEは、高知自動車道に対抗し、急カーブや勾配の多い土讃線を高速化して利用客を確保しようと、同社が鉄道総合技術研究所と共同開発して1989年に導入。カーブで車体を傾かせ、速度を落とさず乗り心地や走行性を保つ振り子式を採用し、2000系量産化の礎となった。
土讃線や高徳線などで運行され、老朽化のため3月に定期運行を終了。同社は引退を記念して6月から全3回の乗車ツアーを企画した。最終回のこの日は高松駅を出発し、岡山駅を経由して香川県多度津町の多度津工場でお別れ会を行った。
ラストランを終えた列車から降りたファンは熱心に撮影。最後の汽笛が鳴り、エンジン音が消えると、涙をぬぐう姿も見られた。
小学3年生の時に一目ぼれして以来のファンという同県丸亀市の会社員、木村洋一郎さん(32)は「亡くなった祖母にせがみ、よく乗せてもらった思い出がよみがえる。TSEがなければ四国の特急の高速化はなかった。本当にお疲れさま」と四国を駆け巡った約30年をねぎらった。(井上学)