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人生の出発点から敗北者?

「ひとみちゃんに赤ちゃん生まれましたよ。
あたし、ひとみちゃんのおっぱい見ました!
先生もどうですか?」

2006年の3月に卒業した阿知乃からメールだ.「どうですか?」って,ボクにはおっぱい見せないんじゃないか? べつに妊婦 (生まれたあとはそうは呼ばないか?) のおっぱいには興味ないからいいけど.だいたい赤ちゃんって大嫌いなんだよ.うるさいし,糞尿だらけだし,言葉も分からんバカだし,おまけにひとのモノはすぐ壊す.なにもいいところがない.ネコなんかとちがって,生き物として見ても気持ち悪い.部屋の中にとつぜん転がりこんで来た日には,もし人間だと気づかなかったら,こん棒かなにかで袋だたきにされてゴミ袋に突っ込まれていたはずの得体の知れない生物だ.ホント,なにもいいことがない! ガキができたばかりの親に向かって「おめでとう」とか平気で抜かすようなひとを見るたびに,デリカシーないなと思ってしまう.まあ,(意図的に子供を作ったということなら) 長期的にはたしかに悪いニュースではないんだろう.でも,そんな先のことをふつう喜ぶか?「中期的には御愁傷様」とホントのことを言えとは言わんが,せめて「それは (あなたにとって) うれしいニュースですか?」と確認しろと言いたい.

ひとみちゃんはボクのもとゼミ生 (演習受講者) だ.1年生のときと4年生のときにはボクの教えたべつの科目もとったお得意様だ.去年の秋にも,子供できたら見せに来るとかメールで言ってたな.そんなことを言うのは,すごい長期的視野か奇妙な選好を持つということだろう.下手に会って「[中期的には] 御愁傷様」とか言って嫌われてもいやだしなあ~.なかなか気がすすまないボクであったが,単純に「2年前かわいかった子がいまはどんなデブになっただろう?」という好奇心で病室を尋ねてみた.

ひとみ: ええっ?! なんで来たんですか,先生? 勝手に来てもらっても困りますよ.

平凡助教授: いや,阿知乃が来いってメールしてきたから.おっぱい見れるからって.

ひとみ: 阿知乃しょうがない.ホントにメールしたんだ.

[省略]

ひとみ: で,陣痛促進剤を点滴してもらっても効果がなくて,陣痛が始まって42時間も経ってたし,あきらめて緊急帝王切開にしたんです.

平凡: なあんだ痛いの一生懸命我慢したのが無駄だったわけじゃん.はじめからカイザー (帝王切開) にしときゃよかったのに.あはは.

ひとみ: …….

平凡: まあ,やってみないと分からないことはあるからなあ.一生懸命やってダメだったらこそあきらめもつく.

ひとみ: 私も無駄になったみたいに感じて悲しかったです.でも,分娩室に行けるような状態になかなかならなかったってことは,自然分娩を続けたら危険だったということだから.仕方なかったです.

平凡: なんか残念そうだね.しかし,なんで自然分娩とやらにこだわるのかボクにはよく分からん.子供が生まれるというのが目標アウトカムだろ.

ひとみ: わたしが「痛いよ」「お腹が割れる」「早く切って」と一日くらい言い続けても,あくまで自然分娩にこだわってがんばっている助産師たちとお医者さんを見て感じたんですよ.やっぱり自然分娩じゃないとダメなのかなと.

平凡: 感化されたわけね,カイザーは失敗であり負け犬だって.人生の出発点から敗北者になってしまったわけじゃん.

ひとみ: ひどい! 私の産んだ子は敗北者じゃありません.最後まで諦めないで,苦しいのを耐え抜いて,激闘を勝ちぬいて生まれてきた子どもなんです.

平凡: いや,負けは負けと認めるべきだよ.いろんなひとに助けられたわけだし.情けないってことになる.だいたいひとみちゃんは産んでないじゃん.取り出してもらっただけでしょう.えらそうに言うなよ.

ひとみ: …….

平凡: いや,ごめん.「敗北者」とか「取り出しただけ」ってのは,ひとみちゃんを感化したひとたちから見ればそうなのかと思って.ボク自身は自然分娩でも帝王切開でもどうでもいいんだ.しかし,彼らも純粋に医学的理由で言ってるとも限らないだろ.

ひとみ: もういいです.帰ってください.二度と来ないでください.いろんなひとに助けられたのは情けなくありません.

平凡: わかったから最後にひとつ言わせて.助産婦も医師も「カイザーを選べば自分たちが負け」ってことはあるかもしれん.でも,カイザーで取り出された子供自体が負けだとは思ってないよ,きっと.助産婦は手術になると自分の出るまくがないわけだし.(いや,看護婦の資格もあるからわからないけど…….) 医師はどうなんだろう.帝王切開手術になると保険が利いて儲からんとかあるのかなあ.(ま,勤務医なら関係ないんだろうけど…….) いや,いろいろ言ってわるかった.もう来ないから.さよなら.

ボクはドアを閉めて病室を出て行った.

あ~あ,また数少ない味方をひとり失ってしまった.やっぱり身に染み付いた赤ん坊嫌いは簡単には治らないようだ.


ディスカッションのための設問例

設問 1

医療ティームがはじめから帝王切開を選ばなかったことの合理性について検討せよ.

帝王切開をするかどうかの決定問題をデシジョン・ツリー (展開形ゲーム) で描け. プレーヤは母親 (医療ティームと同一視) と「自然」とする. 第二段階で「難航しそう」「うまくいきそう」といった情報を「自然」がもたらす前の第一段階では,母親にとって自然分娩を 目指すのが合理的になるように利得を決めよ.(利得を決めるのに正確なデータは不要.あくまでありそうな数字をしめせばいい.) 母親は「自然」のもたらす情報をうけとったあとで, ふたたび帝王切開を受け入れるかどうかを決める機会を持つとする.

設問 2

「子供が生まれるというのが目標アウトカムだろ」という発言から, 平凡助教授は当初帰結主義的に事態を評価しようとしていたと考えられる. 平凡助教授の評価の基準となる選好はどのような選択肢にかんして定義されているか.

医療ティームが自然分娩というプロセスにこだわっていたとすれば,非帰結主義的に事態を評価していたと考えられる. 医療ティームの評価の基準となる (拡張された) 選好はどのような選択肢にかんして定義されているか.

(Suzumura (1999) の議論が参考になるかもしれない.)

設問 3

「帝王切開で取り出された新生児は負け」という考えを批判的に検討せよ.

たとえば医療ティームと胎児と「自然」をプレーヤーとする以下のような簡単な展開形ゲームフォームを考える.

  1. 第一段階では医療ティームが「帝王切開する」か「帝王切開しない」を選ぶ. 「帝王切開する」を選べば「取り出される」というアウトカムが実現し, 「帝王切開しない」を選べば第二段階に進む.
  2. 第二段階で胎児は「努力しない」か「努力する」を選ぶ. 「努力しない」を選べば「死ぬ」というアウトカムが実現する. 「努力する」を選べば第三段階に進む. (胎児がなんの選択肢も持たない完全に受動的な存在とすると「勝ち負け」の概念を適用するのはひじょうにむずかしいので, とりあえず選択肢を持たせてみた.)
  3. 第三段階では「自然」が「殺す」か「生かす」を選ぶ. 「殺す」を選べば胎児は「死ぬ」.「生かす」を選べば胎児は「生まれる」.

「生まれる」が実現したとき,胎児は「勝ち」と言えるだろう. ところが医療ティームあるいは「自然」の戦略によっては胎児は「生まれる」を実現できない. これを "β-effectivity" の概念をもちいて言い換えよ. (Kumabe and Mihara (2008, Remark 4) の effectivty にかんする議論も参考になるかもしれない.)

このようなゲームで胎児に「勝ち負け」の概念を適用することの是非について検討せよ. たとえばコインの裏表当て (matching pennies) や必勝戦略を持つボードゲームと比較せよ. あるいは次の見解と比較せよ:

胎児にしてみれば,危ないトンネルを一生懸命進んでいたところを,突然審判から「ゲームオーバー.もう進まなくてよし」と言われたようなもの. これは「勝ち」ではないけど,「負け」とは言いがたい.勝敗の概念を適用できない状態だったわけだ.

参考文献

Masahiro Kumabe and H. Reiju Mihara. The Nakamura numbers for computable simple games. Social Choice and Welfare, 2008. DOI 10.1007/s00355-008-0300-5.

Kotaro Suzumura. Consequences, opportunities, and procedures. Social Choice and Welfare, Vol. 16, pp. 17--40, 1999.

(寄稿; 教員の研究活動評価対策のためのケース教材らしい; ケース教材の作製法を助言してくれた女性がたまたま出産前後で,安易な例を挙げてくれたそうだ; それにしても年度末ぎりぎりですね)
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【2008/03/26 09:59 】
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卒業式,研究室,女子学生,袴姿,猥談

卒業式のシーズンだ.11年前に大学に就職して以来はじめて,卒業式当日に元ゼミ生の訪問なるものを受けた.当日朝,スパムに分類されたメールの中に

明日学校来るでしょー?
ひとみちゃんの袴姿見れますよ!

とあったのだ.ひとみちゃん以外の女子学生からのメールであることがあとで判明したんだが,なかなかうまいじゃないか.普通にメールしても「そりゃおめでとう.運がよかったんだな.卒業させろと頼んだ覚えはないけど,卒業できてしまったなら仕方ないな.仕事は大学ほど甘くないから覚悟しろよ」くらいの返事をもらえるくらいだろう.しかし,普段とちがうひとみちゃんを見れるかと思うと,つい「たまには大学に行ってみようか」という気になってしまったのである.

卒業式のシーズンともなれば,お世話になったゼミ教員と涙でお別れといった光景もあるらしい.「おいおい,キミたちは涙を流せるほど学生時代真剣に生きたのか?」「いったいどうお世話になったんだ?」などとバカバカしい気分で盛り上がる季節である.思えば2004年に開講したこの 3 年生ゼミは経済学部での最後のゼミだった.そのゼミの受講者7人全員が卒業できたというのは奇跡的なことだ.奇跡だからこうしてはじめてゼミ生全員 (正確にはすでに夏に卒業した学生を除く) の訪問を受けるのも無意味ではないだろう.

それにしても今まで11年間こういうことがなかったのは,なぜだろう? 単にボクが面倒くさがって卒業式当日大学に来なかったから (それ以前に4年生ゼミを最後まで実質的に受け持ったことがなかったな) かと思ったが,調べてみるとそうでもなさそうだ.2003年度の学部ゼミ生一名は次の年の前期に卒業したので3月の卒業式にはたぶん出ていない.2002年度のゼミ生3名はいずれも卒業できていない.それ以前の 1999年のゼミ生 3+1 名が卒業する時期にはボクは日本にいなかった.それより前はゼミを受け持っていなかった.以上である.どうやら主としてタイミングの問題により卒業式には縁がなかったようだ.

「12時までには研究室に行く」と返事して,12時ぎりぎりに研究室に入ったらすぐ電話がかかってきた.あとでみんなで行くから待機せよとのこと.待機していたら突然ドアが開いて6人がどっと入って来た.たしかに女子学生二人は袴姿である.できるだけ多くの知り合いに見せて元を取ろうとしているのだろう.それにしてもいつの時代から大学の卒業式は袴姿でってことになったんだ? バブルの時代だろうか? などと考えつつ,「けっこうかわいいじゃん」とメールくれた子に近づいたくらいで特に感想を述べることはしなかった.その昔,こいびとと花火を見に行ったとき,「浴衣似合ってない.ほかの女の子のほうがかわいい」とさかんにまくしたててその子を怒らせ,帰りはべつべつになってしまったことがある.袴姿では興奮しない.不用意なことは言わない方が身のためだろう.ただ,髪につけたお花には弱い自分だ.ある女性を思い出すからだろうか.

ボクらは過去を語ることはなかった.学生たちはこれからの仕事を語り,そして相変わらず猥談を楽しんでいた.「夜はドレスに着替える」とひとみちゃんが言うと,そんなことまでエッチな話に繋げたりしていた.ああ,なんという進歩のない連中だ.早くそのレベルは卒業したまえ.あと,ひとみちゃんのドレス姿の写真もよろしく.

【2006/03/25 22:04 】
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気が向いたらいっしょにセクハラでもしようね

お元気,占占家さん?
(ボクのことを知らなかったら人違いなので気にしないでください.
若くてかわいい女性なら気にして返事してくれていいけど.)

冬休みだね.
今日でボクの今年の授業はおしまい.

マンション買ったの? 泊まりに行っていい?

気が向いたら研究室にでも遊びに来てください.いっしょにセクハラでもしましょうね.
占占家さんの友達はあんまりセクハラさせてくれなかったけど.ハハハ.

じゃあね,

平凡助教授でした

占占家 (うらせんけ) さんはいわゆる地方名望家の娘さんだ.わけあってわが大学図書館の臨時職員だか非常勤職員だかとして働いている.
「入手できないってのはどういうつもりだよ? ドイツの古本屋にあるからそこに頼めといってるだろうが,お姉ちゃんよ.カネに色目 [ママ] はつけねえ.世界中でそこしかない希少本なんだ.図書館のくせにドイツ語できるスタッフがいないってことはねえだろ!」
いつどんな苦情を言いに怒鳴り込んでも,ニコニコと笑顔で対応してくれるお嬢様だ.「エッチなことを頼んでもニコニコと受け入れてくれるんじゃないか?」ずっとそういう気がしていた.実際のところどうなのか確かめたい,真実を解明したいという社会科学者的探究心が抑えがたくなっていた.最近,お父さまにマンションを買ってもらったと聞いたとき,ボクは彼女のマンションで彼女とエッチをしようと決意したのだった.いや,できなくてもいいから,彼女に尋ねてお返事を聞いてみよう,と決意した---といった方が正しい.そして,授業の最終日でハイな気分になっていたある朝,ボクは上のメールを送ったのである.(実際は,全員向け補講と欠席者向け補講であと数回授業を年内にしなければならないはめになったが.) もちろん,タクシー代の気になるこのシーズンであるから,街中に宿泊先を確保しておきたいという思いもあった.

夜間の授業のために研究室に行ってメールをチェックすると占占家さんからのメール.「いいですよ.お好きなだけ私にセクハラしてくださいね」なんてお返事を期待しつつ開封.まずは「寒いですねえ」とどうでもよさそうな挨拶に混じって,「大学に仕事にいかないと家の暖房代がかかってしょうがありません」とある.そうか暖房代が気になるほど広いところに住んでいるのか! 行けるかも! ところが「私は28日まで、きっちり勤めさせていただきます」と休みはまだだということを強調してる.あ~,なんかダメそうだな.そして,極めつけは次の言葉だった:

マンションは買いました。
が。先生は泊まれません。・・・・フフフ。

な,な,なんなんだ?! 「フフフ」って,オトコでもいるのか,このお嬢様は? 純真そうに見えるし,占占家のお嬢様だから処女だとばかり思っていたのに! ボクのセクハラの夢は消え失せてしまい,ボクは絶望的な気分で空を見つめていた.

何分経っただろうか,研究室でやる授業の始まる時間が20分過ぎていた.それなのに7人いる受講者のだれもまだ現れていなかった.かわりに,きょうは欠席すると二人から連絡.ボクは「これから出る本」なんかをチェックしつつ,占占家さんのことで落ち込んでいることを忘れようとしていた.

最初に研究室に現れたのは♀子学生 (といっても勤め人) だった.国際的な職場に勤める,占占家お嬢様にも劣らぬ清楚さを漂わせた女性だ.彼女と二人きりになるのははじめてだ.「あ,うれしいかも.このどん底の気分を癒してもらいたいわん」なんて思いながらも,中途半端なところで「これ本」を中断したくなくて数分間ほぼ無視した愛想の悪いボク.

その間,ボクの本棚を見ていた女子学生,ボクが顔を上げると「ミクロ経済学の本とかゲーム理論の本とか,買おうと思ったんですけど.読むときに買おうと思って止めたんです」と.そして,ボクの机のそばにつかつかと近づいてきて,「その本は何の本ですか?」(いや,題名を口にして新しい本かどうかを聞いたのかもしれない) と,机の隅にあった『感じない男』(森岡正博) を手に取った.「それは女子高生のミニスカートとかパンティーとかにボクが魅かれる理由を書いた本らしいけど,まだ読んでないのでよく分からないや」と答える代わりに,

「これ書いたひと,大学の先生だって.この本のことは授業で話したくないらしい」

とだけ答えた.処女の雰囲気さえ持つその女子学生の聞きたい話かどうか分からないので,それだけに留めた.つまり彼女の選好が分からないのでそう答えたのだった.(もっともエッチな話を好む処女も多いので,処女かどうかは選好の判別にはあまり関係ない.) もしかしたら,ボク自身が話したがっていないと取られたのかもしれないが,決してそんなことはないので希望があれば申し出てもらいたい.

しばらくは和やかな時間が流れていた.「社会政策の授業なんかで教授と一対一になること,けっこうあったんです」なんてことを彼女は言っていた.

そのあと,二人が顔を近づけて見つめ合う事件があった.「何かいつもと違ってることに気がつかない?」と顔を寄せて見つめるボクに,少し当惑した表情 を見せつつ (←おもしろかった.いやあ,ごめんごめん) 「赤いマフラーですか?」と答える女子学生.「いや,目の付近だよ」.ボクを見つめる彼女の目にときめいてしまって,占占家お嬢様のことはほとんど忘れていた.しばらく見つめたけど,彼女は気づかなかった.じつはボクはその日あるしょうもない理由があって,眉を鉛筆で描いていたのだ. (しょうもない理由というのは,目の上の毛を剃ろうとしてまちがって眉の下半分を剃ってしまったというもの.) 彼女は「東京辺りには,若いおしゃれな男性で眉を描いているひといますよ.先生のは自然で分かりませんでした」と言いつつ,「どうして鉛筆 (眉ペンだっけ?) を持ってるんですか?」と攻勢に出て来た.「いや,家に誰かがむかし置いてったみたいで」.じつは,妹が来たとき置いて行っただけなんだよ.だから気にしない気にしない.

二人きりの時間は20分も続かなかった.

【2005/12/21 14:17 】
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信仰とは

深夜,市内のラーメン屋でのできごとだ.鶏の唐揚げを注文したんだが,あとから店に入った客に同じ品が先に行ってしまった.店長を呼んでそのことを伝えると,「もうちょっと待ってくださいね.すぐ持ってきますから」と言う.2分待ったが,まだ唐揚げは出てこない.店長のところに駆け寄って,

「どうなってんねん.なんであとから注文した客の方に先に行くんや.『すいません』じゃわからんだろ,ボケ.『どうなってんねん』言ってんや.説明してくれへんか」

とまくしたてた.店長は「こちらのミスでした.すいません.次回からは気をつけます.あと少しだけ待ってください」と答える.「なに言うとんや.次回じゃ遅いて.説明になっとらんやねえか.こんな店つぶしたろか,なあ.」しばらく店長を捕まえていたが,これ以上苦情を言い続けてもしょうがない.二人分のラーメン代は払わずに店を出た.連れの女も慌てて店を出て行った.

隣のテーブルではじまったこのエピソードの一部始終を見ていたボクの連れの女子学生は,「あれは女が悪い.あんな男,私だったらその場で別れる」とつぶやいた.「えっ?」とボクは驚いてしまった.

苦情を言って店を出た男は,見るからにチンピラ風の男だった.そんな男の女になっていながら,こういう出来事くらいで別れるというのでは,あまりにも愛情が足りない,より正確には信仰が足りないのではないか.女はその男の感受性の強さを理解した上でいっしょになったはずだ.理解せずにいっしょになったとしたらたしかに女が悪いが,悪い理由は予想力の欠如である.感受性が強い人間が起こしそうな行動は正確に予想した上で,いっしょになって欲しいものだ.そしていっしょになったからには,ギリギリまでその男を信頼して支えるのが理想の連れというものだろう.

これは「信仰」の問題である.この程度でつまずくようでは,信者としての資質がないと思われても仕方がない.自分なら,師と仰ぐ者が準強制わいせつで捕まろうと,電車で痴漢をしようと,アカデミック・ハラスメントをしていると言われようと,殺人を犯そうと,そんなことはまったく気にかけない.「うまいラーメンも食べたことだし,じゃあこれからラブホでも行こうか」と突然女子学生を誘っても,自分ならなにも動じない.そんな非本質的なことで信仰が揺らぐことはない.自分がひとを信頼するとはそういう意味だ.

残念ながら,そのよそ者であろう男に希望はあまり感じなかった.「先に注文した客に先に出す」というのはそれほど重大な約束ではないと思う.そこのところの優先順位の判断ができるともっと「希望」が出て来るんだが……それは女の「愛」で支えてもらいたい.その女は少なくとも「信仰」はあるのだから……「信仰」を理解するにはまだまだ遠そうな連れをまっすぐ家まで送り届けつつ思うボクであった.

おまけある社会学者のブログで見つけたブラック・ジョーク:

「では、信仰は持たないが、希望と愛のある人間は地獄に落ちるのかね?」というバーナード・ショウの質問について,あるインド人思想家は答えた.
「ショウの言うことは正しい。知恵と希望はあっても、信仰を持たない人間は間違いなく地獄に落ちるだろう。なぜなら、天国は神を信じる人たちの場所だからだ。」
「だが」として彼は続けます。
「その人間は、地獄に送られたあとも、知恵と希望でもって、地獄を天国以上にすばらしい楽園に変えていくことだろう」と。

【2005/11/24 19:41 】
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今年も行って来た愛の道東

その女子学生に電話したのは数週間前だった.「9月の中旬ヒマ? 北海道行きたいとか思わないかな?」とボク.「ずっとヒマですよ.北海道行きたくてもお金ありません」と彼女.「そうなんだ.じゃ,研究室に遊びにおいで」との誘いに,彼女はやって来た.ボク「こういうの見つけたから,とりあえず予約入れておいた.二人で 4泊 132,600円.お金がない P 子は払わなくていい.行きたくない?」「えっ,もう払ったんですか?」「いや,まだ払ってないし,キャンセル料も発生しない.とりあえず押さえておいただけだから,気軽に考えて」「それにしても強引ですね」「善は急がなければね」「善って言うなら,悪いことはしませんか?」「悪いことはしないけど,気持ちいいこととかしたいよな~」「まったく.エッチなこととかさせませんからね」「ま,それでもいいけど.P 子の心境が変化したら,こっちは遠慮しないから.」

ということで (ウソ) ボクらは東北海道へ向かって出発したのだった.去年はバス旅行だったが,今回は自分でレンタカーを借りて運転した.感想: あそこは,新しい高速道路はいらないな.いまある道路の制限速度を90キロくらいにすればいい.以下,印象に残った場所を行った順に列挙しよう:

  • 釧路湿原道路.湿原の中を気持ちよく走れる釧路市内の農道.
  • 細岡展望台.釧路川を見ることのできる定番の展望台.展望台に東から通じる道路は地図上では湿原の端っこを走っているが,とちゅうに湖もあり湿原をじゅうぶん感じられる.
  • コッタロ湿原展望台.南から入ると砂利道をしばらく走ることになる.展望台に上るまでがけっこう歩く.すぐそばの沼の景観は圧巻.
  • 釧路市動物園.あるひとに勧められて行ってみた.おっかないヒグマが立ち上がったり,手招きをしたり,手を叩いたりしてエサを求める動作がおもしろかった.エサを口でキャッチするのも上手.
  • 和商市場.観光客が勝手丼を食べに来る釧路駅そばの市場.ボクははじめからウニイクラ丼にするつもりだったのでいろいろ店を回るつもりはなかった.他にもいくつか具を入れた女子学生もいろいろ店を回るのは面倒で,けっきょくご飯以外はひとつの店でそろえた.
  • 摩周湖.日の沈むころに着いた.第一展望台の駐車場で 410 円取られた直後に料金所が閉鎖され無料駐車場になった.例の小さな島は今回もはっきりと見えた.しかし第三展望台に近づくと濃い霧でほとんどなにも見えなかった.女子学生とキスでもすればよかったな.
  • 知床貴゛族車馬道.「ホームページ見ましたよ.なにか出してくださいよ」と店のマスターに言うと,サメガレイという肴の刺身を出してくれた.注文したのは食べやすい順に,エゾシカのユッケ (だったけ?),熊焼き定食,海馬(トド)焼き定食だった.北海道のいろんなところで取れた野生のを入手しているという.エゾシカは普通に食べられた,トドはレバーのような血なまぐささがあって女子学生の口には合わなかった.ヒグマは厚めの肉が少し歯ごたえある調理法でなかなかよかった.「今晩は盛りがついて初夜になるよ」とマスターは言っていた.
  • ホテル知床.大きな温泉宿……といのはどうでもよくて,それまで拒んでいた (というか,ボクが求めなかったんだけど) 女子学生が初めてボクに身体を許した素敵な場所というのがポイント.こんなことになったのは,車馬道の珍獣メニューでお互い盛りがついたためか,(前日歩き疲れてくたくたになって夜はさっさと寝てしまった反省から) たまたまその朝ふたりでユンケルを飲んだためかは分からない.でもこの話は長くなるしたぶんウソなので,平凡助教授と女子学生とのセックスの詳細な記述はいずれべつの機会に書くかもしれない性愛日記に回そう.そういえば,一階のショップで見かけた女子高生くらいのかわいい女の子 (客) がだれかに似ていて,でもだれだかなかなか思い出せなくて,とても気になった.
  • 知床半島のクルージング.高波による全便欠航のため,行けず.
  • 知床峠.途中,シカとかキタキツネに出会った.国後島の南の部分を初めて見た.少し感動.
  • 知床五湖.今回は一湖と二湖を歩いて,去年行った展望台にも行った.三湖以降は,ヒグマが出てきそうで怖いし,面倒なので行かず.
  • 硫黄山 (川湯温泉の近くの).ここも入るときは料金所が開いていた (駐車券は摩周湖第一展望台と共通) が,出るときは閉まって無料駐車場になっていた.硫黄のいい匂いに釣られて,レストハウスで温泉卵を買って食べた.
  • 屈斜路プリンスホテル東館.すべての客室が屈斜路湖に面している.やはり周りに店はない.割高になる夕食バイキングはやめて,買って来た温泉卵や地階のコンビニで買ったホームメイド・チョコレートやポテトチップスをおやつに.夜食にラーメンを食べにいった.
  • 美幌峠.空は晴れ渡り360度展望が開けていた.最初は来る予定はなかったのだが,思ったより奇麗なところで,眼下の屈斜路湖がすごく印象的だった.今回のベストスポットかもしれない.おまけに,自衛隊のトラックが何台もやってきて峠の駐車場にずらりと停めたのも壮観だった.
  • 和琴の湯.和琴半島の入り口付近の露天の混浴温泉だが,真昼のためかさすがにひとはいなかった.でも,近くにあった小屋の中の混浴共同風呂の方が,密室であるため入るのにもっと勇気が要りそうだ.というか,ボクらが訪れたときはどっちもひどく熱くて足湯さえためらわれた.
【2005/09/18 15:39 】
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満濃池のユル抜きとひとみの来訪を無理に同じ記事にしてみる

ひとみちゃんが夜一人でボクの研究室にやって来た! この日は午後8時には帰るつもりだったけ ど,帰らなくてよかった!

6月13日月曜日.片想いの失恋から立ち直れないでいたボクは,自然のパワーに癒してもらうことにした.いや,自然ではなくて人工物からだ.

すごくいい天気の中,満濃池に向けてクルマを飛ばした.そう,きょうは年に一度の満濃池のユル抜きだ.このため池の修復拡張工事に(わが家と同じ宗派である)真言宗の弘法大師が関与しているという.「空海が郷土入りをすると人々は続々と集まり人手不足は解消し、唐で学んだ土木学を生かして、わずか3ヵ月足らずで周囲2里25町(約8.25km)面積81町歩(約81ha)の大池を完成させました。」(上記サイト).先端知識をもって地域貢献することでは,当時にしてすでに現代の平成香川大学を越えていたわけだ.弘法大師はおそらく,最大フロー最小カット定理なんかも知って最大流問題を解いていたのであろう.(ひじょうに直感的な定理なのでじゅうぶんありえる.)

満濃池に着くと,月曜の真昼というのにひとが多く路肩にはびっしりクルマが停まっていた.ボクがクルマを停めることのできた場所からゆる抜きの見える現場までは歩いて10分くらいだった.もっと遠くにあった駐車場はがら空きだったが.田舎人も距離というコストを最小化するようで,ミクロ経済学の普遍性にあらためて感動した.

12時過ぎに現場に着くと,カステラだのアイスクリンだの出店が数軒あって,お祭りの感じだった.それからまもなくして放水ははじまった.四国新聞の記事は「約三千人の見物客が国内最大のため池から放たれる豪快な”水流ショー”に大歓声を上げた」というが,べつに大歓声はなかったのではないか.少なくとも一斉の歓声はなかった.最初は少しずつ水流が増えて来て「出よる出よる」といった感想を口にするおじさんおばさんはいた.イメージとしては,大きなダムの低い位置の放水口から水が勢いよく出ている感じだ.ボクはダムが好きだからひとまず満足だ.水の音を聞いていることで,失恋の傷は少し癒された.わざわざ車いすで見に来ていた爺さん婆さんなど恩恵を受けている土地の人には,単なる暇つぶしを越えて感慨深いものがあるのだろう.

夕方,ひとみちゃんに「本を返したらひとこと連絡のメールを入れておいて」とメール.本とは,貸してあった『女から口説く101の恋愛会話』(中谷彰宏 著)だ.その日はひとみは来ないと思って,自分は帰るつもりでメールしたわけだ.すると 2110,ドアのノック.ひとみだった.一人きりで来るのは珍しくないか.その時間まで授業があって友人も一緒だったけど,研究室にはひとりで来たという.もしかしてボクに抱かれたいとか思ってひとりでボクを口説きに……などということは一切考えず,ソファーに座るようにも薦めない,なんとも愛想の悪いボク.ま,愛想悪いのはいつものことなんだが,「ひとみもボクの片想いの相手」などと書いた直後だったので落差が激しくて失望させたかも.ソファーは部屋の奥にあるとか,本返したらすぐ出て行くと思ったとか,言いわけはできるけど.

もうあんまり会えない,いやほとんど会わないことになるのかなと思ったので,形見として要らない本でもやろうかとボク.ひとみは借りていた口説き本が欲しいと言う.「いや,それボクが持っておくから他の本にしよう.うう~,あんまりないなあ.そうだこの雑誌はどう?」ゴミ箱から取り出したのは,平成香川大学の学生が作った UniPress という休刊中の学生誌だ.セクシャル・ハラスメント委員の仕事の一環で,ついさっき農学部セクハラ関連の記事をコピーマシンでスキャンして pdf ファイルをメールしたところだった (どうでもいいが,なぜあれは200dpi しかできないのだ).ひとみはゴミになるので雑誌は要らないと言いつつ,おもしろがってしばらくその記事を読んでいた.ボクはせっかくなのでセクハラの記事にかこつけて,良いセクハラ (注) でもしようと思って彼女の側に寄って行った.

注: 最近はセクハラ概念が広がりすぎたので,もっと限定しようという動きがあるのは周知の通りだ.が,拡大した概念への対処法はそれだけではない.わが大学ではボクの発案で世界に先駆けて「悪いセクハラ」「良いセクハラ」あるいは「楽しいセクハラ」という概念を導入することになっている.気持ちのいいのは良いセクハラということでいいかしらん.4年後にはこの平成香川大学式の用語が世界をリードすることになるだろう.なに? 「良い嫌がらせ」という単語の組み合わせはほとんど矛盾で不適切だって? 「良い」とか「悪い」ではなくてその良さあるいは悪さの内容を表現した概念でないと安易すぎるって? そんなもん知るか.文部科学省だって「特色 GP」とか Good Practice という言葉使ってるじゃないか.なにが「特色 GP」だよ,このアホ!

だが,日が悪すぎた.きょうは暑い中を歩き回ったせいで身体が汗でべたべたなのだ.ボクの身体の表面を境界とする最小カット容量に一致する最大フローとまではいかないが,だいぶ放水した,いや,発汗した.いずれにせよ女の子に近づける身体じゃない.そんなことに気づいてボクはすぐに彼女との距離を取り戻した.ふたりがべたべたできなかったのは,(ひとみちゃんの意思を除けば) ひとえにボクのからだがべたべただったからである.残念.そこで耳にした個人的な会話といい (パーソナルな内容なので秘密) このタイミングの悪さといい,損した気分.ひとみは2125まで居た.

表題の満濃池とひとみを強引にリンクさせるとしたらどうすればいいか.触媒は『女から口説く101の恋愛会話』にある.つまり
満濃池のゆる抜きに行って,帰りに抜き抜きしてあげる
といった口説き文句を言ってくれればいいのだ.オヤジギャグ風で洗練されていない上に解釈が多様すぎて意味もほとんど不明な言葉ではあるが,男性がいい気分になってあるいは吹き出して,ひっかかってしまうであろうことはまちがいない.

さあ,みんなで声を合わせて弘法大師さまといっしょに言ってみよう.「ゆる抜きで抜き抜き!」

【2005/06/16 16:07 】
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あてもない深夜ドライブ

片想いの女性を意図せず傷つけてしまったことで自分はすごく傷ついていた.さみしさがボクを導いてくれる先はどこだろうか.23時ころあてもなく出発.

府中湖.以前,深夜によく行っていた湖.2001年に香川大学ボート部の学生が水死した湖.自分も深夜落ちたことがある.そのときは生温い水温が気持ち悪かった.

瀬居島.坂出市番の州の埋め立て地の端っこ.はじめて訪れた.工業地帯を通り島に至りくるりと回ると神社にぶつかり,そこで行き止まりだった.クルマを降りて海の香りを嗅ぐ.島の道路にはクルマが密集して駐車されていた.

瀬戸大橋記念公園.入ろうとしたら凄まじい音を立ててジグザグに運転するクルマ数台.路肩にはガラの悪そうな若者たち.クルマをぶつけられるのはイヤなので,Uターン.

沙弥島のナカンダ浜.女の子を連れて来たかった場所.真っ暗な海岸で海に飛び込んだりして騒いでいる連中.ボクは瀬戸大橋を見ながら海岸に沿って展望台まで夜道を歩いた.

沙弥島を離れると,さっきの路上レースのクルマ数台.不本意ながらしばらく並んで走ることに.スピードは自分のクルマよりちょっと速い程度だが音がうるさい.反対側からちょうど赤いランプを灯したパトカーがやってきた.パトカーが来たことをだれか携帯で連絡したんだろうか.

五色台.午前 130 ころ.海沿いの道ではクルマ一台とすれちがっただけ.半島の北端の大崎の鼻から五色台スカイラインに入る.スカイラインでは他のクルマとはまったく出会わなかった.「夜その道を通ってると後ろからバイクのエンジン音がするが、ライトは見えない、よく見るとヘルメットだけが飛んでいる・・・。しかもそのヘルメットは赤い目だけが見えるらしい」という心霊スポット情報もあるところ.この日はそれらしき幽霊には出会わなかった.少し恐れていた暴走族もいなかった.ただ,クルマの窓にいっぱい虫がぶつかって来て即死するのには悩まされた.

根香寺 (ねごろじ).五色台にあるお寺.午前 2時.だれかに出会えるような気がして,つい来てしまった.心霊スポットとして有名なところ.昔は「首転寺」と言われ,病気で死ぬのを待っているような子どもの首を切り落として殺していた場所という説もある.牛鬼が封印されていて,その呪いのパワーはただものでないという.午前 2 時に電話が掛かって来るという,自殺のあったとされる電話ボックスも見えた.それにしても真っ暗で怖そうな所だ.なんでこんなところに来てしまったのだろう.ボクが会いたいのはここに出るような幽霊ではないはずなのに.

午前300ころ帰宅.あてもない旅は終わった.導かれて来たのはけっきょくこの世界だった.

【2005/06/11 12:00 】
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期末試験日のキスとか握り合いとか身体検査とか: 6月7日の授業裏ログ

ひとみちゃんは 1515 ころにやって来た.F も一緒におかしを持ってやって来た.例の体験参加(?)の高校生もまもなく合流.ポニーテールがかわいらしいひとみが「やる気なさそうですね」とボクに言った.そうか落ち込んでいるとやる気なさそうに見えるのか.「恋人にでも振られたんですか?」「まあ,そんなところだけど.」こいびとというよりは,片想いの相手なんだけどね.そういえばひとみもボクの片想いの相手のひとりだった.ひとみを抱きしめることができれば,だいぶ気持ちも落ち着くかもしれない.朦朧とした意識の底でそんなことを考えつつ,ボクはホワイトボードの前に移動した.「じゃ,質問は?」

試験に出るいくつかの問題と,試験に出ないいくつかの問題について質問に答えた.「クラスカル法とプリム法はどちらが出ますか? どんなふうな聞き方をするんですか?」出ない問題について落ち込んだ状態で答えるのは簡単ではない.「まあ,どちらでもいいから最小木を求められればいいかな.どちらのアルゴリズムでも結果は同じだし.いや,最小木の辺になった順番とか聞くかもしれないなあ」などと言いつつひとみの目の前の箱入り紅茶を取り上げて香りを嗅ぐボク.「あ~,あたしの! ま,飲んでもいいですけど.」あの~,匂いを嗅いでみただけなんだが.すると阿知乃 (仮名)が「間接キスですよ!」と.「きゃ~!」とひとみ.間接キスか,それもわるくないな.ストローだからほぼ確実にひとみの唇が当たった部分にボクの唇が当たるわけだし.喉乾いたし.「もっと確実に出るのはダイクストラ法の方だから……じゃ,もらうけどいまは口の中がチョコだらけだから後で飲むわ……ストローじゃなくてヒモを引っ張って行くやつ.表をちゃんと埋められるかな?」チョコレートの味のする紅茶も悪くないかもしれない.ま,でも,やっぱ,少し気持ワルイわな.ボクはチョコレートのなくなった口でストローをくわえて紅茶を飲んだ.高校生が「…….」やっぱ何も飲み物なしでチョコレートとベビースターラーメンはきついよな.どん底から少し脱出.

負けてられないと思ったか,阿知乃は盛んにベビーラーメンをボクのために買って来たのだと力説する.ボクが「阿知乃」と呼んだことにも気を良くしている.「先生がこの焼きそば味のおいしいって言ったから……」「ああ,うれしいよ.もらうよ.」「だから単位くださいね.」「知らないよ.ラーメンだけちょうだいよ.」「じゃあ,ベビースターラーメンあげません.」「しょうがないなあ.じゃあ,いらないよ.」「ええっ! もらってくださいよ.試験簡単なんですか?」「ああ,簡単かんたん.満点とってね」と言いつつストローでひとみの紅茶を飲む.ひとみ「ぜんぶ飲まないでください.」

質問は済んだと言ってひとみと阿知乃は出て行った.テキストも置いて服も脱ぎ捨てて出て行った.出る前にわざわざ「紅茶の残りぜんぶ飲まないでくださいよ.私も飲むんですから」と念を押すひとみ.「そりゃ無理だよ.もうほとんど残ってないじゃん.」ほんとにカップ半分ぶんも残っていなかった.だいぶ生温くなってるし,ボクの唾液が流れ込んでるかもしれないし…….ボクの唾液を飲みたきゃもっと直接的な方法を使えよ.というわけで,ふたりが出るとボクは速攻で飲み干してしまった.ははは.

その後しばらく女子学生二人と高校生ひとりを相手にしていた.「なんでひとみや阿知乃のことばかり書いて私たちのこと書いてくれないんですか」と叱られそうだが,まじめに質問に答えていただけなんで裏ログに載せるには不適切というだけの話だ.デパートのショップで働く奈緒は高校生の横に座って一生懸命高校生に教えてもらっていた.ラウンジ(?)で働く M はひとりで一生懸命復習していた.

1800前に機密書類を受け取りに来たある夜間学生.「問題は先生の推薦書がマイナスにならないかどうかです.どうして平凡助教授に推薦書を頼んだと聞かれたら,言葉に詰まってしまいそうで.」「いちばん厳しい先生だから頼んだと言えば.」

ボクが席を外している間,学生たちは猥談で盛り上がっていたようだ.ボクが戻ると,「上半身はだかで試験を受けるから合格にして欲しい」と奈緒が言ってたとだれかが言った.戻って来たひとみは紅茶がなくなっていることに文句を言った.だってすぐなくなるといっただろ.

さて,全員そろった.「これとこれとこれは出る.クラスカル法とプリム法は出ないよ.こいつも出ない.」「え~,出ないんですか.あんなに一生懸命やったのに.」「うん,出ない.まだ時間欲しいか?」「試験できなかったら,再提出とか認めてくれますか?」と奈緒.「あのなあ,そんなむずかしくないから.それに上半身裸で試験受けてもいいけど,単位には影響しないから無駄だぞ.」女子学生の裸だけじゃあ不十分だよなあ.いや,もっと凄いことをしても単位とは交換出来ないしなあ.奈緒「わたし試験中に裸になるって言ってませんよ.先生と二人だけなら脱いでもいいと言っただけです.単位もらえるならやりますよ.」そうだよなあ.裸で受験しても「なんだこいつ」ってことで,お笑いにしかならないよなあ.二人だけだったらたしかに---じつは奈緒もボクの片想いの相手のひとりだし---少しは真実味あるかな (そのばあいでも単位には関係ないんだけどね),などと考えてにやけるボク.世には女子学生に研究室で脱がれたら負けだという説がある.ひじょうに不利な立場に追い込まれるということらしい.そんなもん勝手に脱いだ方の責任だろ,いい加減にして欲しいよと言いたくなる説だが.やっとボクにもその不利になる番が巡って来たかもと,うれしくなった.不利な状況に追い込まれたときこそ,すばらしい知恵が湧いて来るものだ.いざ,行かん! そこへ男子学生「オレも裸になるんで単位ください.」

そういえば「奈緒でもいいぞ」ときょうボクが言ったら「《でも》じゃあダメです」と言われた.あれはなんの話だっけ.ひとみに何かをやってあげるはなしだったっけ.奈緒もプライド高い女なのだ.《片想いの相手のひとり》では満足しないだろうな.

試験開始.質問が出る出る.「この答でいいですか?」「ああ,正しいかもねえ.かんちがいしてるかもねえ.」「どっちなんですか?」「さあ,どうなんだろうね.問題自体がヒントになってるからね.」

一時間も経っただろうか,ひとみちゃんがまたまっすぐに手を挙げた.「どうですか? 出来てますか?」早く終えて明日の試験の準備を始めたいという.ざっと見たところ,まちがいはなかった.問題が簡単すぎたかもなあ.ボクはひとみの目を見つめつつ頷き,思わず頭をなでなでした.ひとみはボクが墓場まで想い出として持って行きたいくらいうれしそうな,無邪気な表情をした.(もっとも視覚の記憶力が弱いので,もう曖昧にしか思い出せないが…….) 「全部できてる?」「それは分からないけど,ぱっとみたかぎりでは出来てそうだね.」ということでひとみは提出することにした.後ろから男子学生 A がボクを突く.自分のも見ろと.「A もなでなでしてもらいたいのか?」と頭をなでる.「こら,ちゃんと見ろ!」

あちらからは阿知乃がボクを呼ぶ.脚が痛いと言って出した足には,靴の中に隠れてしまうストッキング状の足袋を履いている.「なんだよ,その足袋は?」いま流行っているらしい.夏にストッキング履くと足が蒸れるがストキングを履かないと靴が汚れやすい.そういうところの需要を見込んでの商品だろうか? まあ,それはいい.脚が痛いと言ってボクに「てもみん」マッサージを求めているわけではなさそうだ.頭をなでなでされるくらい出来ているかどうか見てくれということらしい.

そんなわけで,最初に提出した3人は満点だった.問題が簡単だったにせよ,そして試験中のヒントもあったにせよ,なかなかよい出来だ.ひとみは小学校以来の満点とか言って喜んでいた.まだ終わっていない奈緒はだんだんプレッシャーを受け,時間を気にしはじめる.「時間は気にしなくてもいいぞ」とボク.どれどれと答案を提出した男子学生が邪魔をしに行く.「おい,あんまり教えるなよ.」女子学生 M も奈緒の目の前に行ってしゃがみ込む.「おい,お尻見えてるよ.」もうちょっとゆっくり観察してから言っても良かったかもしれないが,悔いはない.ジーンズの上から現れるおしりの上部 (きっとなにか単語があるはずだが) なんだが,ひとによっては興奮するらしい.

けっきょく,6人の点数は60点満点で 54, 55, 56, 60, 60, 60 点だった.全員9割をクリアーした.なんだ出来てるじゃないか.最難関と言われるボクの授業にしては信じられないほどよい出来だ.さすがこの科目を落とせない4年生以上が揃っていることもあって,モーティベーションがちがう.そうだよなあ.祭日のこどもの日にも補講してたしなあ.

男子学生 A がボクが開けていなかったベビースターラーメンを開いて食べはじめる.「あ~,ボクの!」みんなが笑う.A は無理矢理ボクの口にラーメンを入れる.「さっきトイレ行って洗ってない手ですみません,せんせい.」「試験問題が簡単だったかもしれないけど,同じ問題でももっと大きなクラスだったら半数は落としてたと思う.良く出来てる.」「大学の授業っていう感じがすごくしました.試験はそうではなかったけど」と言ったのはひとみだったろうか.洗ってない A の手を手始めに,ひとりひとりに握手.抱き合って喜ぶのもいいかもしれないが,違いの分からないひと (特に外部の) がエッチとか言い出すかもしれないのでとりあえず希望者に握手というわけだ.(じつはボクは手の状態が悪くて握手に抵抗があることが多い.) いろんな意味で感動の奈緒には「男と女だから指を絡めてするかい?」と聞くと,「これって恋人握りですよ」と言いつつ二度応じた.恋人というより,戦場で生き残った兵士が手を取り合ってるような感じがするんだが.二人きりだったらもっといいムードになったのだろうか.「また研究室に会いに来ていいですか」と奈緒.「いいけど,あんまりいないぞ」と乗り気でなさそうに答えつつ,来い来い来い来い恋来いと百回心の中で唱えた.阿知乃は手を出しつつも避けてるような感じがしたので腕相撲握りで行こうとしたら,ちゃんと普通にやってと言われた.最後のひとみも指を絡めずに普通に握手.ストローを通した間接キスよりも指を絡める方が抵抗あるということだろう.こういうのはいちいち確認しないと分からないものだ.

学生たちが出て行ったのは21時前だった.研究室に取り残されたボクを片想いの相手に振られた傷がふたたび襲った.その夜,ひさしぶりの深夜ドライブにボクは向かうのだった.

「あてもない深夜ドライブ」につづく.

追記何か重要な史実を書き落とした気がしていたが,思い出した.記事を読み返して,奈緒との進展がなんとなく強引な感じがしてたのだ.18時前に来客があったころのことだったか.ボクと奈緒は研究室前の廊下に出た.人工ではないという日焼けがやけに奇麗な奈緒は,絹のような光沢のある生地のパンツを履いていた.そういえば数週間前の腕のタトゥーは消えていた.「そのズボンいいじゃん.脚細く見えるね.実際はそうでもないのかな?」「失礼な.でも,けっこうあるんですよ」と自分の太もものまわりを両手で挟んで測る奈緒.「先生の方が細いんじゃないですか?」と言って,(記憶が曖昧だがたしか) 奈緒はボクの太ももの周りも両手で測りはじめる.「おい,急に触るなよ」とは言わなかったが (ということは許可を与えたのか? 記憶が曖昧).どうでもいいが紳士服の店に勤めてるからクセになってるんだろうか (メジャー使うはずだからちがうか).じゃあ自分もということでボクは「あんまり変わらないかもねえ.測らせてもらってもいい?」と許可を得て,奈緒の太ももの周りをボクの両手で挟む.いったい廊下でボクらは何をやってるんだ.目撃者いたらあらぬ誤解を受けそうで危ないなあ.で,計測結果はボクとあまり変わらない感じだったがよく分からなかった.手の位置がちょっとずれるだけでだいぶ太さが変わるからね.

いずれにせよ個人的にはめったにない貴重な体験であった.昨今,多元的な成績評価が叫ばれている.今後ボクの授業にはこのような身体検査でも採り入れたいといころだ.

【2005/06/11 11:40 】
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