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「3カ月」の生産性を高めるために、「3時間」の深い思考をしよう

「3カ月」の生産性を高めるために、「3時間」の深い思考をしよう

「やりたいことがあるけれど、なかなか時間がない」 「いつも、やらなければならないことに追われている」

誰もが抱くであろうこうした悩みについて、「『本当にやりたいこと』があるのなら、『やらなければならないこと』に追われる毎日から抜け出して、まずは時間をつくってやってみるしかない」と主張しているのは、『「3か月」の使い方で人生は変わる Googleで学び、シェア№1クラウド会計ソフトfreeeを生み出した「3か月ルール」』(佐々木大輔著、日本実業出版社)の著者。

2008年にGoogleに参画し、2012年にはfreee株式会社を創業。シェアNo.1クラウド会計ソフトとして知られる「freee」などを提供しています。

どんなに時代の状況が変わっても、1日は24時間しかないということに変わりはない。だとすれば、「その時間をどう使うか」、もっと言えば、自分が本当にやりたいことに集中するために「どう時間をつくっていくか」、その時間を生み出すために「何を優先するのか」ということを常に考えていく必要がある。(「はじめに」より)

そして、こうした考え方をするうえで大きな意味を持つのが、タイトルにもなっている「3カ月」だというのです。

グーグルで働いていたときも、「クラウド会計ソフト freee」の開発をしたときも共通して意識している時間の単位がある。それはグーグルでは「クォーター」や「3か月サイクル」とも呼ばれ、日本の会社でも「四半期」と呼ばれる「3か月」という期間だ。(「はじめに」より)

事業も経営も3カ月では変わらないけれど、考え方や成功体験など、人生の転機という発想で見れば、「3カ月」という時間の単位でなんらかの手ごたえを得ることは可能だというのです。

「3カ月」集中することでナンバーワンになったり、「3カ月」で大きな自信をつけたり、新たな道を切り開いたりすることができるという考え方。

このことを踏まえたうえで、きょうは第5章「3か月の『生産性』を高めるスケジューリング」を見てみたいと思います。

プロジェクトは同時並行せず、一点集中

著者によれば、プロジェクトを確実に前に進めるためのポイントのひとつが「同時進行はなるべく避ける」ことだそうです。特に3カ月でなんらかの結果を出すためには、1日あたり、それなりの時間を注ぐことが必要。ましてや、高度な思考を伴うものや、新しい価値を生み出す場合はなおさら。

そこで、なるべく同時進行はせず、ひとつのテーマに集中して効果的に時間を使うことが重要だと考えているわけです。それに、ある程度ひとつのことに集中しないと、実効性が高まりにくいという問題が発生するかもしれません。

複数のテーマを並行して進めようとすると、お互いのプロジェクトを言い訳にしてそれぞれが進まなくなる可能性が高くなるもの。たとえば3つのプロジェクトがあるとすれば、「Aをやろう、いや調子が悪いからBにしよう、でもやっぱりCが先だな」というようなことになり、「どれにも集中していない」ムダな時間を過ごすことになりかねないということ。

もし、いくつかのテーマを並行せざるを得ないなら、まず「Aが忙しかったから、Bはできませんでした」という状況に陥らないようにすることが大事。細かく計画をつくるなり、どこまで進んでいるかを確認するためのマイルストーンを立てるなり、「いますべきこと」に集中するための工夫が欠かせないということです。

スケジュールは細分化せず、1つのことに集中するために、1時間や2時間といったまとまった時間を確保する。そして、その時間はやると決めたことをできるだけ続ける。生産性を高めるためには、一度決めた時間の使い方を、なるべく崩さないことが肝心だ。(129ページより)

さらには、(取り組む内容にもよるとはいえ)基本的にはフルタイムで臨むほうがはるかに効果的。逆に片手間では、どうしても中途半端になってしまいがち。

また、「このテーマは3カ月月楽しんで取り組みながら続けられるか?」ということを見極める意味においては、週の半分以上の時間を支えているかどうかがひとつの目安になるといいます。著者自身の経験でいえば、3カ月間取り組むときには、週に15時間以上は使うくらいでやってみないと、続けるのかやめるのか判断する検証作業にはならないというのです。

そして、もしもそれなりの覚悟で「取り組む」と決めたテーマなのに、週の半分以上の時間をかけられない、あるいはかけようとしていないのなら、自分のなかでのそのテーマの優先順位が下がっていることを自覚したほうがいいそうです。中途半端な取り組み方だと、次に活かすことができないから。

ましてや新たな価値を見出したり、一流と言われるようなスキルを身につけたりするために3カ月間取り組むのであればなおさら。その場合は、やる日とやらない日があるということではなく、習慣にするくらいの意識を持ち、ほぼ毎日取り組む必要があるといいます。

「このプロジェクトを必ずやり遂げたい」と強く思うのなら、まずはまとまった時間を確保し、「一点集中」することが大切だと著者は強調しています。いうまでもなく、片手間でやると中途半端になってしまいがちだからです。(128ページより)

「深い思考」をするための3時間

深い思考をしたいとき、細切れの時間ではなかなかじっくりと向き合うことはできません。そこで著者は、少なくとも週に一度は必ず3時間くらいのしっかりまとまった時間をとるように心がけているのだそうです。

たとえば経営について「長期的になにをするか」といった、高い集中力を必要とするテーマを考えるのだとしたら、ちょっと考えてすぐに結論が出るわけではないはず。ある程度のまとまった時間単位でないと、納得できる一定の深い思考には到達できないわけです。

しかも人間の集中力はもともと、それほど長くは続かないものでもあります。3時間あったとしても、その時間まるまる考え続けるというケースは少ないということ。だいいち、いくら「深い思考」をしようとしても、いきなりできるわけではありません。

しかし3時間あれば、その時間内に「深い思考」に入るための「助走となる時間」と「考えたことを整理する時間」も用意することが可能。「深い思考の前後」にも十分時間を使うことができるのが、大きなメリットだということです。

なおじっくり考える前には、5分、10分でも、情報収拾をして必要な情報をインプットする時間があると、アウトプットの質が大きく違ってくるもの。そして、じっくり考えたあとは、できれば結論をまとめたり、次につなげるための布石を打つところまでできると、アウプットの質はよりよいものになるそうです。たとえば人に説明する資料をつくったり、結論を踏まえて相手とどんなコミュニケーションをするか想定するなど。

まとまった時間があれば、こうした生産性の高いアウトプットが望めるということ。だから「緊急で重要なこと」ばかりに追われることなく、「すぐにやらなくてもいいけれど重要なこと」も効率よく確実に進められるわけです。

重要なのは、思考するためのまとまった時間もちゃんとスケジュールに入れること。著者も実際、週の初めにはあらかじめ「考える時間」も予定に組み込むようにしているといいます。その際のポイントは、同じ3時間であっても、30分の予定を6回小刻みにするのではなく、できるだけまとまった時間単位でスケジュールを押さえること。

そして予定を抑えたら、あとはスケジュールどおりに行動。その段階では、「この3時間箱のテーマについて考えるためにアサインされた(割り当てられた)時間だ」と、しっかり認識して行動に移すことが大切。なぜなら、認識するのとしないのとでは、その時間の生産性が大きく違ってくるから。

たとえば「3時間空いているから、とりあえず考えてみよう」となんとなく思っているだけだったとすると、気がつけば関係ないことに思いを馳せていたり、ネットサーフィンをしてしまったり、別のことに手をつけてしまっていたというようなことになってしまうわけです。

有意義な3時間を実現するためには、まずスマホの音を切るなり、メールの画面は立ち上げないなど、なるべく邪魔が入らない環境に身を置くことが欠かせない。チャットやメール、電話、SNSなどで深く掘り下げた思考を中断されては、せっかく調整したスケジューリングも台なしになってしまう。(146ページより)

著者も、5年後、10年後のfreeeという会社のあるべき姿を描くため、年に一度、1週間ほど日常から離れて考える時間をつくるようにしているのだそうです。事業戦略を練るため、山籠りをして考えをまとめるというのです。チャット、メールなどの連絡手段は一切断ち、情報のインプットと考えをまとめることにフォーカスするという徹底ぶりです。

大胆なことのようにも思えますが、それくらい意識的に「考える時間」をとるべきで、そのためにまとまった時間が必要だと思っているというのです。そうでなければ、目の前のことを片づけることにばかり追われ、「すぐにやらなくてもいいけれど重要なこと」は、いつもあとまわしになってしまいかねないから。

「本当にやりたいこと」が、高度な思考を伴うものであったり、あるいは新しくなにかを創造していくものであればなおさら。だからこそ、チャレンジしたいテーマや突破したい課題があるのなら、まずは「考える時間」のスケジューリングからすべきだといいます。(144ページより)




自身の体験談も交えながら、「3カ月」についての考え方、活用法などをわかりやすく解説した内容。ここからノウハウを身につけることができれば、いま以上に時間を有効活用できるようになれそうです。

Photo: 印南敦史

印南敦史

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