タイの洞窟で行方不明の少年ら13人、無事確認 脱出まで数カ月か

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発見の瞬間、しかし救出は?

タイ北部の洞窟で9日間にわたり行方不明になっていた少年12人とサッカー監督が2日夜、無事でいるところを発見された。ただし、洞窟から出るには、水が引くのを待つか、潜水技術を習得する必要があり、数カ月かかる恐れもあるという。

2人の英国人ダイバーが、タムルアン洞窟の中の突き出た岩の上にいるところを見つけた。少年たちの安否に、タイの国中の関心が集まっていた。

11歳から16歳の少年たちと監督は、まだ洞窟内にいる。今後の救助作業にとっては、洞窟に流れ込んだ水と泥が課題となる。13人は6月23日に洞窟探検に出かけたところ、大雨による洞窟内の増水で出られなくなった。

タイ陸軍によると、少年たちが洞窟内から出るには、水位が下がるのを待つか、自力で水中に潜って泳いで出る必要がある。そのため、少なくとも4カ月分の食料など物資を、13人のもとに届ける必要があると陸軍は説明した。

チェンライ県にあるタムルアン洞窟は、9月から10月の雨季の間、たびたび増水によって水であふれる。救助隊は排水ポンプによって水位を下げようとしてきたが、目立った効果は出ていない。

潜水訓練を受けた医師たちが、医薬品を携えて13人のもとを訪れ、健康状態を確認し、負傷している場合は手当てをする見通し。救助隊の一部は、洞窟に至る別の入り口がないか山肌を探索している。

Family members celebrate while camping out near Than Luang cave following news all members of children's football team and their coach were alive in the cave at Khun Nam Nang, 2 July Image copyright AFP
Image caption 洞窟の近くで待機していた家族は無事発見の報に大喜びした

救助隊は当初、「パッタヤ・ビーチ」とあだ名のついた地下洞窟の平らな岩の上に少年たちがいるかと期待していたが、少年たちは水位上昇を避けて、約400メートル離れた場所に移動していた。

1000人以上の捜索隊には、タイ海軍など現地当局のほか、中国、ミャンマー、ラオス、オーストラリア、米国、英国が協力している。

現地で取材するBBCのジョナサン・ヘッド記者は、洞窟の入り口では歓喜の声を発電機の音が掻き消したと伝えた。ダイバー数十人の酸素ボンベに次々と酸素を充てんしたり、排水ポンプのために発電機が回り続けた。

ヘッド記者は、これまで少年たちの救出に全力を注いできたタイ当局は、13人の無事を確認した今、まずは現場に医薬品や薬を届けて体力を回復させてから、脱出方法を決定することになると話している。

どうやって見つけたのか

少年たちを発見した英国人ダイバーは、先週初めに現地入りしたリック・スタントン、ジョン・ボランセン両氏とみられる。洞窟内に少年たちの場所にたどり着く前に、数時間かかったという。

タイ海軍特殊部隊がフェイスブックに投稿したビデオでは、洞窟内の岩場に座る少年たちに懐中電灯の光を当てながら、ダイバーの1人が少年たちに英語で語りかけるのが聞こえる。

「何人いるの?」とダイバーが尋ねた後、「13人!」、「13人? 素晴らしい!」というやりとりが続いた。

少年たちとコーチが行方不明になったタムルアン洞窟

少年たちはいつ安全な場所に行けるのか尋ねている様子で、映っていないダイバーの1人が、「今日は無理だ。2人しかいないので。潜らないと。また来るから。わかった? もっと大勢が来る。自分たちは第一陣だ」と答えている。

男の子の1人は、「ごはん、ごはん、ごはん。おなかがすいてるって伝えて」と伝言している。

少年の1人が今日は何曜日か尋ねると、ダイバーの1人がしばらく考えた後、「月曜、月曜だ。みんなはここに……10日間いたんだ。みんなすごい強いね」と答えた。

ダイバーたちは、いったんこの場を離れなくてはならないが、また戻ってくると伝えた。

「本当にどうもありがとう。どこから来たの?」と少年の1人が言うと、「イギリス。英国だよ」、「そうなんだ。また明日ね」というやりとりが続いた。

チーム「イノシシ」の13人

Group of teenage boys with coach Image copyright Facebook/ekatol
Image caption フェイスブックに掲載された写真には、行方不明になった監督と少年たちの一部が写っている

少年12人は、「ムーパ(イノシシ)」サッカーチームのメンバー。アシスタント・コーチのエッカポル・ジャンタウォンさん(25)は、子供たちの遠足を引率することがしばしばあり、2年前にも同じ洞窟にチームの子供たちを連れて行った。

今回行方不明になった子供たちのうち、最年少は11歳の「タイタン」ことチャニン・ウィブルンルンルエアン君で、7歳からサッカーを始めた。

主将の「ドム」ことドゥアンペト・プロムテプ君(13)が少年たちのリーダー的存在。

息子のモンコル君(12)が行方不明となっていたティナコルン・ブーンピエムさんは、13人無事の知らせに、「嬉しくて仕方がない」とAFP通信に話した。洞窟の入り口近くで待機していたブーンピエムさんは、「息子には心身ともに丈夫になってもらいたい」と話した。

別の子供の親族は涙を流しながら、「嬉しくて言葉にならない」と報道陣に話した。

今後の課題は

「全員無事だが、任務完了ではない」。チェンライ県のナロンサク・オソタナコルン知事は洞窟入り口に設けられた救助作戦司令本部で記者会見して、こう述べた。

「13人を探しだし、救出し、生還させることが我々の任務だ。今のところは、発見しただけだ。洞窟から脱出させて無事に帰宅させるのが、次の使命だ」

救助隊は今後も、洞窟の排水を続けながら、13人の健康状態の確認に潜水技術のある医療チームを送り込む方針という。

「移動可能な健康状態だと医師たちが判断すれば、洞窟からすぐに脱出させる。学校に戻れるようになるまで、我々が面倒を見る」と知事は話した。

米フロリダ州で国際地下洞窟救助救出機関の地域調整を担当するエド・ソレンソン氏は、子供たちに潜水装置をつけさせて脱出させようとするのは危険だと指摘する。

「それは非常に危険なので、本当に最後のぎりぎりの手段だ」と同氏はBBCに話した。「視界ゼロの、不慣れで特殊な環境で潜らせれば、パニックになるのは十分にあり得る。自分だけでなく救助作業員の死亡事故にもつながる危険がある。なので現時点では、食料や水、酸素などを運びこむほうがいい。少なくとも照明と希望を届けられた今は、水と食料を十分に与えて、温かくして過ごせるように物資を届けられるなら、落ち着いて待機させるべきだ」。

(英語記事 Thailand cave rescue: Boys found alive after nine days

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