多くの業界で人手不足が叫ばれている昨今ですが、地方自治体の委託や指定管理の公共図書館も例外ではありません。元々、図書館業界は正規雇用の求人だけでなく、非正規雇用の求人でも応募者が多い人気職種です。しかし、その非正規雇用の求人においては、様相が変化してきています。
待遇が悪く給料が少なくても、「本に囲まれて仕事ができればいい」「やりがいがあるから」などの理由で、非正規雇用でも図書館の仕事をする人が多かったのは事実です。しかし、近年は、そうした理由だけで応募する人や続ける人が減ってきている傾向があります。図書館をネタにしたサイトやブログ、SNS等で情報が収集しやすくなり、業界の厳しさを知る機会がネットでわかるようになったこと。一度、業界を経験して厳しい現実を目の当たりにした人が増えたことなどが考えられます。
民間業者への委託化が進んだ今、多くの求人はネットの求人サイトで募集をするため、求人状況がわかるようになりました。昨年から週1回程度、業者の公式サイト求人ページ、民間求人サイト「indeed」や「図書館ジョブ」における求人状況をチェックしてきました。はっきりと言える事は、
○徐々に図書館業界も人手不足が常態化してきている。
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○同じ求人が延々と出続けたり、何度も出ては消えるを繰り返し再掲載されるものが多数あり、常連になっている。
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○人手不足という状況下で待遇や条件面において、買い手(採用側)と売り手(応募側)の市場原理が働かず、良い方向に改善される気配がない。つまり、他業界が実行しているような、人材を確保するために時給を上げるなどの措置がされない。
○人手不足という状況下で待遇や条件面において、買い手(採用側)と売り手(応募側)の市場原理が働かず、良い方向に改善される気配がない。つまり、他業界が実行しているような、人材を確保するために時給を上げるなどの措置がされない。
不人気な求人は永遠に不人気であり、業者側が人手を確保するために待遇などの改善をする余力、もしくは意欲がないということです。
2018年7月1日時点で、首都圏だけでも以下の求人が募集されています。これでも一部です。これらは、既に委託や指定管理業務が始まっている案件であり、継続的に掲載され続けているものや、何度も募集の掛け直しがされているものです。この時期になっても募集しているということは、定員が充足されていないことであり、人手不足そのものと言えます。今年4月からの業務もあれば、それ以前から始まっている業務もあるでしょう。非常によろしくないわけです。※各社公式サイト求人ページ、indeed(インディード)、図書館ジョブから情報引用。数が多いため、見出しのみ表記しました。
[図書館流通センター・TRC]
さいたま市立北図書館スタッフ/時給
さいたま市立北図書館スタッフ/時給
世田谷区立経堂図書館スタッフ/時給
北区立図書館スタッフ/時給
渋谷区立図書館スタッフ/時給
[丸善雄松堂]
杉並区立阿佐が谷図書館/副責任者候補
杉並区立阿佐が谷図書館/時間給 週3日~5日
目黒区立図書館/時間給 週3日~
[紀伊國屋書店]
富士見市立図書館/責任者
富士見市立図書館/時給
[ヴィアックス]
新宿区立西落合図書館/月給制スタッフ
新宿区立西落合図書館/月給制スタッフ
新宿区立西落合図書館/時給制スタッフ
新宿区立大久保図書館/時給制スタッフ
新宿区立四谷図書館/時給制スタッフ
新宿区立大久保図書館/時給制スタッフ
新宿区立四谷図書館/時給制スタッフ
千代田区⽴千代田図書館/月給制スタッフ
千代田区立千代田図書館/時給制スタッフ
千代田区立千代田図書館/時給制スタッフ
品川区立大井図書館/月給制スタッフ
品川区立大井図書館/時給制スタッフ
品川区立八潮図書館/月給制スタッフ
品川区立八潮図書館/時給制スタッフ
品川区立大井図書館/時給制スタッフ
品川区立八潮図書館/月給制スタッフ
品川区立八潮図書館/時給制スタッフ
港区立みなと図書館/時給制スタッフ
大田区立下丸子図書館/時給制スタッフ
目黒区立目黒本町図書館/時給制スタッフ
目黒区八雲中央図書館/時給制スタッフ
文京区立水道端図書館/時給制スタッフ
文京区立本郷図書館/時給制スタッフ
目黒区立目黒本町図書館/時給制スタッフ
目黒区八雲中央図書館/時給制スタッフ
文京区立水道端図書館/時給制スタッフ
文京区立本郷図書館/時給制スタッフ
杉並区立方南図書館/時給制スタッフ
杉並区立永福図書館/時給制スタッフ
杉並区立永福図書館/時給制スタッフ
中野区立図書館/時給制スタッフ
練馬区立図書館/月給制スタッフ
北区立赤羽図書館/月給制スタッフ
北区⽴赤羽北図書館/月給制スタッフ
北区⽴赤羽西図書館/月給制スタッフ
北区⽴赤羽北図書館/月給制スタッフ
北区⽴赤羽西図書館/月給制スタッフ
北区⽴浮間図書館/月給制スタッフ
北区⽴神谷図書館/月給制スタッフ
北区⽴神谷図書館/月給制スタッフ
板橋区立中央図書館/時給制スタッフ
板橋区立志村図書館/時給制スタッフ
板橋区立蓮根図書館/時給制スタッフ
板橋区立西台図書館/時給制スタッフ
江東区立東雲図書館/月給制スタッフ板橋区立志村図書館/時給制スタッフ
板橋区立蓮根図書館/時給制スタッフ
板橋区立西台図書館/時給制スタッフ
江東区立古石場図書館/月給制スタッフ
江東区立豊洲図書館/月給制スタッフ
江戸川区立小岩図書館/時給制スタッフ
所沢市立所沢図書館新所沢分館他
[ウーマンスタッフ・ナカバヤシ共同]
板橋区立東板橋図書館責任者
板橋区立氷川図書館責任者
板橋区立小茂根図書館責任者
板橋区立東板橋図書館スタッフ
板橋区立氷川図書館スタッフ
板橋区立小茂根図書館スタッフ
さいたま市大宮図書館スタッフ
四街道市立図書館副責任者
四街道市立図書館スタッフ/週5日
四街道市立図書館スタッフ/週3日
四街道市立図書館スタッフ/週3日
都立高等学校図書館(江戸川区)週5日
都立高等学校図書館(江戸川区)週1日
都立高等学校図書館(墨田区)週5日
都立高等学校図書館(墨田区)週1日
都立高等学校図書館(墨田区)週1日
都立高等学校図書館(江東区)週5日
都立高等学校図書館(江東区)週2日
都立高等学校図書館(江東区)週2日
毎度毎度、定番な業者ばかりですが、これらの求人は自治体との間で委託や指定管理として契約されたものであり、求人を集める事ができないでは済まされないでしょう。中には、今頃になって責任者を募集している業者があることに唖然とします。
基本的には、業務を遂行させるために必要な人員を設定して集め、会社の利益も確保しながら人件費を算出する。それが困難であったり、赤字予測で利益が出せないなら、最初から請け負うべきではないのです。とりあえず仕事を取って、それ以外の事は後から考えればいい的な思惑があるから、こんなザマになるわけで、ビジネスそのものを理解していないと言えるでしょう。
そもそも、図書館の委託や指定管理は、ビジネスとして馴染まないと言えるでしょう。規模的にも、それほど高くない落札価格で決まり、それが固定費になるので、その範囲内で会社の利益分、スタッフの人件費、その他の運営経費を賄わなくてはいけません。収益ゼロという事はあり得ませんが、上限額の天井が決まっているため、それ以上に売り上げが伸びることはありません。薄利多売的な零細ビジネスであり、とにかく契約件数を量産して稼ぐしかありません。結局、多く受託しても管理ができなくなって杜撰(ずさん)になり、人材不足というオマケ付きになるのが定番のオチです。
こうした状況は、これからも日常茶飯事で続いていくと思いますが、応募者側も経験則、知識、情報を付けてきていますので、業者はさっさと撤退するか、継続するなら待遇面などで抜本的な改革でもしない限り、人手不足は永久に解消される事はないでしょう。結局のところ、人はカネで動くわけですから。
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