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在日朝鮮人を差別する「まとめサイト」が存続危機を訴え ヘイトスピーチ・ビジネスと「まとめサイト」の法的責任

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空白部分は本来広告が表示されている(「保守速報」より)

 まとめサイト「保守速報」が、71日に「保守速報からのお知らせ」と題した、存続の危機を訴える記事をアップした。記事には「管理人です。現在広告がない状態で運営しております。このままだと存続が危うい状態です。そこで、小坪議員より支援体制について提案がありました。 Blogでも表明されています」と書かれていた(「小坪議員の支援体制」については後述)。

 「保守速報」は、差別的な内容によって名誉棄損を受けたと在日朝鮮人の女性から訴えられており、628日には、大阪高裁から「保守速報」に損害賠償200万円を命じた地裁判決を支持する判決を下されている。この裁判は、まとめサイトの記事の内容の責任は、引用元である大手掲示板等にあるのか、まとめサイト側にもあるのか、法的な責任を位置づける重要な判例になるとして注目されている。なお「保守速報」は大阪地裁の判決後、サイト上で上告することを発表した。

 「保守速報」が存続の危機を訴えたのは、この裁判とは違う理由からだ。6月に入ってから、ネット上で「保守速報」に広告が掲載されている企業へ、取り下げを求める動きが活発化。エプソンなどが通報を受け、広告出稿を取りやめている。またBuzzFeed Newsによれば、アフィリエイトサービス「A8net」や広告配信ネットワーク提供会社2社、広告配信ツール提供会社1社も、「保守速報」との提携を打ち切っている、という。

 企業がウェブサイトに広告を掲載する場合、広告配信ネットワーク提供会社を介することがほとんどだ。広告配信ネットワーク提供会社が、「保守速報」との提携を打ち切ったというのは、エプソンのようなひとつの企業が特定のサイトへの掲載を取りやめるよう広告配信ネットワーク提供会社に依頼をするのとはわけが違う。後者の場合、サイトに広告が掲載される企業がひとつ消えるだけだが、前者の場合、そもそも広告が掲載される機会がなくなることになる。

 現在「保守速報」には、広告が一切掲載されていない。ウェブサイトの運営は多くの場合、広告収入に依存しており、存続が危ぶまれているのは確かだろう。そんな「保守速報」などのまとめサイトへの救済処置を提案したのが、福岡県行橋市の小坪しんや市議だ。小坪市議はブログでこう書いている。

<よくよく考えて見ればシンプルな話で、「金の問題だけ」とも言える。別にサイトが崩壊したわけでもなければ、読者が消えたわけでもない。資金面の処置だけで済むわけで、アフィリエイトにこだわる必要は、実はどこにもない。現在、複数の案を協議している。私は政治家ゆえ、「あくまで全体のこと」として述べざるを得ないが、そのモデルケースとして保守速報の救済策(暫定版)の検討状況を報告する。早期に開始できるものとしては「①何らかのノベルティグッズ(しおり、缶バッチ、ステッカー等)を販売し、その収益を充てるというもの」例えば1000円程度で販売し、切手代や送料なども発生するため、販売額の100%が運営費になるわけではいが、手段としては妥当だと思う>(保守速報など、まとめサイト群への救済処置(暫定版)【応援する人はシェア】

 小坪市議は以前からネット上で在日コリアンなどへの攻撃を続ける議員として知られている。また、自身のブログが「保守速報」に掲載されたことを嬉々として伝える記事も執筆しており(【感謝】保守速報に掲載されました!)、「保守速報」には小坪市議に関係する記事も多い。

 現在、ネット上ではヘイトスピーチへの対応が徐々にではあるが進みつつある(ヘイトスピーチを放置し続けるツイッタージャパン)。ツイッタージャパンのように、相変わらず対応が進まないどころか、不信感を抱かせる措置をとるサービスもあれば、差別的なコンテンツやアカウントを削除するなどの対応を取り始めたサービスもある。前述の通り、現在「保守速報」が上告の意志を表明している裁判は、まとめサイトの法的責任を位置づける重要な判例となるだろう。

 2016年に「ヘイトスピーチ解消法」が成立して約2年。解消法の実効性についても徐々に議論されはじめている。ビジネスとして成立しなくなれば、「保守速報」だけでなく、ヘイトスピーチなど差別的な内容を取りあげているサイトは徐々に減っていくかもしれない。しかし、広告収入に頼らない新たな形で収益を得る可能性もないわけではないだろう。いまだ蔓延るヘイトスピーチに、社会全体がどのように対応していくか議論が必要だ。

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