キユーピー 検品レス納品を拡大 加藤産業に続き三菱食品と

キユーピーが事前出荷情報(ASN)を活用した検品レス納品の拡大に動き出した。5年前からこの取り組みを共同で推進する加藤産業と連携し、キユーピーとともに同社傘下のキユーソー流通システムの共同配送を利用するメーカー15社に検品レス化の呼びかけを開始。三菱食品とも5月末に神奈川の主力汎用センターへの納品分で検品廃止に踏み切った。ASNの事前提供によって納品時の検品と商品鮮度情報のシステム入力を省略する手法は、荷待ち時間の削減や庫内作業省力化の切り札とみられ、他のメーカー・卸にも急速に広がる可能性がある。

キユーピーは11年の東日本大震災の直後、供給継続の観点から物流リードタイムを一時的に変更。通常の受注翌日納品を翌々日納品に切り換えることで、出荷拠点の労務環境の改善や作業量の平準化につながることを確認した。

これを受け、従来から物流合理化に向けて協議を進めていた加藤産業と受注翌々日納品を前提とする改善策の検討に着手。13年度から加藤産業の東西主力2拠点への納品分で検品レスに踏み切った。

リードタイムの延長によって捻出した作業時間を生かし、納品先での検品および賞味期限などの在庫登録に必要なすべての商品情報を事前に作成・送信。同データに合致するキメ細かな仕分け・パレタイズを行って出荷し、荷卸し時の検品作業を一掃するものだ。納品先は事前に受け取ったASNを在庫管理システムに反映させる。

荷待ち・荷卸し改善 共配参加メーカーも合流へ

加藤産業が検品レス車両を優先的に受け入れていることもあり、トラックの荷待ち時間は大幅に短縮。「荷卸し等の作業時間と合わせ、従来の約2時間から15分程度に縮まった」(キユーピー執行役員ロジスティクス本部本部長・藤田正美氏)。これによって車両回転率が向上し、加藤産業側の入荷業務も圧縮された。

ただし、キユーピーの物流を手がけるキユーソー流通は効率的なメーカー共同配送を推進しており、他メーカーとの混載で届ける場合は検品レスの効果が薄れる。その改善に向け、加藤産業とキユーピーグループはキユーソー流通の共同配送を利用するメーカー15社に検品レスへの参加を呼びかける説明会を4月に実施。現在、加藤産業が当該15社と個別協議を進めている段階だが、複数メーカー混載の共配車で検品レスが全面的に実現すれば、物流合理化の可能性が一気に広がる。

この動きと並行し、キユーピーは三菱食品とも5月末から検品レス納品を本格的に開始。実施拠点は今のところ神奈川の主力汎用1拠点だが、庫内業務の省力化を急ぐ三菱食品は北海道と九州でも同様の入荷プロセス改善を検討していく方針だ。

また、この取り組みが食品業界標準VAN会社・ファイネットのユーザー会で報告された5月下旬以降、キユーピーには他の大手食品卸からも問い合わせが相次いでいる。大型トラックドライバーの不足が深刻化する中、食品卸業界は国土交通省から荷待ち時間の改善を強く求められており、その有効な手だてになり得る検品レスへの注目度が急速に高まってきたようだ。

ファイネットはキユーピーと加藤産業の先行事例をベースに、昨春から事前出荷情報EDIのサービスを開始。既に標準インフラ上でASNを送受信できる環境が整っており、今後はこれを活用してキユーピー以外の有力メーカーも検品レスに乗り出すことが予想される。