July.4.2018
黒澤明氏は,1910年,
東京生まれの映画監督です
先日是枝監督がカンヌ国際映画祭で
バロンドールを取られましたが,
日本人で初めて『羅生門』で受賞されたのが
黒澤監督です
映画に興味を抱いたきっかけは
黒澤監督の『七人の侍』
だったと言います
さまざまな映画人やファンの方々から
今だに世界中で映画の神様として
尊敬を集める集め続けておられます
本日はこの,黒澤明監督の
名言のいくつかをご紹介したいと思います
(英文拙訳)
まずは,監督の人間観がうかがえる
コメントからです
生きているのは苦しいとか
なんとか言うけれど、
それは人間の気取りでね。
正直、生きているのはいいものだよ。
とても面白い
People say
to live is suffering
or something like that,
but it’s just their composure;
to be frank with you,
to live is good, so interesting
生きていて苦しいというのは
気取りである…
自己嫌悪はていの良い甘えだとよく
耳にしますが,それに通じるものを
感じます
続きまして,幸せについては…
人間は集中して夢中になっているときが、
一番幸せで楽しいもんだよ。
子どもが遊んでいるときの無心な顔は素敵だ。
声をかけても聞こえないほど、
自意識がない状態。
あれが、幸せというもんだね
We human beings are the happiest
and most pleasant in concentrating
on something and being absorbed in it.
The innocent face of a playing child
is fantastic; the child loses himself
as much as he’s unable to hear our voice,
which we can call happiness.
「ストゥディオス」と仰っていた状態です
何か没入できるものがあり,
それをしている間は時も我も忘れてしまう
たしかに,子どもの頃からでも
そうした瞬間には恍惚状態とも言うべき
充実感に満たされることがあります
とはいえ,
誰しもスランプはあります
そうした時,
監督はどう対処されるのでしょうか
自分を飽きさせずに
面白く働かせるコツは、
一生懸命努力してしつこく
踏ん張るしかないんだ
The art of making ourselves not bored
and work enthusiastically
is making efforts to work hard
and tolerating persistently.
しつこく頑張ること…
その中で新たな発見が生まれます
最初はどんな仕事も分からないし、
できなけりゃ面白くないのが当たり前だ。
続けていると、ある日突然見えてくるんだ。
そうするとやる気がでる。
First every work can’t be understood
and it’s so natural
that you don’t feel it interesting
if you can’t do it;however, continuing it,
someday you can see it suddenly,
which makes you feel inclined to do that.
何事も反復の中でその魅力が見出される,
と仰るのです
そして,疲れた時には…
人間はロボットじゃないんだから、
疲れれば休みたくなるんだ。
そういう時は潔く休めばいい。
A person isn’t a robot,
so if you feel tired,
you want to take a rest.
At that time you should do
without hesitation.
さらに,監督の
セルフコントロールの極意は?
どういう気分になればやる気になるのか、
人それぞれつぼがあるからね。
自分で自分のこと、
うまいことその気にさせる技をもつことさ
People have their own spots
where they feel inclined to do something;
so, you should have the skill
to make yourself inclined to well.
天国と地獄について,監督は
興味深いことばを発しておられます
生まれた時から地獄に慣れているから、
天国へ行けなんて言われると
恐怖で震え上がってしまう
I have been accustomed to the Hell
since my birth, so if I what I am told
to go to the Heaven, I will be shivering
with fear.
天国が恐怖の対象…
こうしたご発想からでしょうか,
監督独自の目線を感じますことばです
悪いところは誰でも見つけられるけれど、
いいところを見つけるのは、
そのための目を磨いておかないとできない
Anyone can find wrong points,
but in order to find good ones,
we can’t do
without keeping the eyes clear.
こう仰っていたことが連想されます
また監督は,優しさについて次のように
仰られています
自分の与えられた人生、
何もかも潔く責任をとるしかないんだ。
本当に優しいというのは、
そういう強さだと思うね
There is no choice but to take responsibility
for our given lives and everything;
I think true kindness is something
like the strength.
人生の責任を取る強さが優しさである
もう,洋の東西を問わないレベルです
そしてその優しさのある人は
人を憎みません
人を憎んでる暇なんてない。
わしには、そんな暇はない
I have no leisure to hate people;
I don’t have such a leisure.
妬み憎しみは暇人の食べ物です
監督の若かりし頃の逸話で,
ある地方でロケをしていた時,
どうしても欲しい
ショットがあったのですが,
一軒の民家の屋根が
どうしても邪魔だったので,
その家を買い取って壊し,
撮影したというお話があります
現代日本では大問題になりそうですが,
ちなみにその家主さんは黒澤監督ならと,
即日快諾されたそうです…
これでもか、これでもかと頑張って、
一歩踏み込んで、
それでも粘ってもう一頑張りして、
もう駄目だと思ってもズカッと踏み込んで、
そうしていると突き抜けるんだ
Do hard saying,
“How about this? How about this?”,
stepping forward,
and still persistently doing hard,
and if you feel it’s over, step forward boldly,
and you can breakthrough.
そこには端的に,
監督のディーテールに対するこだわりが
ありました
些細なことだといって、
ひとつ妥協したら、
将棋倒しにすべてがこわれてしまう
Even if it is trifle,
once you compromise,
everything will break as dominos.
悪魔のように細心に、
天使のように大胆に
Be subtle like a demon,
bold like an angel.
そして…
一生懸命に作ったものは、
一生懸命見てもらえる
What you’ve made hard,
people will watch hard.
美に心奪われた方だからこその
デモーニッシュな狂気なのでしょうか…
それは万物の細部にまで虹を見るかのような
クリスタルのごとき眼差しなのかも
知れません
泥沼にだって星は映るんだ
A star will reflect even on the bog.
それでは,このへんで