上から目線が邪魔するオープンイノベーション

大手企業役員が口にした「それを言っちゃおしまい」

2018年7月4日(水)

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 取材の一環で先日見学した、大手企業主催のビジネスコンテスト。個人や新興企業によるアイデアの発表や授賞式が終わったあと、記者が「きょうの発表内容、社内とは違うなという感触はありましたか」と尋ねると、主催した大手企業の役員から聞かれたのはこんな言葉だった。

 「いや、社内でも似たような議論は実はしてきていますから」

 まあ我々が思っているより広がってはきたかな……。直後にそう付け加えはしつつも、同役員は「そういう意味では、あんまり違和感ないというか」と話し、「前から我々が言ってきたのは、こういう話だったんですよ」と続けた。

 これは「それを言っちゃおしまい」な発言ではないか。

オープンイノベーションを打ち出すのが大企業のあいだで流行しているが、上から目線をぬぐえていないケースも多いのではないか。

 大企業は個人や新興企業にはない、膨大な経営資源を持っている。それは長年かけて獲得してきた顧客からの信頼であったり、投資のかさむ生産設備やIT(情報技術)基盤であったり、あるいは新技術に振り向けられる研究開発費であったり。いずれも一朝一夕には築くことのできない、貴重なものばかりだ。

 一方で大企業が持っていないものもある。その一つがイノベーションを引き起こす力。既存事業の存在が大きすぎるあまり、その既存事業を脅かしかねない新規事業の創出にインセンティブが働かないから……などと指摘される。

 そんな両者をつなぐのが、大企業が主催して個人や新興企業の参加を募るビジネスコンテストであるはず。カネやモノはあるがアイデアに乏しい大企業が、カネもモノもないがアイデアはある個人や新興企業の力を借り、イノベーションを起こそうとする構図だ。

コンテスト参加者はどう感じるか

 記者が「それを言っちゃおしまい」と思ったのは、同役員の発言が、コンテスト参加者へのリスペクトに欠けるように感じられたからだ。

 きょう披露されたアイデアは、基本的には社内でも検討していて、前々から自分たちでも発信してきたこと……。壇上で語られたわけではないとはいえ、主催者がそう考えていると知ったら、コンテスト参加者はどう感じるか。この大手企業が再びビジネスコンテストを開くとして、再び参加したいと思うだろうか。

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「上から目線が邪魔するオープンイノベーション」の著者

藤村 広平

藤村 広平(ふじむら・こうへい)

日経ビジネス記者

早稲田大学国際教養学部卒業、日本経済新聞社に入社。整理部勤務、総合商社インド拠点でのインターン研修などを経て、企業報道部で自動車業界を担当。2016年春から日経ビジネス編集部。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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